貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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141話

なんだかんだあったけど、訪れてしまった今日この日、そうトレセン学園秋のファン感謝祭、聖蹄祭当日。来て欲しくはなかったが来てしまった当日に、溜息を漏らしたくなるのは悪くないはずだ。

 

「喫茶カノープスへようこそ」

「いらっしゃいませ~!!」

「ごゆるりと、お過ごしください」

「いらっさ~い!!」

「い、いらっしゃいませぇ」

「よくぞおいで下さいましたぁ!!」

 

そんな学園祭の一角、喫茶カノープスは既に大勢のお客さんがやって来た。ここ数年の活躍が特に目覚ましいチームというのもあるが、普通は見られない出し物―――シャッフル勝負服喫茶店という唯一無二の個性を纏っての出店なの多くのお客さんがやって来ていた。

 

「お待たせしました~此方お勧めのケーキセットで~す」

「此方、紅茶のセットとなります」

「ハンバーガーセットって来たよ~!!」

「え、えっとえと……どうぞ」

「お待たせしました~!!」

「どうぞ~」

 

勝負服シャッフルというのもカノープスのメンバー内という訳ではなく、他のチームの物だったり過去に走ったウマ娘の物も混ざっている。ネイチャは興味があったのかテイオーの勝負服、イクノはバンブーメモリー、タンホイザはイクノ、ライスはタマ、チケットはハヤヒデの物を着てみているがオリジナルの物を着ているのが居た。

 

「あれ、ターボさんのそれって一体誰の奴なんだ?」

「配色的になんか、メジロっぽいけど……」

「フフン!!これはねランがURAから貰った勝負服の一つを借りたの!!」

「へっ~こんな感じなんだ!!」

「ランページっていっつもあの勝負服しか着ないもんな!!」

「新鮮~!!」

「ターボさんこっち向いて~!!」

「イエ~イ!!」

 

白を基調としつつもエメラルドグリーンが掛かったドレス、お腹の辺りには大きなリボンにターボの勝負服にもあるぬいぐるみが掲げられており自分らしさを出してみている。最初にURAに貰った勝負服をメジロ家のデザイナーが改修した物で、メジロ家主催のイベントで着なければいけない場合の服装として大切にしまわれている。そのコスプレ、という事になる。

 

「そう言えばランページさんは?」

「今日生配信やるって言ってたし、そっちに回ってんじゃね?」

「いるよ?」

 

そう言うとターボが奥を指を指すとそこから漸くランページが登場した、生憎配信準備もあるので限定での参加だが確りと衣装シャッフルを行っている。彼女が纏っているのはカツラギエースの勝負服、G1以外のレースで着用する体操服以外では初と言ってもいい短パンでの登場に喫茶店中が沸き上がった。

 

「お待たせしましたお客人、当店への来店誠にありがとうございます。生憎、私も事情がある故に短いお付き合いにはなりますが、皆様の記憶に残れるように誠心誠意努めさせて頂きます」

 

 

 

「あ~疲れた~」

「少し休んだら?」

「いや、配信の準備しなきゃならねぇんだ。じゃあな!!」

 

数時間のシフトを終えて、ランは喫茶カノープスを飛び出すと直ぐに屋外の特設ステージへと急いだ。自分も参加した事で喫茶カノープスは大繁盛、特にウマ娘向けの勝負服をレンタルしての写真撮影には多くの人が訪れてくれた。一番多かったのは自分の勝負服で

 

『待たせたな!!』

 

そんな掛け声とともに撮影をお願いする人たちだった。そんなに自分の代名詞的な事になっていただろうか……と思いつつも到着したステージなのだが……想像以上の人がステージ前の席にいた。G1のウイニングライブにも負けない位の大盛況っぷりにもう言葉が出なくなってくる。

 

「あ~……本当に此処でやるんだぁ……帰りてぇ」

 

配信をステージでやるなんて事は、今年の春にもやった事なのでいい。だが問題なのはその内容だ、今回ばっかりは本当に気乗りしない……このまま大逃げかましてやろうかな……と思ったのだが、ステージの陰からシンザンが良い表情をしながら手招きをする姿を捉えてしまった、向こうも此方をしっかりとらえているのでもう逃げられない……覚悟を決めなければ。自分の勝負服のコートを羽織り直してステージ裏へと向かう。

 

「応来たねラン、今日はいっちょビシッと宜しく頼むよ」

「うい~っす……気乗りしねぇ……」

「なんでさ」

「そりゃ当たり前でしょ」

 

完全にテンションガン萎え状態の自分に賛同してくれる声がやって来た、顔を上げると思わずたらりと顔を汗が走った。其処だけ空気が違う、空間が違っている。

 

