貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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113話

「お帰りなさいませランページお嬢様、ささっ大奥様が御待ちですよ。お客様もご一緒になられてお嬢様がお越しになられるのを心待ちにしております」

「……帰りてぇ……」

「恐れながらお嬢様のお帰りになる場所は此処かと」

 

休日、普段ならばライアンとアイネスを連れて何処かに遊びに行ったりライス達を水族館に連れて行ってやったりするのだが……今日ばかりはそんな事をしている余裕も無かった。ご丁寧に配信用の器材も確りと運び込まれているのでそれを口実にするわけにも行かない、というか出る事を望まれている。

 

「大奥様、ランページお嬢様をお連れ致しました」

『お入りなさい』

「それでは、お嬢様」

「あ~……もうジーッとしててもドーにもならねぇの精神で行くしかねぇか……」

 

扉を開けた先、そこにあるテーブルを囲みながらも楽しげに談笑をする二人の妙齢のウマ娘。一人は自分も知っているお婆様のメジロアサマ、そしてもう一人……アサマと並んでも見劣りはなく、それ所か二人が共に居る事で不思議な空間が生まれる。絶対不可侵の領域、そんな事が出来る事に喉を鳴らしつつも一歩一歩歩みを進めて行く。

 

「来てくれましたか、すみませんね呼び出しを掛けてしまったりして」

「いえ、此方も休日でしたので暇してたので」

「それなら丁度良かったという事ですかね」

「そういう事です」

 

冷静を保ちつつも会話を続ける、そして―――いよいよ来る。

 

「彼女がそうなのね?」

「ええそうよ、ランページ貴方に紹介したいというのが此方よ」

 

そこにいたウマ娘に声が掛けられる。少しだけ大きめの帽子を外して露わになった髪は現役のモデルやウマ娘よりもずっときめ細やかだった、艶やかで美しいのに何処か自然だった。浮かべられた笑顔は嫌らしくなく寧ろ何処かまだ遊び足りないお転婆なお嬢さんという印象を与える。

 

「スピードシンボリです、昔はこれでもレースでも活躍してたのよ」

「おやめなさいな、それでは私も貴方と同じ年寄りのようではありませんか」

「フフフッそれは失礼」

 

スピードシンボリ。シンボリルドルフの祖父にして初めて凱旋門へと挑戦した競走馬、当時の最高齢記録である8歳で八大競走の宝塚記念を制覇、そして史上初の有馬記念連覇を成し遂げるという伝説を打ち立てた名馬。

 

「メジロ、ランページです……お会いできて光栄です」

「あら、そんなに硬くならなくても良いのよ。貴方の配信はいつも楽しく見させて貰ってますから」

「光栄……です」

 

緊張するなというのが無理だ、自分も無敗神話を作る現代のレジェンドなんて言われているがこの人は本当の意味で格が違う。本当の貴族の風格と名ウマ娘としての雰囲気を纏い続けている。これで引退しているというのが信じられない、仮に一緒に走ったとしても勝てるビジョンが全く思い浮かばない。

 

「そんなに緊張しないで欲しいわ……私自身は貴方の事応援しているのよ?」

「無理もないでしょう、私達は古いウマ娘ですしやってる事がやってる事ですから」

「んもう……おはこんハロチャオで良いのよ?」

「―――えっ何だって?」

 

飛び出てきたナンジャモ語に一瞬緊張が解けた。まさかあのスピードシンボリからそれが出て来るなんて……配信に出たいとは言っていたが、もしかしてマジだった……悪戯が成功したような笑顔を浮かべているのを他所にアサマは溜息混じりに言った。

 

「その辺りにして差し上げなさい。悪いわねランページ、この年寄りはやって来た事があれな事を全く自覚しないから孫達も接するのに苦労してるから貴方と仲良くしたいのよ」

「んもうそんないい方はないじゃないの―――アーちゃん!!」

「実際そうじゃない、ルドルフは兎も角、シリウスから避けられているそうじゃないのスーちゃん」

「アーちゃんにスーちゃん……?」

 

