貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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148話

「盾っすかこれ」

「ウムッ送り先がトレセン学園になっていた故に私が預かっていた」

 

理事長に呼び出されて向かってみると自分宛ての荷物があるというので受け取る事になった。そこにあったのはレッドダイヤモンドの盾、どうやらこの前の生配信の影響か、登録者数が遂に1億の大台を超えたらしい。

 

「う~む……配信者として喜ぶべきなのだろうか、それともウマ娘としてはトロフィーとしての盾を取るべきだと思うべきなのだろうか……」

「快挙!!チャンネル設立から1年経たずしてこれだけの事をしたのだから誇るがいい!!」

「そしてそのまま学園の宣伝をしろと、学園長も悪よの~」

「いえいえランページ殿こそ~」

 

キシシシシッと悪代官ですら言いそうにない笑い声をお互いに浮かべている二人にたづなは楽しそうでいいですねぇと微笑みかけるのだが、頭の上のハテナからすればまた理事長が悪くていけない事を考えていると思ったのか、鉄拳制裁を実行した。

 

「ミ゜何をするのだハテナぁ……」

「いや今のは良いんだよハテナ、にしても如何やってそんな声出してんすか」

「皆目……咄嗟に出るから分からず、出そうと思っても出せないのだ……」

 

自分の頭に移って来たハテナは難しいもんだなぁと言わんばかりに納得が行かなそうな声を上げた。本当に頭の良い猫だ。たづなさんも頼りにするわけだと思わず納得してしまう。

 

「んじゃこの盾は……と言いたい所ですけど、呼んだ理由はこれだけじゃないでしょ」

「驚嘆、分かるのか?」

「トレセン学園に届けられたなら、そのまま俺に直接回せばいいじゃないですか。これより前の盾だってそういう方式だってのに……なんか本題を話すための口実作りに利用したとしか考えられませんぜ」

「流石ランページさんですね、お話が早くて助かります」

 

矢張り何かあったのか。まあそうでなければ態々理事長室にまで呼ばないだろう……自分は割と頻繁に遊びに来ているが。

 

「確認、君の次走についての話をしたいのだ」

「次走って……俺のスケジュールなら俺なんかより南ちゃんに聞いたいいじゃねえですか」

「そうしたいのは山々なんですが……南坂トレーナーもかなりお忙しいそうでして、学園としてもサブトレーナーを探す事をご提案させて頂いているのですが必要になったら自分で探すの一点張りでして……」

「なぁ~んか悪い事考えてやがんな……」

「一応スケジュール表は手元にありますが、一応念の為にご本人から確認をしたいんです」

 

本当に彼のコネクションというか情報網というか、その辺りは謎に包まれている。トレーナー契約を結んでそれなりになる自分ですら彼の本当の所は分からない。元貿易会社勤務という事は聞いたが……割かし本当にライダー的な立場に居たという事があるのではないだろうか。

 

「まあ次は天秋っすよ、メジロのウマ娘としてそれを無視する訳には行かないし距離的にも俺のベストが出せますし」

「確認。出走は確実なのだな?」

「妙に念押ししますね……病欠とかしない限り確実っすよ」

「―――了承、そして安堵……」

「はい、本当に良かったです……」

 

天皇賞(秋)に出走するという確約と確信が得られると二人は妙な程に安心の溜息を漏らした。

 

「何でそんなに安心してるんです?なんというか、理事長とたづなさんらしくねぇっていうか……」

「謝罪、情けない所を見せてしまった……実は再三、メジロランページの出走予定を確認するようにとURAから言われているのだ」

「まぁたURAかよ……でもなんで俺の予定を確認するんすか、なんか盛大にイベントでも組む気ですか?」

 

無敗の十冠が云々みたいなイベントをやればURA的にも利益はとんでもない事になるだろうし無いとは言えない、まあやる必要があるのかと言われたらそこまでだが……二人の反応からしたら如何やら違うらしい。

 

「今回ばかりは、URAも君に無視されては困るのだ……いや私も困るしメジロ家も困ってしまうのだ……」

「メジロ家にも……何があるんですか」

「その、とても言い難いのですが……とある方がランページさんのレースをこの目で見たいとの事でして……」

「レ、レースをですか?」

 

頷く二人。URAは日本でも有数の組織でその権力階級も相当に高い、その為だけにURAが理事長を通じて自分に予定を聞いて来た?一体どんな権力者だ、そんなの国際的な機関位しか思い当たらない、URAの国際版、国際ウマ娘統括機関連盟(International Federation of Uma-musume Authorities)とかだろうか。

 

「一体誰なんですか、そんな事が出来るなんてマジの特権階級とか……まさか総理大臣とかどっかの大統領とか……」

 

脳裏を過った可能性、それこそ日本の権力階級の天辺や他国の重鎮などだった。それならば納得が行く、マキバオーだとドバイの殿下が日本に来て有馬記念を見たなんて事もあったからないとは言い切れないのだが……その言葉に二人は首を振った。流石にそんな事はなかったか、と安堵したのもつかの間だった。

 

「天皇皇后両陛下が……天皇賞に、お越しに、なられる、のだ……」

「―――もう一度言って下さい(Per favore dillo di nuovo)?」

「あの態々イタリア語で聞くという事は御理解出来てますよね?」

もう一度言ってください(Können Sie das bitte noch einmal sagen)?」

「今度はドイツ語……」

「いやいやいやいやいや、あの理事長何言ってるか分かります?流石に立て続けにレジェンドが続いてて感覚麻痺している俺でもとんでもないって事は分かるんですよ?」

 

流石に冗談だろう?と問いかけたい、問いかけたいのだが……この二人の様子からして嘘ではない事が窺い知れる。

 

「おいおい……総理大臣どころか天皇陛下が来るとか予想出来る訳ねぇだろう……」

「天覧試合という事になりますね、一体何年ぶりの事になりますか……」

「以前の記録を確認してみたが、それこそ数十年では聞かぬほどだ。そもそも陛下が天皇賞を観覧なさる事自体初めての事だ」

「天皇賞って名前なのに初めてなんですね」

「まあそれは言わないでおこう」

 

自分でも知っている天皇がレースを見に来たというのは史実ではエイシンフラッシュの天皇賞(秋)だった筈、そこで鞍上のミルコ・デムーロ騎手が下馬し最敬礼した事は余りにも有名な話で石碑にもなっている。本来は騎乗馬が故障した場合を除いてやってはいけない事なのだが、陛下の御前という事でこの事に関しての制裁はなかったとの事、まあそれでも滅茶苦茶怒られたらしいが。

 

「なんでもランページさんが海外に行く前に一度でいいからレースをご覧になりたいとの事でして……それで予定を合わせられるのが天皇賞しかなかったんです」

「それで俺の予定を入念に確認したって訳か……いやそりゃするわ、うん……にしても……えらい事になったなぁ……」

 

まさかこんな事になるなんて思いもしなかった……メジロのウマ娘になったからには大御所との接触はあるだろうしそれは覚悟していた。だがそれは言うならば大企業の会長やスーちゃんのような名家だとばかり思っていた……まさか天皇なんて想像が出来る訳もない。

 

「兎も角、体調管理は入念に行ってくださいね?当日出走取消は勘弁してほしいので……」

「南ちゃん……これ聞いて倒れねぇかなぁ……」

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