私はダーレーアラビアン。
「今日こそ超えてやる……!!」
「ハハッ基礎と同じで一朝一夕に超えられるほど、山は甘くないさ」
合宿のメニューにシンザンとの特訓が追加され、合宿は苛烈さを増して行った。普段のメニューを終えると山へと向かい、そこでシンザンと合流し山を登って降りて、そしてまた午後になるとまた登る。そんな日々が続き始める事、合宿も8月に突入した頃の事。
「あたしかい、あたしは近くの民宿に泊まってるよ。優しい老夫婦がウマ娘相手だってのに沢山の料理拵えてくれてね」
「へぇ~」
メニューとなると途端に闘争心を剥き出しにするランページも普段はシンザンとかなり仲良く出来ている。既に連絡先も交換してゲームのフレンド申請も行った。後、今度の配信にゲストとして出てくれる事も確約した。
「にしても意外だったのはリスナーだった事っすね」
「ハハハッ!!そりゃ世間様を騒がす無敗のワールドホルダーが配信なんて面白い事をやってんだ、そりゃ腹抱えて見させて貰ってるさ。あたしもマスゴミは大っ嫌いでね、其方に一矢報いるあんたの事は大好きさ」
「ハハッ!それじゃあ今度の配信じゃどでかい事でもやります?」
「いいねあたしのコネ使って誰か呼ぶとしようか、そうだねぇ……カブラヤオーとかどうだい。あんたと同じ大逃げだ、いやテンポイントとかグリーングラス……トウショウボーイも面白いねぇ。誰が良いと思う?」
「もうビッグネームがポンポン出てきて芝3200、というか気軽にTTGを呼ぼうとしてないでくれ……(というかトウショウボーイってシービーの親父*1だったっけ……あれでも親父さんはトレーナーって言ってたっけ……ウマ娘世界でこんな事考えるのはウマ娘の歳考えるのと同じ位不毛か)」
流石のビッグネームだのシンザン様と言わんばかりに彼女のコネの先にある名前はとんでもない面子芝刈りでもう笑うしかない、この面子が本当に自分の配信に出られたらもうTV局とかが別の意味で潰れるんじゃないだろうか。
「(あれ、つうかシンザンってスーちゃんよりも世代的には前だったような……)」
「何だいあたしがそんな婆にみえないって思ってんのかい」
「いえ、シンザン先輩は見目麗しいお姉様で御座います!!」
「宜しい♪」
実際問題として、シンザンはスピードシンボリよりも前の世代にある。それなのに見た目的には彼女の方が若々しい、美魔女もいい所だ。
「こっちのホテルに来たらいいのに、金には困ってないんでしょ」
「そういう心配はないんだが……高級ホテルなんざ性に合わん」
「その気持ちは分かります。でも貴方に話聞きたい人はいると思うよ、主にウチの会長とか」
「あ~……ルドルフか」
シンザンを越えろ、そんなスローガンが立てられるほどにシンザンの活躍は凄まじかった。そして、漸くそんな存在となったのが皇帝シンボリルドルフ。この世界でもそれは同じであり、ルドルフが活躍した時にはシンザンを越えたと大量のニュースが流れたとスーちゃんから聞いている。そして、彼女もシンザンの事をかなり意識していたらしい。
「やだよ、あたしは肩凝るのは苦手でな。絶対に堅苦しい挨拶してくるわ、抱負述べてくるに決まってる」
「実際言いそうだからなぁ会長……」
「あたしは気楽にラフ、そして気が合う相手とやるのが一番なんだよ」
「その気持ちは分かるわ」
「やっぱり気があうな」
そう言いながらもシンザンはチューペットを半分に折って、半分をランページに差し出す。
「あざ~す」
「こういう風に出来る奴といるのが一番さ」
「激しく同意っす、そういう意味じゃカノープスはそういうチームだなぁ……内輪ネタで飽和してるようなもんだし」
