貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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131話

「ううっ……ご飯が、美味しぃ……」

「お米の甘さが、身体に染みますわ……」

「こんなに疲れを感じたのって、リギルに入って初めての練習以来かも……」

 

昼食の時間となりホテルで昼ご飯を食べている時にテイオー達は午前の練習で受けた疲労が想像上の大きかった事を改めて実感した。南坂のメニューは全て基礎体力を鍛える為の物ばかりだった、だがそれ故に身体に圧し掛かる。

 

「ブ~ン!!テイオー、カノープスの練習は如何だ!!」

「げ、元気だねターボ……」

 

やって来たターボの元気さが今日ばかりは非常に羨ましく思えるテイオー、同時に自分と違った練習なのだから疲れていないとも思ったが……ターボはターボで日常的にこんな練習を続けているのか……と自分がライバルと決めた相手を見る目が何時の間にか変わっている事に気付く。

 

「ターボの方はいっぱい見て貰った!!でも突然足触って来るから吃驚した」

「ハハハットレーナーらしいなぁ」

「あれ、ランは?」

「此処だ此処」

 

ターボの言葉に反応するように大量の料理を持って席に付くランページ、バイキング形式の昼食だがテイオー達に比べると数倍の量。それに思わずマックイーンが反応する。

 

「そ、そんなに食べるんですの?この後も練習有りますのに大丈夫なんですか?」

「この位喰わないと持たないのが南ちゃんのメニューなの、それと俺の場合は喰わないといけないんだ」

「いけないって……どういう事なんですか?」

「ランは少食だからだよ」

 

ターボがそう言うが、如何見ても少食の量ではない。

 

「少食だから大量の飯を喰えるようにしてるんだよ。それで最近漸く普通のウマ娘並に喰えるようになってきた訳だ」

「そうなんだ……」

「その量じゃ午後持たないぞ、もっと入れとけよ。南ちゃんもお前らの実力は完全に分かったから午後からが本格的なメニュー開始だ」

「えっもう!?」

「私達のトレーナーさんも初日は見極めに専念すると仰っておりましたよ!?」

「おハナさんだってそうするって!!」

「南ちゃんはその辺りがマジで早いからなぁ」

「うん、練習の途中でも変更できるもんね」

 

ターボもそれは確かだと証言する、南坂は観察眼とそれらを直ぐにメニューに反映させる作成能力が非常に優れている。カノープスでの練習では、それによって自分の調子の上下や成長を実感出来るのでそれらは非常に有難い。

 

「まあ早い遅いってのはトレーナーによって変わるからな、じっくりゆっくり見て慎重にメニューを組むのだって大切な事だ。ターボ、そっちは如何だった?」

「ウチのトレーナーと結構違うよ、ドッカンターボ見せたらすっごい驚いてた!」

「だろうな、まあドッカンターボをそもそもウマ娘の走りでやろうって考え自体中々出来る訳じゃ―――」

「「「もっと取って来る!!」」」

 

3人揃って、勢い良く少なめにしていた食事を食べ切ると追加分を取りに行った。このままでは間違いなくいけないと思い、気合を入れ直す為に燃料を投下するのだろう。

 

「ターボ、沖トレお前の基礎体力見て驚いてたんじゃねえか?」

「うん。なんか驚いてた、それでトレーナーに後でなんか話しに行こうって言ってた」

「ふぅん……メニューでも聞き出すのかね」

「さあ?」

 

 

トレーナーである南坂も他のトレーナーに絡まれていた。その相手は当然、沖野と東条である。

 

「おい南坂、お前どういうメニュー組んでるんだ?」

「こっちもよ、あれでデビュー前なんて信じられないわ」

 

分かっていたつもりだが、メニューを監督し目の前で指導する事で改めてカノープスメンバーの長所が把握できた。紛れもない基礎体力の高さ、技術を疎かにするのではなく土台となる基礎を重点的に鍛えているからこそ、基本的な技術でも相当な威力が発揮出来るようにしている。

 

