貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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14話

「うおおおおおおおおおっっっ!!!」

 

その名が如く、加速しきったままゴールするツインターボを見つめながらも手元のストップウォッチを押したネイチャ。矢張り早い、同期のウマ娘を考慮したとしても頭一つは飛び抜けたような速さを誇っている。

 

「ゼェハァゼェハァ……」

「ちょっとターボ、アンタ大丈夫?練習なんだから少しはペース落とした方がいいよ」

「ターボは最初から全開がいい、最後まで全力の方が気持ちいいもん!!」

 

走り切ったが故に疲労を見せるが、それを吹き飛ばすような笑みを浮かべるターボに苦笑しつつもこれが彼女の走りか、とネイチャは続けようと思っていた言葉を仕舞い込むのであった。実際問題ターボの破滅的なペースは決して弱い訳ではない、寧ろ型に嵌まれば無類の強さを発揮する……が、まだまだスピードに対してのスタミナが不足しているのが問題点。

 

「らぁぁぁぁぁ!!!」

「ハァァァァァ!!!」

 

そんなターボを一気に抜き去るかのようにランページとイクノが駆け抜けていく。今回は2000mでの併走らしいが、最初からランページは全開に近いペースで飛ばしており、それにイクノは食らいついていく。

 

「オオオオオッ!!!ラン凄い、ターボみたい!!」

「いや、実際とんでもない超ハイペース……あれで持つのかな?」

 

正しくターボのような全力疾走、あれだけのハイペースで最後までもつのだろうか?という疑問もあるが、そんな疑問を他所にしながらもランページは駆け抜け続けていく。大地を強く踏み、飛び跳ねるようにしながらも突き進んでいく彼女。そしてそれに負けじと同じようなハイペースで駆け抜けるイクノ、その攻防はそのまま最後の直線にまでもつれ込んだ。ここらが本当の正念場。

 

「さあ、飛ばすぜぇ!!」

 

そう言うと更に加速するランページに思わずターボも声を上げてしまった。

 

「また伸びた!?」

「うっそ、あれで溜めてたっての!?」

 

破滅逃げのような大逃げを打ちながらもラストでさらにペースを引き上げるという狂気のような凄まじい走りを見せ付けるランページ。流石のイクノの完璧なペース配分でもそれを捕まえきれずに、そのまま5バ身を付けてランページが先にゴールを決めた。

 

「ハァハァハァッ……イクノ、お前本当にペース変わらねぇな……サイボーグでも名乗るか……?」

「いえ、まだその域には達していません……途中、崩れてしまいましたから……」

「名乗る気はあるってか……」

 

そんなやり取りをしながらも思わずターボは駆け寄りながらもランページに抱き着いた。

 

「ラン本当に凄かった!!ターボもあんな風に走りたい~!!今度はターボと一緒に走ろ!!」

「そりゃ、どうもぉ……だけどちょっと休ませてくれ……流石に草臥れた……」

 

そう言いながらも座り込むとそのまま天を仰ぐように仰向けになった。それに続くようにイクノも倒れ伏すように荒い息を吐く、それを見たターボはタオルとドリンクを取りに駆け出して行く。それをネイチャは呆気に取られつつも南坂トレーナーに尋ねた。

 

「ねえトレーナー、如何してランはあそこまで持ったの?ターボみたいな全力だったのに」

「それは純粋に体力差もありますが、体格の差もあるでしょうね」

 

ターボの身長は146㎝でランページの身長は175㎝と約30㎝の差がある。これだけの差があると走り方も大きく変わって来る、ターボは低身長なので脚の回転数を高めて走るピッチ走法を行うがランはその高身長を活かすストライド走法が基本。一般的に走る際には身長の倍程の距離を移動出来ると言われているので、高身長であればそれだけ長い距離を一度に移動出来ると言われている。

 