夏の熱気にアイスの冷たさが染みる、一緒に噛み砕くようにアイスに齧りつく二人は同じタイミングで頭が痛くなったりしながら*2共に身体に冷たさをチャージし終えると再び山を登り始めていくのであった。
「にしても、大分山登りにもなれたもんだね」
「そりゃ毎日登って降りてればねぇ……」
「そりゃそうか、ちょいと脚触るよ、大丈夫かい?」
「いいですよ、トレセンには勝手に脚触るトレーナーがいるんで」
「ハハッなんだそりゃ。蹴られても文句言えないよそれ」
冗談と思われているのか、軽く笑って流されるのだが……本当なんだから性質が悪い。そして三冠ウマ娘のトレーナーなんだから余計に性質が悪い。
「(基礎トレを欠かさない上に山登りも毎日してるお陰で筋肉量も増してきてる、それに改めて触ってみりゃ骨格もガッチリしてる……関節もしなやかで柔軟……こりゃ天賦の才だ、益々面白い)いいもん持ってるじゃないか、こんだけの身体を持ってる奴はそうはない」
「そりゃどう~も、トレセンの変態も似たような事言ってたよ」
「だからなんじゃそりゃ、今のトレセンは実力重視で色物でも大丈夫なのかい?」
「俺は寧ろ貴方の時代を知らんから何とも」
矢張り本気とは取られる事も無く、その発言は流される。その頃、ターボを見ていた沖野はデカいくしゃみをして夏風邪を疑ってホテルに戻ると風邪薬を飲んだとか。
「この全身を使った走りに蹄鉄で鍛えたパワーを活かした大逃げか……確かに無敗の十冠も納得が行く。今からだって世界で通じる筈だよ、何で行かない?」
「筈じゃ駄目だ、通じるにしないと」
「確実にしたいと?」
「焦ったって結果は見えない、地に足付けてじっくり鍛えた方が見えてくる物はでっかいよ。俺は、どこぞの三冠みたいに大地を弾んでいく何て出来ないからね」
ジャパンカップで海外の力は既にある程度は把握している筈、だが焦る事も無く自分を高めている。しかも自分の蹄鉄を使って……何とも小生意気な後輩だ。実に可愛がり甲斐があるじゃないか。
「ならとことんあんたを扱いてやるよ、どうせだ蹄鉄の名前をランページ鉄に変えてやるぐらいの意気込みで走りな」
「良いんですか、貰っちゃって」
「こんな物、大っ嫌いなんでね。欲しけりゃくれてやるよ、名前なんてシンザン記念だけで十分だ」
こんな物が役に立ってくれるならば、幾らでも立ててくれればいい。自分のトレーナーだって喜ぶはずだ、もう現役を離れて走る事なんて絶対にないと思っていたのに、こうして走るなんて……考えた事も無かった。血が騒いで身体が震える、あの時のように、またレースを走りたいとすら思っている自分に笑ってしまう。
「さてと……今度は砂浜で特訓だ、言っとくがあたしがシンザンだって言うんじゃないよ。面倒事は嫌いだ」
「だったら山でやり続けた方がいいんじゃねえの?」
「ハッ扱いてやるって言ったのに日和った真似出来るか」
「流石、よっ鉈のキレ味!神の山を登るウマ娘!!」
「ハハハハッもっと言いな!!後、あたしのシンザンは神の山じゃなくて伸びる山だよ*3」
「あっそうなの?」
「あ、貴方は……まさか、シンザン、殿……!?」
「(おい如何すんだよシンザンパイセン、一発でバレたぞ)」
「(いやまだ誤魔化せる)何の事を言ってんだあんた、あたしはそんな大層な奴じゃないよ」
「お会いしたかったです、五冠ウマ娘にして神のウマ娘と称された貴方に」
「如何しようランこれぜってぇ誤魔化せねぇよ、それに全然話聞いてくれねぇよ」
「だから山でやろうって言ったのに……南ちゃん如何にかならねぇ?」
「流石に無理かと……」
ランページの交友リストにシンザンが加わった!!
同時にとんでもない方々とパイプが繋がった!!