「こんな大舞台で先輩呼んで配信やります、とか普通に考えて緊張するのは当然ですよ」

「同感だな。私だったら絶対に断るな」

「激しく同意です」

「そういう割には三人とも乗り気だったよな」

「「「そりゃゲスト枠ですし」」」

 

そうか、この人達がそうなのか……紹介されるまでも無い、この人達がそうなんだと分かる。その内の一人が自然と此方に手を伸ばして握手を求めて来たのでそれに応える。

 

「初めまして、君に会う事を楽しみにしていたんだよ。今日はこんな事になってしまって済まないね」

「こうするまではそうでしたが、こうしてお会いできてそんな気持ちが吹っ飛びました。お会い出来て光栄です―――流星の貴公子テンポイントさん」

「そう呼ばれるのも久方ぶりだな」

「天トウショウボーイさん、緑の刺客グリーングラスさん。名高きTTGの御三方にお会い出来て光栄の極みです」

「こうやって三人揃うのも懐かしいな」

「そうですね、そういう機会を作って下さったシンザン先輩にも感謝しませんと」

「応感謝しろ感謝しろ」

 

平成三強と言われたオグリキャップ、スーパークリーク、イナリワンのように、三強と言われる世代は幾つもある。その中でも別格の伝説とさせる三強の世代が存在する。それが通称TTG世代。この世代の最強と言われる所以はその強さ。3頭で8大競走を7勝、現在のGI級重賞レースを9勝。全員が年度代表馬に選ばれ、そして何より凄いのはこの3頭が揃ったレースでは1着から3着までを独占するという途轍もない事を行っているからである。

 

流星の貴公子、テンポイント

天馬、トウショウボーイ

緑の刺客、グリーングラス

 

この三頭の頭文字から取ったのがTTG、それこそが最強の世代として伝説となった名前。そんな伝説の三強がウマ娘として目の前にいる……同じウマ娘として興奮しない訳が無いのだ。

 

「そう畏まる事も無いだろうに、実績で言えば無敗の十冠の君の方が上だ」

「無茶言わないでください。偉大な先人に敬意を払う、これは当然の事です」

「おっいい心掛けだな。後で私が勝った有の事を話してやるよ」

「ンな事言ったら、ラン以外の全員有勝ってんぞ」

「そりゃ言いっこなしだよシンザン先輩~」

 

確かに、此処にいるほぼ全員が有記念で勝ち星を挙げている。その話は是非とも聞きたいのだが……なんというか、此処まで来ると緊張やらが一周して何も感じなくなっている自分が居て少し怖くなってきた。そんな自分を察したのがグリーングラスが肩を優しく叩きながら微笑む。

 

「安心してください、ショウもテンも私も貴方の配信はいつも楽しく見てますから。気を楽にして自然体で配信をしてくださいね」

「レジェンドが複数人いる状態を抱えて普通に配信?いやぁキツいでしょ」

「ですよね」

 

困ったように笑うグラス、ランページも何処かの騎手のような発言をするが大分心に余裕が出来てきている。出来たというかも悟りを開いてというべきなのか……兎も角、冷静さを持ち直したランページは何かを探しているかのように見回しているシンザンを見た。

 

「どったのシンさん」

「いやもう一人呼んだんだが……流石に来ないか、あいつは臆病だからなぁ……」

「誰呼んだんすか」

「カブラヤオー」

「いや、あの人って確か凄い臆病って聞きましたからキツいなんてもんじゃないでしょ」

 

まさかカブラヤオーまで呼んでいたとは……此処に居ない事に喜んでいいのか分からなくなってきた。

 

「待たせたなランページ、そして―――皆さん、お初にお目にかかります」

「ああ、話は聞いているよ。今の生徒会を務めていると、懐かしい物だ……」

 

やって来たルドルフ、ラモーヌ、シービーへと絡み始めていくTTG。シービーは厳密に言えば違うのだが……矢張り三冠となると気になるらしくトウショウボーイが絡んでいく。というか史実では親子なのでは……と思ったら彼女はシービーと肩を組んだ。

 

「クインは元気か?」

「ええ、元気も元気。偶には会いに来てよ、喜ぶと思うから」

「行きたいのは山々なんだけどこっちもこっちで忙しいんだよなぁ……」

 

何やら楽しそうに談笑を始める二人。如何やらこの世界ではトウショウボーイはシービークインの親友という立ち位置らしい。そういう事もあるのか……まあこれ以上突っ込むと深淵に足を踏み入れる事になる、追及はやめよう。

 

「あらっ~凄いメンバーが揃ってるわね~」

「来て正解、だったかもしれませんね」

 

突然、ステージ裏に威厳のある声が響いた。錆び付いたような動きでそちらを見ると同じようにルドルフも其方を見た、そこに居たのは……スーちゃんこと、スピードシンボリ、お婆様こと、メジロアサマの二人が居た。

