貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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119話

「「……」」

「これはこれは、珍しい組み合わせですね。ライバルチームのお二人がご一緒にいるとは」

 

カノープスの練習を見つめる二人、東条と沖野。トレセン学園の誇るべきチーム、リギルとスピカのチームトレーナーが二人して練習の見学を行っていた。

 

「何か御用ですか?」

「別に何か用って訳じゃねぇんだけどさ……マジでどうなってんだよカノープス」

 

何処か疲れている、というよりも呆れているかのような瞳を作っている。先日のオークスを驚愕の二段加速でぶっちぎったツインターボはダブルティアラ、既に負けているので無敗ではないがそれでも三冠が目前まで来てしまっている、これでもしもターボがティアラを取ったら同チームによる二年連続三冠という最早意味不明の所業になる。

 

「その原動力は大体ランページさんですね」

「はぁ……あの時にスカウトしとくべきだったかしら」

「よくもまああいつを口説き落としたもんだぜホントに」

「私が口説いたというよりも、勝手に口説かれたというか惚れられたというのが正しいんですけどね」

 

あの始まりも今となっては懐かしい、彼女が大きな変化点となってカノープスは何時の間にかリギルやスピカと同格の扱いをされるようになった。お陰でお給料も上がっているので有難い限りである。

 

「ツインターボは休養中か?」

「オークスの直後ですので、ランページさんのご厚意でメジロ家の療養所に」

「何だよずりぃな」

「と言ってもターボさんはメジロ家とは遠い親戚に当たりますので」

「……そうなの?」

 

現在ターボは療養所で休みながらも勉強中。秋山の86、そしてランページのインプレッサに刺激を受けたのかターボも車を持つ!!と発起して現在猛勉強中。療養所のスタッフが勉強を見てくれているらしいがとても真面目で直ぐにも免許を取れるようになると言われてしまい、授業でもその位の真剣さを発揮して欲しいと、思わず南坂が愚痴ってしまった。

 

「それにしても……凄いわね彼女」

 

そんな言葉の先に居るのはターボ、ではなくランページだ。自分のメニューをこなして確実にレベルアップし続けている筈のフローラ、戦術眼も磨いてヴィクトリアマイルでは見事にその作戦を見抜いていた。確実に大きくなっているのに……。

 

「芝とダートだと走り方も変えなきゃいけないのに、何でそこまで出来るのかねぇ……」

「合宿でしこたま走りにくい砂浜を走らせましたから」

「ああっ黒沼のメニューと間違えたのかと思ったぐらいのあれか!!」

「貴方、まさか二刀流を想定してたの?」

「そんな事ありませんよ、あの時はジャパンカップ以外は見えていませんでしたから」

 

砂浜特訓によるダート適性は完全な副産物。あの時はそんな事は一切考えていなかったし海外への挑戦なんて微塵も頭にはなかった。だから完全な偶然、とは言い切れないのは事実。彼女ならば世界を狙えるのは明白だった。

 

「次はダービーか……お前の所のネイチャスゲェ厄介だからテイオーも大変だわ」

「それはそれは……頑張ってください」

「おまっ他人事だからって」

「他人事ですし敵チームですので」

「まあ当然の反応ね」

「おハナさんまで言うか!?」

 

現在コースに出て練習をしているのはイクノ、ライスとタンホイザ、そしてチケット。沖野のお目当てであるネイチャは此処にはいない。

 

「そう言えば話題のウマ娘が居ないけど、あいつどうしたんだ?」

「ランページさんですか?今日は休みにさせてます、気分転換にドライブに行くと言ってましたよ」

「ドライブってああそうか、あの子って免許も車もあるのだったわね」

「一括で車買うって流石スターウマ娘は違うなぁ」

「アンタはもうちょっと貯金なさい、ウマ娘の為に使うのは良いけどそれで自分が使う分が無かったら元も子もないわよ。後、それで私に集るのやめて」

 

ワンツーの見事な言葉のパンチが沖野のボディへと命中していく。これに関しては紛れもない事実なので否定する事などは出来る訳もないだろう。

 

 

「いやぁそれにしてもなんか悪いね、態々車出して貰っちゃって」

「構わねぇよ、そもそも気分転換するつもりだったんだからな」

 