突然出て来たフレンドリーな呼び名に頭がショートしそうになって来た、アサマとスピードは普通に仲良しであり今でも昔の呼び名で呼び合っているらしい。

 

「昔は二人で一緒に変装してお付きの者を振り切って街で遊んだりもしたわよねアーちゃん」

「懐かしいですね……あの時はそうですね、今時の女の子の格好を頑張ってしてましたね。今でいうダイタクヘリオスさんのような感じかしら」

「えっお婆様がウェ~イとか言ってたんですか」

「私は普通に言ったけど、結局アーちゃんは言えずじまいだったわよね?」

「私だって言いたかったのに一緒だと逆に怪しまれるからっといったのはスーちゃんでしょうに……」

 

思いもしなかった暴露話、あのアサマにもそんな時期があったのか……と思いつつも二人がその時の写真を見せてくれた。そこにあったのは若い時の二人、アサマはマックイーン、スピードはルドルフによく似ている……。

 

「でも結局お付きの人にはバレバレだったのよね、それでお父様やお母様に大笑いされて」

「あの時ほど恥ずかしかった事はありませんでしたね……まあ今となっては良い思い出ですけど」

「もう一回やってみる?」

「おやめなさい、うわキツじゃすみませんよ」

「アーちゃんったら酷~い!!ねえ私だってまだまだ行けると思うでしょランページさん!?」

「えっ俺!?」

「言っておやりなさいランページ、自分の歳を考えて自重しろこの婆と」

「私がババアならそこまで違わないアーちゃんだって婆じゃない!!目尻婆!!」

「何ですって!?聞き捨てならないわ、スーちゃんだって変わらないでしょうが即オチ深堀!!」

 

目の前で繰り広げられる口喧嘩、それを見ていると先程までの緊張がバカらしく思えてきた、本当に何で緊張していたんだろう……と思えて来たから困ったものだ。そうだ、この二人だって同じウマ娘には変わりはないのだから緊張する意味はなかったのだ。ならば……

 

「そこまで言うならポケモンで決めたらどうです?お二人ともやってるんでしょう」

「あら、それは良い考えね。丁度新しいパーティを考えて来たの、それを実践してあげるわ」

「望む所です、ランページから貰ったイダイナキバで粉砕して差し上げますわ」

「という事はスカーレットなのね!!私にも交換して下さらない?アーちゃんならスカーレット買うだろうと思ってたら一緒にバイオレット買っちゃったのよ」

「その位なら全然」

 

もう吹っ切れたのか、ランページは普段の調子に完全に戻っていた。これはこれで楽しい時間が過ごせそうだ。

 

「それじゃあ移動しましょうか」

「そうね、準備は万端よ」

「あれ、何処か別で?」

「ちょっとね。そうだ、私の事はスーちゃん♪って呼んでねランページさん」

「それなら俺の事はランでお願いしますよスーちゃん♪」

「よく出来ましたランちゃん♪」

 

そしてその流れで連れて行かれたのは……まるでホームシアターのようになっている部屋だった。部屋にしては大きく、施設と言った方が良いだろうか……奥には大型のモニターがあり、その前には筐体の様な何かがある。それを見た瞬間に昔のポケモンの通信対戦をする場所を思い出したのだが、二人はそれぞれ赤にメジロカラーがアクセントに入った(アサマ)のと紫濃淡を生かした模様(スピード)の特製ケースらしき物から徐に自分のSwitchを取り出して筐体からケーブルらしきものを引き出し本体に接続すると……モニターに対戦画面が出力された。

 

「さあ勝負よアーちゃん!!」

「目が合ったらポケモンバトルの合図!!」

「「ランページ / ランちゃん、バトル開始の宣言を!!」」

「えっあっはい!!今、戦いの殿堂に集うは二人の伝説!!一方はメジロ、一方はシンボリ。二人が育てしポケモンが雌雄を決する決闘を行う、此処に今、新たな伝説の幕が開けられる!!それでは―――バトル開始ぃぃぃぃ!!!」

 

つい、乗ってしまったランページ。そしてモニターにはアサマのデカヌチャンとスピードのカイリューが繰り出された。

 

「何これ」

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