 

「おっお婆様!!?ど、どうして此方に……!?」

「もしかしてランページちゃんに誘われて……」

 

とルドルフとラモーヌからお前なんて事を……といわんばかりの視線を向けられるが、ランページは全力で顔の前で手を振って無実を訴える。本当に呼んでいないのだ、そんな誤解を解くようにアサマが応える。

 

「私達は完全なオフなのよ。偶然(・・)、時間が取れたから二人で学園祭を楽しもうと思ったの」

「そう、本当にラッキーよね。アーちゃんと揃ってお休みが取れるなんて、本当に偶然(・・)よね」

「ええ。素晴らしい偶然(・・)ね」

「「「(確信犯だ……)」」」

 

とんでもない事になってしまった。シンザンとTTGだけでもとんでもないのにアサマとスピードまで揃ってしまった、これ本当にURAが卒倒するんじゃないかと本気で心配になって来た。そんな中でトウショウボーイが呆れたような声を上げた。

 

「何の集まりだぁこれ……私達はまだしも、メジロとシンボリの大御所に三冠が3人……自分で言うのもなんだがレジェンド揃い踏みすぎない?こんな面子が集まって何をするかと思ったらトレセン学園でやる生配信に出る為なんだから笑っちゃうよ」

「これも偏にランの人徳かもな」

「こんな人徳要らねぇ……!!」

 

絞り出すかのような悲痛な声に思わず全員が同意した。確かに普通に考えればURAの特別企画であっても揃う事はない面子、それを引き合わせたのはたった一人のウマ娘。しかも当人が積極的に声を掛けたわけではないのだから余計に凄い事になっている。

 

「ランちゃんそろそろ開始の時間じゃない?さあ頑張って盛り上げて来てね」

「スーちゃんってば軽く言うんだからもう……これだから後輩って損な役回りだよなぁ……」

 

とぼとぼとステージへと向かっていく背中は哀愁に塗れている、だがあと一歩で表へと出る瞬間に彼女の背中にあった哀愁は消滅して活力に満ち溢れたウマ娘へと変貌した。ステージ前の観客席は大観衆で埋め尽くされ、後方まで続く人の波が自分の登場に歓喜の声を上げた。笑顔でそれに応える。

 

「皆~おはこんハロチャオ~♪」

『おはこんハロチャオ~♪』

「もう一回!!おはこんハロチャオ!!」

『おはこんハロチャオ!!』

「アンコール!!」

『おはこんハロチャオ~!!!』

「よ~し皆いい声だ~!!貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、無敗のティアラ、速すぎる時の 瞬きに魅せられて、独りでは輝けない~なランページだぜい!!皆の者~善行積んでたか~?本日はトレセン学園の学園祭、聖蹄祭!!その特設ステージで生配信をお送りしちゃうぞ~!!」

 

歓喜の声が上がる、背後のモニターには配信中のコメントが流れており大いに盛り上がっている。だが今日はこんな物じゃないんだ、冗談抜きで今日はやばいんだ。

 

「配信に良く来てくれてる皆の者なら分かってると思うけど、俺様の配信ってレジェンドがすげぇ来るんだよね。いやはやどうしてこんなにも賑わっちゃうのかな~これも俺の人徳って奴なのかな?まあ今回ばっかりは流石の俺でもこの人徳を恨むぜぇ!!最初に言っておく、今回のゲストはか~な~りやばいですね♪いや冗談抜きでやべぇんだって、これまで会長とか来たけどマジでやばいよ?んじゃ最初に一緒に進行してくれる人を御紹介だ~!!姉さんカモ~ン!!」

「はぁ~い♪皆フラッシュ焚いてる~?皆のお姉さん、マルゼンスキーよ~ん♪」

「今日は此方のお姉様と一緒に進行していくぜ、言っとくけど姉さんはゲスト枠じゃねえからな」

 

マルゼンスキーがゲストではない、と分かるとコメントは大いに荒れる。これでゲストじゃない!?と、じゃあ一体……とざわつく中、待ちきれずにゲストが出て来てしまった。

 

「なあラン、まだ待ってないとダメかい?」

「いや呼んでから来なさいよ!?」

「あらら~……まあもうしょうがないかもね、それじゃあゲストカモ~ン!!」

「あああああ~一応考えてた予定がぁぁぁぁ!!もうこの際言っておく、多分この配信は伝説になる」

 

なった。




史実のネイチャの父はナイスダンサー。このナイスダンサーはテイオーの母父に当たるのでその関係からテイオーの勝負服……えっ如何でもいい?

大丈夫、このカオスは配信は次回に続くから。
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