様々な勧誘を受けながらも、結局スーパークリークのような逆指名を行いながらトレーナーを決めたランページ。南坂トレーナーが率いるカノープスへと入ったランページ、が良くも悪くも中堅どころである為に本当にそこで良いのかと言った意見を言われる事もあった。
「カノープスか、良いチームだと思うぜ俺は。応援させて貰うよ」
「変態の応援なんざぁ一銭の価値にもなるとは思えねぇけどな」
「こいつぅ……」
が、リギルの東条トレーナーやスピカの沖野トレーナーは寧ろ良い選択だと感心しつつも彼女の活躍を応援した。
「そんな悪いかよカノープス」
「まあ南坂がまだ若いせいで過小評価されちまってる点が大きいな、実際はいいチームだけど良くも悪くもバランス重視のチームだからな」
リギルは東条トレーナーが行う管理主義を掲げるチーム、スピカはウマ娘の意思を尊重する放任主義と言ったように何処かに特化したような方針などがある。それによって結果を出しているウマ娘もいるので、基本的にチームは何らかの方針などを掲げるのだが―――カノープスが掲げているのは安定。ウマ娘が怪我をする事なく、シリーズ完走を目指すというのがチームの目標であり、無事是名バを目指している。
「だからなんつうか引き付けられねぇっていうのかね、三冠目指す!!とか連覇!!っていうのを目指すチームではねぇわな」
「ふぅん……」
故に、他のトレーナーが言いたいのはそれだけの素質を持っているのならばリギルなどに行って自分の長所などを目指す指導方針を取る所に行くべきという物なのだろう。沖野としてもその意見は分からないでもない。
「でも俺はカノープスから移籍する気もねぇからな、あのトレーナーに俺のトゥインクルシリーズを預けるって啖呵を切ったのに今更ハイさよなら、ていうのも愛想ねぇだろ」
「預けるか……トレーナー誑しなセリフだなおい、そこまで言われたらトレーナーとしてやらない訳には行かねぇぞ」
「だろ、俺もそれを言った身として責任を取るつもりだ―――ンで無事是名バを体現したままカノープスを最強にする」
「―――でけぇこと言いやがるな」
「どうせやるなら、ドォンと胸張ってでっかくだ」
そう言いながらもシガーを灰皿に押し込みながらもその場から去っていくランページ、それを見送った沖野は自分も煙草を吸おうとしてしまいながらも、懐から飴を取り出して舐め始める。
「胸張ってでっかくねぇ……カッコいい事言いやがって……そうだな、スピカもそうするべきだな」
三冠ウマ娘というミスターシービーが所属するチーム、次を走るスター候補ウマ娘もいる。そんな現状に沖野は思わず微笑んだ、自分もそんな候補をスターに育て上げるべく、胸を張ろうと思いながらも、気分良く立ち上がってやるべき事に精を出すかと歩き出すのであった。
シガーを吸い切って気持ちのリセットも終わった所でカノープスの部室へと顔を出す事にしたランページ。今日から此処に自分は通う事になる、そう思うと少しばかりに緊張する。扉を開ける手にも思わず力を込めてしまいながらも扉を開けるとそこにはノートパソコンで映像を見ながらノートに何やら記載を続けているイクノと何かを読み上げている南坂トレーナー、その様子を見ながらもお茶を淹れているウマ娘と椅子に座りながらも脚をぶらつかせている小柄なウマ娘が居た。
「あっランページさん、来ましたね」
「遅くなって悪いなトレーナー、変態トレーナーにナンパされてな」
「全くあの人は……」
溜息混じりに苦笑する南坂、如何やら沖野は彼にも変態として認識されているらしい。そんな中で一人のウマ娘へと目を向けた、それに気付くとお茶を置きながらも頭を下げて来た。
「どうも、アタシはナイスネイチャって言います。カノープスでは先輩ですけど学年的には一つ下です」
「ツインターボ!!ネイチャと一緒にカノープスに入った同級生!!」
「アハハ、分かりにくくてすいません。詰まる所、後輩って事です」
「気にすんなって、ランページだ」
そこに居たウマ娘を見て感動している自分が居た。そこに居たのは実際にカノープスに所属していたウマ娘のナイスネイチャとツインターボだった。この二人に会えただけカノープスに入った甲斐があったと言ってしまっていいかもしれない、と納得している自分が居る。
ナイスネイチャ、有馬記念で3年連続3着という大記録が余りにも有名な競走馬。だが、その人気は凄まじくG1馬すら凌駕する程のファンを持っていた。JRA重賞勝ち馬としては最年長記録を更新中で、34歳の誕生日には5000万円を超える寄付金が寄せられた。引退競走馬の顔と言っても差し支えない。
破滅型とも称される大逃げを戦法とし、大勝ちか大惨敗かという極端なスタイルで人気を博したツインターボ。迷馬にして名馬とすら言われてしまう程だったが、それ程までに圧倒的なインパクトを誇り根強いファンも多い。