サブシートにネイチャを乗せながら運転するランページ、元々気晴らしのつもりでインプを転がしながらぶらぶらするつもりだった所に偶然新しいシューズを見に行く所だったネイチャが居合わせたので乗せて行く事になった。

 

「それにしても、随分と様になってますなぁ。実は昔から車に乗ってたとか、厳密に言うと中一の頃から」

「さて、如何でしょうね。その頃はそんな余裕はなかったと思うけど……」

 

ヒトソウル云々を踏まえれば否定しにくい。まあ流石にその時だって免許を取ってから車を動かしたのだが。

 

「いよいよダービーか……如何だ、調子は」

「良いと思うよ、トレーナーからもこれならいい結果が出せるって言ってたから」

「いい結果か……南ちゃんらしい言い方だな。その結果がお前にとっての良い結果であって、レースの結果とは言わない辺り意地が悪い」

 

つまり、負ける事もいい結果であるという事。次の糧に出来るという意味では確かにいい結果にはなるだろうが、そこはトレーナーとして必ず勝てるとかいうべきなのではないだろうか。

 

「いや、アタシはあの言い方の方が気が楽だよ。カノープスに誘われた時もあんな感じだったし」

「ほ~ん……どんな風に誘われたんだ?」

「良いけど、そっちは?」

「俺はイクノの併走相手の代理を頼まれてな、その時に南ちゃんのウマ娘に対する態度で惚れた。それで契約持ちかけた」

「なんというか、ストレートな」

 

自分とは大違いだ、それと比べて……と気分が落ち込みそうな瞬間にワザと強めのブレーキが掛けられて身体が揺さぶられた。横を見ると下らない事考えるなと言わんばかりに睨み付けられる。そう、何時までも後ろ向きでは前に進めない、だから前を向いて皆と、カノープスで頑張ろうと皆で決めたんじゃないか。

 

「選抜レースでさ、3着だったんだよね。しかも前とは6バ身位だったかな……それで結局3位、自分はこの位なのかなぁって落ち込んでたんだけどトレーナーが話しかけてくれたんだよね、貴方の一生懸命に走る姿に魅せられたって」

「言いそう言いそう」

「でしょ?んで当たり前って言ったら、諦めずにそれが出来る事こそが貴方の最大の武器だと私は思います、そして私は誰よりも速く、誰よりも強いウマ娘と一緒に走りたいのではなく、魅せられたウマ娘と歩みたいと思っています。なんて言うんだよトレーナー」

 

くすぐったそうに笑うネイチャに釣られて自分も笑顔になってしまった。

 

「なんだよ、意外とナンパの技術あるじゃねえかよ南ちゃん」

「それでホイホイつられて今に至るって訳、あの時のアタシじゃ絶対に考え付かなかったよ―――ダービーなんて、キラキラウマ娘の舞台で走るなんてさ」

 

未だに信じられない。キラキラしたウマ娘になりたい、そう思っていたがなれるとは思った事は無かった。だけど今の自分は如何だろうか、立派なG1ウマ娘で日本ダービーにおけるテイオー打倒の大将格の2番人気に推されている。そして、今もテイオーを倒す為の気持ちが滾り続けているのだから自分でも驚く。

 

「ダービーを勝てたら、アタシもキラキラウマ娘の仲間入りかな」

「何言ってんだ、ダービーに出れる時点でキラキラウマ娘だよ」

「アハハッそりゃそっか……そうだよね……ラン」

「んっ?」

「全力で行く、トレーナーの言ってた通りにどんな結果になっても構わない。アタシは―――全力でテイオーを倒してダービーを取ってみせる!!」

 

ネイチャとは思えない程に力強い言葉に思わず此方も笑ってしまう。

 

「そりゃいい、ターボもダブルティアラでネイチャがダービーを取ればカノープスにも更に箔が付くな」

「か~無敗のウマ娘様が言うと違いますな~ランの名前に傷が付かない程度に頑張るよ」

「傷付けるのはお前じゃなくてマスゴミだろ、そんな野暮で何も考えない奴いたら俺がボコボコにしてやるから安心しろ」

「天下のメジロとシンボリのお婆様を配信に出したランが言うとマジで洒落にならんね」

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