貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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147話

「ねぇねぇラン、最近凄い坂路走ってるらしいじゃん。やっぱり効くの?」

「聞く前に自分で試してみたらどうだ」

「トレーナーが組んでくれたらやろうとは思うんだけどねぇ~」

 

食事をしているとよく他のウマ娘達が一緒に食べようとやって来る、今日も誰かと共に食べているのだが今回はテイオーだった。自分と戦いたいと挑戦状を送り付けられている立場だが、常日頃からバチバチにやり合う必要も無いので平時はのんびりとしている。

 

「この前カノープスの練習チラッと見たんだけどなんか初めて見るウマ娘がいたよ?」

「南ちゃんが呼んだ人だ。引退してる人だけど多角的な視点が欲しいから呼んだんだと」

「へぇ~スピカだとそういうの全然やらないんだよなぁ……」

 

テイオーはそこまでそのウマ娘に付いて興味を示してはいないようだった、それに付いては此方の思惑通りだと言える。そのウマ娘の正体はカブラヤオー、当人の希望でその事にはあまり言及せず、出来るだけ目立たないようにしたいと言われているので彼女が来ているという事も伏せているし彼女自身も変装してトレセン学園に来ている。聖蹄祭の時も変装を行っていたからこそ騒がれなかったと言える。

 

彼女からしたら、変装とかもしないでいるのは考えられないらしい。そう考えると自分が女物の服を着て出掛けるのは良い変装と言えるのかもしれない。

 

「マスクして坂路登ってるのもその"多角的な視点"から来る意見なの?」

「まあな。簡単に言えば心肺機能を鍛える為だ」

「なるほど~高地でトレーニングみたいな感じなんだね」

「そゆこと」

 

矢張り話が早い、悪く言うつもりはないがターボよりもずっと理解度が高い。

 

「レースの展開次第じゃ2400でもキツいかもしれないからな。それに2500の有だって控えてんだ、海外に行くつもりの俺としてはスタミナを鍛えておく事に越した事はないんだよ」

「成程ね~……えへへっ」

 

それを聞いたテイオーは突然笑いだした、何かを抑えつける事が出来ずに込み上げてきたような笑みにランページは怪訝な瞳を作る。

 

「何よ突然笑っちゃって」

「いや、さっ……なんか嬉しくなっちゃって。ボクもそれに出るつもりだし、改めて一緒に走れるんだなぁって思うと嬉しくて」

「自分が戦う相手がますます強くなるのに嬉しいとはこれ如何に」

「僕はカイチョーみたいなウマ娘になるんだよ、その為にはどんどん強い相手と走って経験を付けなきゃね!!それに、強いって分かったら練習にももっと身が入るじゃん!」

「主人公気質だねぇ……」

 

こういう所は素直に尊敬する、自分だったら此処まで気合が入るなんて事は絶対にない。寧ろ対策として苦手な分野を突いたりするための作戦を考えたりすると思う。

 

「それにしても海外かぁ……聖蹄祭のステージで吃驚しちゃったよ」

「そんなに驚く事でもないだろ、ルドルフだって海外遠征は予定に入ってたんだ」

「知らない訳じゃないけどさ~やっぱり日本と全然違う訳だし、環境とか色んな物も違うんでしょ」

 

テイオーの言いたい事も分からない訳じゃない、それまで中央ばかりだった者が地方のレース場を走るのとはわけが違う。国が違う、文化が違う、環境が違う。あらゆる物が異なり牙を剥いてくる、そんな状況でターフを駆ける訳なのだから想像が出来なくても致し方ない。

 

「実はステージの時に飛び入りで改めてランに挑戦する!!って言おうと思ってたんだよね」

「すげぇ事考えてたな」

「でも当日になって思いとどまったよね……何なのあのステージのゲスト陣」

「それは俺もそう思う、そしてよくぞ踏みとどまった」

「じゃないよ!!意気揚々とステージ行ったらカイチョーどころか、カイチョーのお婆ちゃんまでいるしもう訳分かんなかったよ~!!?」

 

その気持ちはよく分かる。何せ、訳が分からなかったのは自分も同じだしあの二人は偶然と言っていたが完全に来れるような予定を組んでいたのだから……本当に人が悪い。

 

「しかもあの後、カイチョーとお婆ちゃんに連れられて一緒に聖蹄祭巡る事になったんだよ!?なんかカイチョーに声掛けられたと思ったらお婆ちゃんにスーちゃんって呼んでね♪って凄いニコやかに言われてずっとお人形みたいに抱き締められてたしカイチョーは全然助けてくれない所か、なんかいい顔でグッ!!って指立ててくるし……聖蹄祭全然楽しめなかったよぉ……」

「スーちゃんェ……」

 

これもルドルフ&シリウスが遠慮していた反動だろうか……彼女からしたら自分の孫を慕う小さなテイオーはとても可愛らしく映ってしょうがなかったのだろう、自分も自分でアサマと同じく祖母のように慕ってはいるが、大きな孫と小さな孫では感覚も違いが出るの当然だ。そしてルドルフ、自分の役目をテイオーに押し付けるな。

 

「なんか、これからはスーちゃんって気軽に呼んでね♪ってなんかお小遣いまで貰っちゃったしカイチョーにはこれからも宜しく頼むよって言われちゃって……ボクもうどうしたらいいの?」

「諦めたら?」

「そこは試合終了まで言う所じゃないの!?」

「だってスーちゃんだし……ノリノリで自分から俺の配信に出たいっていう程度には茶目っ気溢れるお婆様だぞ、多分これからもお前の事を孫みたいに可愛がりに来ると思うぞ。実際俺だってそういう扱いだし」

「ぁぅ……」

 

恐らく、関わり合いが強い自分に何とかして貰いたいという事もあったのだろう……まあ無理である。確かに仲はいいがそれはあくまで友人としてであってそこまで踏み込んだ事は言えない。テイオーも恥ずかしいだろうからある程度加減してやって欲しい程度は言えるだろうが……果たしてそれを受け入れてくれるかどうかは別問題である。

 

「つうか、会長は会長で何やってんだよ。自分の婆ちゃんなんだからそこは自分が何とかしろや……」

「なんか恥ずかしくなっちゃって素直に甘えられないんだって」

「だからそれを他人に押し付けるか普通」

 

史実的に考えたらテイオーはスピードシンボリのひ孫に当たるので孫として扱うのは間違ってはいない……間違ってはいないが……スピードシンボリはきっとルドルフ自身に甘えられる事も望んでいる筈なので、今度やんわりとでも伝えておこう。

 

「まあ言いたい事は分かった、俺から会長やスーちゃんに言っといてやるから」

「お願い~……ボクも嫌いって訳じゃないけど流石に畏れ多いというかなんというか……何でランが普通にスーちゃん呼び出来るのかも理解出来ない」

「それは俺が一番思う、多分麻痺してるんだと思う」

 

最悪の場合、ダブルお婆様に付き人指名制度を活用して貰って強制的に配信に出て貰う事も検討しよう。以前よりかは改善傾向にあるが、いざという時は劇薬に頼るとしよう。尚、シリウスも巻き込まれる可能性もあるがその時はルドルフに責任をぶん投げるつもりでいる。

 

「クシュン!!!」

「あら、風邪?」

「いや急に鼻が……一応風邪薬を飲んでおくとしよう」

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