「常に目を配り続けただけです、皆さんが自信を持って前に進めるように」

「成程な……ツインターボに応用的な技術の事を話した時は吃驚してたよ、こんな事教えてくれるのかって」

「こっちもよ、確かにデビュー前の子だから基礎体力作りが大部分なのは分かるけど貴方の場合はそれが殆どだったのね」

「ええ。怪我をさせない為に、そして次の自信に繋げさせてあげる為に」

 

結局のところ、南坂が重視するのは一貫してウマ娘の身体。一度のレースで崩壊するような身体ではいけない、練習で崩れてしまうようではいけない。まずは確りとした土台を築き上げてあげる事こそがトレーナーの責務だと思っている。故に、他のチームと比べるとやや技術で劣る部分はあるかもしれないがその威力では負けてはいない。

 

「重点的に基礎を教えつつ私が種という応用の種をまいてあげるんです、それを経験と基礎を養分にして自分で育て、応用の芽が発芽したら―――凄い自信になりませんか?」

「そう言う事か、少し回りくどいけどな」

「誰かに教えられるじゃなくて、自分で気づいた時のモチベーションって全然違う物ね」

 

沖野と東条から見ても南坂の指導方針はやや変則的だ、基礎を築いたら次にするべきなのは応用、だが敢えてそれをせずに基礎をメインに据え続ける事で徹底的に本人の身体を鍛え続けていく。そして、最後に種を仕込んで自分で発芽させる。そうして生まれるのは揺るぎない自信とこれ以上ないやる気。

 

「それが私の指導です」

 

 

「それでは午後のメニューを始めます、午前のメニューで皆さんの実力は分かりましたので本格化させます。まず皆さんの重りを1枚から3枚に増量します、その状態で海の中に入って歩いていただきます」

「ラ、ランの言ってた通りに変えてきた……!!」

「望む所ですわ……その為に、その為に沢山食べたのですから……食べたの、ですから……!!」

「な、泣いてませんマックイーンさん……?」

 

午後に入って、何故か突然軽い涙目になったマックイーンに南坂は首を傾げながらもランページに事情を尋ねた。

 

「如何かなさったんですか……?」

「いや、マックイーンって体重をかなり気にするタイプでな。今回の合宿に入る前も甘いものを我慢してカロリー計算をしてたんだと。ンで午後からキツくなるからそれに耐える為に沢山喰ったんだよ」

「そういう事でしたか……」

 

確かに乙女にとっては体重の増加は深刻の問題だ、ランページは内部的には男の要素が強い為に特に体重はそこまで気にしない。というか筋肉量がかなり多いのでランページは同年代のウマ娘に比べて体重はかなり重い。その辺りも気を付けてメニューを組む事を南坂が保証したのでマックイーンは何とか気を持ち直す。兎も角海へと入っていく皆を見送りながらも、次にランページのメニューを発表する。

 

「ランページさんは走る時に何処で走っていますか?」

「何だよ急に……何処って全身だよ全身」

「良い答えです。そうです、走るというのは下半身だけではなく上半身も使う全身の運動です。脚を鍛えれば速くなるというものではありません」

「つまりこれからは上も鍛えるって事かい?」

「はい。レースでも起きるぶつかり合いで体勢を崩してしまうと一気に遅れますよね」

 

レースの映像でも見た事がある。激しい競り合いの中で相手とぶつかって体勢が崩れると立て直せずに、ズルズルと後退していくウマ娘の姿。自分は基本的に囲まれる事はない程に逃げるのでそんな経験はない……。

 

「この前の帝王賞……」

「ええ。そして、あの時にぶつかり合いが起きると如何に貴方とはいえ崩れる事は十分に考えられる。なのでそれを避ける為にメニューを組みます、具体的に言ってしまうとバランスの強化、それによってモンスニーさんに教えて頂いた身体を一つにして走る走法を更に完璧に仕上げます」

「応、望む所だ」

 

きっと見据えているのは海外だ、海外となればきっと実力が拮抗したウマ娘は多いだろう。それを想定してメニューを組んでくれているのだろう。望む所だ、彼の組むメニューならば自分は幾らでもこなして見せよう。

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