「加えてランページさんは途中でペースを落としていました、それでラストの直線で出す体力の温存も行っていたんです」

「は~……そんな事まで」

「イクノさんには通じていませんでしたが、他の方の場合はそこを狙って急加速しようとする筈ですから逆に体力を削る事が出来ます。大逃げで距離を稼いでおけば詰められる距離も少なく出来るという作戦も組み込まれていますね」

「そこまでやってるんだ……」

 

素直にネイチャはランページの走りの戦略に驚いてしまった。単純な大逃げという訳ではなく、溜め逃げを考慮しての大逃げで相手のスタミナをより削る事も織り込み済み。それでいながらもペースの変更も得意なので、共に走るウマ娘としてはかなりやりにくそうと強く思った。

 

「それにタマモクロスさん達ともよく走っているそうですので」

「えっタマモクロス先輩と!?」

「ええ、それで徐々に追い込みの走りも覚え始めています」

 

タマモクロスともよく走り込んでいるランページ、元々走る約束をしていたので走っているというのもあるが、格上相手にどんどん勝負を挑んで経験を積もうとしている。そんな意欲的な後輩に頼られているタマモクロスは気を良くして相手をしてくれている。が、最近は何故かスーパークリークも参加し始めており、ランページは良く絡まれているらしい。

 

「良いな~!!ターボも、ターボも走りたい!!」

「んじゃ今度聞いといてやるから……取り敢えず休ませろ」

「分かった、んじゃターボの走り見ててね!!」

 

そう言いながらもイクノと共に引っ込みながらも、今度はターボの走りを見る事にした。そして準備をするターボの姿を見ている二人に南坂はある事を振った。

 

「お二人は来年デビューですが、路線は決めていますか?」

「あ~……如何したもんかねぇ」

 

このまま順調に行くならば来年にデビューする事は確実、ならばその先のクラシック期は何方の路線に進むかという話になる。王道路線とも呼ばれるクラシック三冠路線か、トリプルティアラ路線か、距離適性的には二人にはこの選択肢のどちらも与えられる事が出来る。

 

「イクノは希望とかあんの?」

「何方も捨てがたいですね、ランページさんは何方か決めていますか?」

「あ~……」

 

正直な事を言うとライアンと共にクラシック三冠路線を目指すのも悪くはないと思っている、だが以前同室のラモーヌにチームとトレーナーを決めたという話をしたのだが……

 

『あら、それは素晴らしいですね。それではクラシックでティアラに進むのでしたら是非声を掛けてくださいね、お手伝いしますから♪』

『気が早いような気もするんですけどねぇ……』

『善は急げ、思い立ったが吉日ですよ♪』

 

と暗にティアラ路線に行こうよ、みたいな圧力を受けてしまっているのである。それにラモーヌの事を踏まえるとティアラ路線の方がいいのではないか、と思ったりもしている。

 

「どっちかというと、ティアラかな。ラストの菊花賞の3000はキツい気がするしな」

「その辺りは今から見据えて距離適性向上のスケジュールを組む事は出来ますよ」

 

南坂は心配しなくてもその気があるならサポートするから安心してくれ、と言いたいのだろう。何せまだ2年後の話だ、今からならば十二分に準備を行う事は出来る。何方にしろトレーナーとしてはウマ娘の意志を遵守する、と言って来る。

 

「ありがとよ南ちゃん、だけど折角時間があるんだからもうちょい考えるわ」

「それもありですね」

「ターボは如何しようかな~、ターボならどっちがいい?」

「何言ってんの、イクノとランですら2年後なのにアタシらは3年後になるんだから気が早すぎるっての」

「しかし今から気持ちを向けていくのは悪くありません。未来を見据えるのはとてもいい事です」

 

そんなやり取りをしながらもカノープスは何処かほのぼのとしつつも内容のある会話をし続けていく、そんな中で空を見上げながらも如何するかを考えるランページ。自分は如何するべきなのか、それを思考しながらも思わず、懐にあるシガーに手を伸ばすのであった。

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