貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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129話

今年も合宿の時期、即ち夏がやって来た。今年のカノープスも資金は潤沢、ランページだけではなくイクノやネイチャ、ターボにタンホイザにライスも勝利を上げる事が出来て学園からの評価も高い。そのお陰で今年もリギルが使うホテルを使用する事が出来る。

 

「はぁぁぁぁ……」

「何で溜息をついているんですか」

「おめぇのせいだ全体的に」

 

リギルも使うホテルでの合宿、という事は当然リギルもこのホテルでの合宿を行う。そして今年は……

 

「今年の合宿はリギルとスピカとの合同合宿となりました」

 

向こう二チームからの要請でこの三チームの合同合宿が行われる事となったのだ。南坂としてはこの申し出を受けない理由は存在せず、向こうとしてもランページとの併走なども出来るのでメリットも大きいので受けてくれてホッとしているとの事、だが肝心のランページとしては出来ればお流れになって欲しかった。

 

「何で楽しい楽しい合宿で身の危険を感じなきゃいけねぇんだよ」

「だから誤解なんですってばぁ……」

「愛なんて言葉を使ったお前が悪い」

「だってそれ以外に思いつかなかったんですもん……」

 

そう、リギルとも一緒に行うという事は必然的にフローラとも近くに居る事になるのだ。別段ライバルが近くに居る事自体は別にいいのだが……愛なんて言葉を使ったお陰でランページ的にはフローラは余り近寄りたくはない存在へと変貌している。

 

「もういっその事、ガチだって言われた方がまだ諦めが付くわ」

「やめてくださいよ私には異性との恋愛希望があるんです!!」

「信用ならね~」

「ラン~お待たせ~!!」

「お待たせいたしました」

 

そんなやり取りをしている間にテイオーとマックイーンがやって来た。今回の合宿では他のトレーナーが監督するメニューに取り組む事が出来るようにしているらしく、この三人は自分と共に南坂のメニューを受ける事になっている。チケットはタイシンと共にリギルへ、ターボはライバルであるテイオーのトレーナーである沖野の所へと行っている。

 

「それでどんな特訓するの?前の合宿だとタイヤ引っ張ってたよね」

「私たちも同じことをするのでしょうか……」

「如何だろうなぁ、曰くあれは俺の頑丈さがあるからやってたみたいな事言ってたけど」

「あんな事するんでしょうか……やる覚悟はありますが」

 

矢張り去年の自分のメニューを見ていた三人からすれば、自分達もそれをこなすのだろうかという不安もある。それも覚悟しての南坂メニューの希望ではあるのだが……いざ直前になると緊張も出て来てしまう。

 

「お待たせしました」

「応南ちゃん、ライス達の方は良いのか?」

「はい。ネイチャさんをリーダーにお任せして来ました」

「そっか、ネイチャは違うんだ」

 

そんな言葉を出したテイオー、少しだけ彼女と共に練習する事を期待していたのだろう。次の菊花賞を走る相手とは別のメニューをするという彼女に自分も負けてられないとテイオーは闘志を燃やす。

 

「それでは始めようと思います」

「質問~!!」

「はいテイオーさん」

「去年、ランがやってみたいなタイヤ引きとかってボク達もやるんですか~?」

 

やっぱりそこが一番気になるのか、と南坂もその質問が来る事は織り込み済み。

 

「近い事はしますが、同じ事はしません。ランページさんは身体も大きい上に強さもあるので出来ますが、皆さんが下手に同じ事をしようとすると怪我をする恐れがあります」

「俺だって怪我しそうだったんですけど」

「貴方なら心配いりませんから」

「喜べねぇよ……」

「そこで皆さんにはまず基礎的な部分からミッチリ鍛えるメニューをご用意してます」

 

身体を横にするとそこには大量のボールが収められている段ボールが複数置かれていた。その中から幾つかのボールを手に取った。

 

「テイオーさん、このボールを私がトスしますからそれをノーバウンドで取ってみてください」

「うんいいよ」

「ではっ……はい」

「楽勝~ってうわぁっ!?」

 

得意のステップでボールをキャッチしようとするが、砂浜で上手く踏ん張りが利かずにボールに追いつけず取れなかった。それを悔しがる暇もなく、南坂は連続してボールを投げる、テイオーはそれに必死に喰らい付くが、10個を投げられて取れたのは4個だけだった。

 

「け、結構難しいよこれぇ……」

「まずお一人が私と砂浜でこのボールキャッチをして貰います、これはつま先を鍛えるには非常に効果的なんです。ランページさん」

「応よ」

 

今度はランページが挑戦、テイオーはそれを目を皿のようにして見つめる。自分が出来なかった事を彼女は出来るのか……確かめたいという一心で真剣に見る。そしてそれは直ぐに分かった。

 

「ほいっほい!!っと意地悪だな!」

「はい、はいはい」

 

左右交互という訳ではなく、ランダムな方向にも投げていく南坂のボールに全て反応してキャッチしていく。最後には真後ろへと投げて来た、それを南坂へ真正面から向かっていき、まるですり抜けるように通過してキャッチする。

 

「後ろは酷いんじゃないか南ちゃん、ちょっと焦ったじゃん」

「でも取れたじゃないですか、去年よりもずっと進歩してますよ」

「やれやれ」

 

仲良さげに二人を見つつ、テイオーたちは思わず喉を鳴らしていた。左右に振られていた筈なのに、一気に加速してボールに追いつくほどの瞬発力、圧倒的な加速に三人は驚愕した。

 

「このトレーニングは皆さんが思っている以上にキツいですよ。砂浜で足が取られるので転ばないように注意してください、そして残りのお二人はその間に海に入った状態でスクワットをして貰います」

「ス、スクワットですの?」

「波がある状態でのスクワット……」

「シンプルですが辛いですよ、下半身のバランスを取りつつですからね。そしてランページさんは―――これです」

 

差し出されたロープ、そしてその先にはタイヤ3つ。またこれか……と言わんばかりの表情を作る、メニュー自体は同じだがタイヤの数が増量されている。

 

「太腿までちゃんとつかるんですよ、私は三人のトレーニングを見てますので」

「へ~い……」

 

文句を言ってもしょうがない、まあ言うつもりもないのだが……ロープを巻き付けると海へと入っていた。今日の海は穏やかではあるが、時折大きな波もやって来る。こんな中でタイヤを引いて海の中を歩くのは相当に堪える。

 

「皆さんカノープスへようこそ―――さて、始めましょうか」

「よし、ボクが最初ボールキャッチやる!!さっきのリベンジだ!!」

「それでは私とフローラさんがスクワットですわね」

「分かりました」

 

始まった合宿の特別メニューのトレーナー別特訓。南坂は基礎的部分を徹底的に鍛え上げる事に重視する。基礎が確りとしていれば応用は何倍にも強くなっていく。その事はテイオーたちも重々承知している。

 

「あっととっ……!!あああっ!!?」

「さっきとは違いますよ、交互とは限りません」

「負けないぞぉ~!!」

 

「この、スクワット、思った以上に来ますわね!!!」

「効くねこれ!!」

 

この三人が何故、カノープスを選んだのか……基礎を鍛え直すのもある、だがそれ以上にあのランページを育て上げた南坂の指導を受けてみたいと思ったからだ。それを自分に力に変え、彼女に勝ちたいと思っている。

 

「くそ、数が増えてるせいで歩きづらい……!!だけど、負けねぇよ!!」

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