「今はこのメンバーが基本ですかね、他にも居たのですが引退して学園も卒業してしまいましたので」
「ふぅんそうなのか。まあ兎に角宜しくなネイチャにターボ、ランでもページでも俺の事は好きに呼んでくれ」
「分かったぞラン!!」
と、早速呼び捨てにするターボにネイチャはコラコラと諫めるがランページは全く気にする事も無くそれでいいと答えた。
「さて、それでは改めまして―――ランページさんチームカノープスにようこそ。このチームは無事是名バを目指しています、リギルやスピカなどに比べて毛色は違いますが、無理はせずに自分達が狙える範囲で努力していこうというのが基本的なモノになりますが、もちろん私も全力で皆さんの目標達成に尽力するので遠慮なく仰ってくださいね。出来るだけ希望に添えるようにスケジュールを組みますので」
懇切丁寧に挨拶をしながらも南坂の強かさが垣間見えた気がした。無事是名バ、それを目指しながらも自分達の目標を考慮しつつもスケジュールを構築する。簡単に言うがそれは極めて難しい事だ、だが組むと断言している。それだけ自信があるのか、そうさせるつもりなのかは分からないが、このチームならばそれが出来そうな気がしてくる。
「それでは、順々に皆さんの目標を聞かせて頂けますか?」
「ではまず私から―――私はこの学園で最強になる事です、その為に一つでも多くのレースに出て経験を積みたいと思っております」
「おっ~!!イクノカッコいい~!!」
「いやはや、いきなり最強宣言ってこりゃまた凄いわ~」
「有難う御座います、その為にも皆さんのトレーニングにも率先して協力させて頂きますので気軽に声を掛けてください」
外見こそクール系の美人でお堅そうな印象を受けるイクノだが、実際は中々にノリが良く誘えば喜んで練習にも遊びにも付き合ってくれる。
「はいはい次ターボ!!ターボはね、色んなレースで1着になりたい!!最初から最後までずっと1着が良い!!」
「成程、常にトップキープとは……レースに勝つ為には必勝の案ですね」
「ま~それが通用すればだけどね~」
「やるもん、ターボ絶対にやるもん!!」
破滅逃げとまで言われたターボらしい目標に思わず、ランページも笑いを浮かべながらも隣に座っている頭を撫でてしまった。
「何で撫でるんだラン?」
「何、ちっこい身体にでっけぇ夢を持ってて立派だと思ったのよ」
「フフン!!」
「あんまり褒めない方がいいよ~ターボってば簡単に調子に乗っちゃうんだから」
「んじゃ次はネイチャ!!」
「アタシか」
そんな中で振られたネイチャ、ネイチャはどんな目標があるのかと思いながらも何処か困ったように言葉を作る。そして少しして、少しだけ頬を赤くしながらも目標を話してくれた。
「アタシはさ……そのキラキラしたウマ娘になりたい、かな……ほら、何となく、分かるでしょ?」
「はい。とても良い目標だとおもいます、つまりウイニングライブでセンターを取り輝くという事ですね?」
「お~ネイチャもターボと一緒~!!」
「えっちょ、ちょっと違うっていうか……」
そんなつもりではなかったんだけど……と言いたげだが、既に盛り上がってしまっているイクノとターボの応援する姿勢にそれでも良いか、言わんばかりに微笑みを浮かべながらも此方を向いて来た。
「んじゃ最後はランページね。どんな目標あるのかネイチャさんってば気になるな~」
「私もです、リギルやスピカに勧誘される程の方がどんな目標を持っているのか、是非興味があります」
「リギルやスピカって三冠ウマ娘がいるとこじゃん!?凄い凄い!!」
「そうでもねぇよターボ」
そう言いながらも照れくさそうにしながらもランページは言葉を作る、自分の目標それは―――
「世話になった人達が居るんだよ、その人達に見せてぇんだよ。俺の走りを、俺は貴方達のお陰でターフを走れてますってな、そして―――このカノープスを学園最強チームにする」
「っ~!!!いい、それすっごくいい!!学園最強カノープスって凄いカッコいい!!」
「実に素晴らしい目標です、確かに目指すならば個人ではなく全体で目指すべきですね」
「う~ん……ちょっとネイチャさんには荷が重い気もするけど、なんか目指したくなっちゃう魔力があるよね~そういうのって」
「そう、ですね」
その言葉に南坂も続いた。
「流石に最強というのはそこまでしなくても良いと思ってましたけど、どうせなら行く所まで行きましょうか。カノープスを大きく、キラキラなチームにしてしまいましょうか皆さん」
『大賛成~!!!』
その後、カノープスの部室に『目指せ最強カノープス!!』という達筆な目標が掲げられる事になったのであった。
早めにターボ師匠をカノープスに入れちゃいました。だってこの方が絶対に面白くなるし。ターボ師匠書きたいし。