貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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144話

「フゥッ……やれやれ、流石に疲れちまったなぁ……」

 

一世一代の大舞台と言っても過言ではない生配信を合計3時間やり切ったランページはベンチに腰掛けながらも空を仰いでいた。レジェンド級のゲストばかりの生配信は色んな意味で大盛況に終わった、幾つかのサーバーが落ちたとかコメントがあった気がするが、きっと自分は悪くない。強いて言えば俺は悪くねぇ。

 

「イエ~イ!!」

「皆~ダートも来てくれるかな~!!?」

『良いとも~!!』

「それじゃあ私達のライブもやってこ~!!」

 

如何やら遊びに来てくれていたらしいレディセイバーやアメイジングダイナと言ったダート戦線を走っているウマ娘が今ステージに立っている。生配信後の特設ステージの使い道は無かったのだが、急遽希望者によるライブをするというのは如何だろうかと提案してみたら許可が下りた。普段なかなか立てないセンターを味わったり、ライブに参加出来ないウマ娘にとってこれ以上の喜びはない。加えてお客さんにも好評なので提案して良かったと心から思っている。

 

「にしてもとんでもない事やったなぁ……マジで疲れた」

 

TTGは久しぶりのトレセン学園を楽しむと散策へ、スーちゃんは折角だから孫と一緒に♪とルドルフに案内を頼み、それに続くようにアサマはライアンとラモーヌと共に、マルゼンスキーはそれらをニコニコしつつも今も特設ステージで進行役を買って出てくれている。そして自分は流石に疲れたので休憩している。

 

「さて、これから俺は如何するかなぁ……」

「ラ、ランページ……さんっ!!」

「んんっ?」

 

顔を上げてみるとそこには以前よりも成長しているエアグルーヴの姿があった、以前のサイン会からもう少しで1年近くになってしまうのか……そう思うと時間の流れとは凄い物だと感じずにはいられない。

 

「よぉっエアグルーヴちゃん、聖蹄祭を楽しみに来たのかい?」

「わ、私の名前を、憶えてくれていたんですね!!」

「これでも記憶力には自信がある方でね、ご家族と一緒に来たのかい?」

「はいっ!!お母様と一緒に、今お手洗いに行ってまして」

「そうかそうか、なら戻ってくるまではお姉さんと一緒にいるかい?」

「是非!」

 

キラキラとした瞳を作りながら隣に座る、本当に純粋な瞳で少々気恥ずかしくなってくる。

 

「さ、先程は凄かったです!!あんなに凄い方々とご一緒しているのに全く緊張してませんでしたね!!」

「なんというか、あそこまで凄い人達が周りにいるともう一周回って緊張とかしなくなるんだよね。半分やけくそさ」

「それと―――海外遠征のお話、感動しました!!」

 

母に憧れているのもあるだろうが、歳の割に矢張り大人びている印象がする。口調も子供らしくないというか……マヤやマベちんと違って同年代と話しているような気分だ。流石未来の女帝だ。

 

「私も、貴方のようになりたいです!!」

「嬉しい事を言ってくれるお嬢さんだ、尚の事、海外遠征は確りとやらない訳には行かなくなったな」

「あ、あのお聞きしたい事がずっとあったのですが……」

「何でも聞きな」

「如何して、如何してランページさんはそこまでお強いのですか?」

 

純粋さ故に飛び出た言葉だった、無敗の十冠である自分に憧れているから出た質問とも言える。その強さの秘密を知りたい、そして自分もそれに倣う事が出来るならば倣って前に進みたいというのが分かる。

 

「さてな……俺はそもそも自分が王者だって思ってないんだよな、独裁者やら暴君やら呼ばれるからそれに乗っかる事はあるけど本気で自分が王者だの覇者だのって思ってないのさ―――俺は常に挑戦者だ」

「挑戦者……無敗の十冠なのに、ですか?」

「結果的に無敗なだけで俺は別に強くなんてないさ」

 

強くないなんて嘘だ、そう言いたいがそう言うには相応しくない程にランページの瞳は慈愛に満ち溢れていた。世間が喧伝するような現役最強覇者とは思えない。

 

「芝にしたってダートにしたってそれは変わらない。俺は挑戦を受けているだけじゃないんだ、逆に俺からも挑戦状を叩きつけているのさ。それに応えるだけ。それはこれからも変わらない、俺は俺を貫き通そうと思ってる」

 

決して慢心せず、前を向き続けて歩みを止めない、王者としてではなく挑戦者として歩み続けるその姿はエアグルーヴにどう映っただろうか。それはその瞳に浮かべられた輝きを見れば一目瞭然。

 

「私も何れ、貴方の様なウマ娘になります!!」

「それじゃあだめだな」

「えっ」

 

思っても見なかった言葉に詰まってしまう、自分は貴方のようにはなれないのかと思った直後に優しく頭を撫でられた。

 

「俺のようにじゃない、君は君だ。君らしく、俺を越えてくれ。実績じゃない、自信を持ってこれが最高の私って言えるように、な」

「―――はい!!」

 

きっと、この言葉の意味は届いている事だろう。もう一度頭を撫でてやるとコートを翻しながらも歩き出した、遠くからエアグルーヴの名前を呼ぶ声が聞こえたから。ご家族と聖蹄祭を楽しんでほしいという思いを抱きながらも自分も好い加減に回るか……歩き出す。

 

「柄でもねぇ事言ったかな……まあ本音ではあるんだけどな」

 

本当のことを言ってしまえば自分に王座へと座する資格はないと思っている、それをするよりも賑やかな事を一緒にやって楽しんでバカをやっている方が性に合っている。自分に続いて一緒に騒いでくれる物が居ればそれでよし、いなくともそれでよし。一時の閃光に過ぎないとして構わない、似たような輝きを目にした時に自分の事を思い返してくれれば。

 

「んっあれって……」

 

そんな風な思いを抱きながらも回っていると見知った顔があった。そこにはシンザンが居て、誰かの肩に絡むように肩を組んでいる。一見すれば酔っ払いのようだが……絡まれているのは半泣きになりながらもなんだか安心しているような表情を浮かべているような……。

 

「な~にやってんすかシンさん」

「応ランか。知り合いが変質者に捕まってたから助けてやったまでの事さ」

「いやだから完全な誤解なんだってば!!触ってもいなければ俺はマジで何もしてねぇ!強いて言えば道案内をしてた位!!」

「またお前か沖トレ」

 

如何やらシンザンは妖怪トモサワリから知り合いを助けていたらしい、まあ実際は沖野は足を触っていないので完全な冤罪なのが……以前にシンザンは勝手に足を触られているので割かし冤罪とも言い切れないのもあるが……。

 

「か、勝手に脚を触られるんですか……!?」

「いやもう流石にやってねぇから!!」

「もうって事は本当に……!?」

「ああいやその……い、今は良いじゃねえか!!」

「よくはねえよ……んで、シンさんそっちの人は?」

「ああそうだったな、実は聖蹄祭が終わってから併走を頼もうと思ってんだ」

 

そう言いながらも自分に抱き着いていたウマ娘を指差しながら勝手に紹介を始める、見た感じからすると随分と臆病な感じがするウマ娘だが……

 

「ほら、名前ぐらいは自分でいいな」

「はっはい……え、えっとカブラヤオーって言います。一応、ダービーウマ娘です……」

「またレジェンドだぁ……」

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