貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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151話

『賑やかな秋を彩る秋華達、秋華賞の舞台で美しく華を咲かせるのは一体誰なのか!?秋華の冠を被るの一体誰なのか!?』

『2枠3番、コネクトトウショウ3番人気です。最後のティアラをその手に出来るのか』

『2番人気は1枠1番グランルーブル。オークスでは惜しくも2着、今日こそは雪辱を果たせるのか!?』

『スタンド、いやレース場に押し掛けたファンの期待を受け止めながらいざ世代の頂点へと歩み、いや走り出して行くのはやはりこのウマ娘なのか!!このレースで、頂点へと昇りつめたウマ娘に続けるのか!?いざ往かん、3枠7番ツインターボ!!』

 

今日この日、ターボは待ち侘びていた。今日此処で、自分は本当の意味でテイオーのライバルを名乗っていいのかが分かる。自分は追いかけるライバルなのか、それとも隣に並ぶライバルなのか、その何方なのかが分かる。正直な話をすればどちらでも良いとターボは思っている、何故ならばどんな結果になるにしろ、自分はテイオーのライバルである事に変わりない。

 

『各ウマ娘ゲートイン完了、出走の準備が整いました』

 

自分の注目が集まっている、全てのウマ娘が自分をマークしている。怖い、怖く怖くてたまらない……今すぐにでも此処から逃げ出したい程に怖いのに……何故だろう、いつもの走っている時以上に身体に力が漲って充実しているのが分かる自分がいる。ふと、何も持っていない筈の右手がレバーらしき物を握っている感覚がある。……コレがターボの『スイッチ』なんだなと改めて理屈無しに解りレバーを押し込む様に身体全体を構える。

 

―――いいかターボ。秋華賞だとお前は確実にマークされる、ほぼ全員からな。凄いプレッシャーを感じるのは確実だ、怖くなってもいい、だけどなそれは周りの連中が全員お前を恐れてるって事なんだ。お前が怖くて怖くてしょうがないんだ、ビビらせろ、震わせろ、ブッちぎれ、お前はツインターボだ、何もかもを置き去りにしちまえ!!

 

「うん、ターボやるよ。最初から最後まで―――」

 

『今―――スタートです!!』

 

「ドッカンターボだぁぁぁぁ!!!」

 

『さあ皆綺麗な好スタートを、おっと一気に飛び出したのはツインターボか!?ツインターボだ、大逃げウマ娘がスタートからフルスロットルだ!!ツインターボが押して行く!!スタート直後だというのにとんでもない加速で抜け出して行く!!余りの事に他のウマ娘は僅かに呆然と取られましたが、その隙をつくかのようにグングン加速していきます!!』

 

スタートからの真・ドッカンターボ、この日ターボのコンディションとボルテージは最高潮、あらゆるものに左右されるターボのブーストゲージは最初からフルゲージでキラキラと輝き、脚を溜める必要なんてない程にトモに力が張り整っていた。それ故に開始からそのターボを解き放った。それはターボをマークしていた全てのウマ娘の虚を突いた。

 

「いきなり、あんな加速が出来るなんて嘘でしょ!!?」

「クソッまさかこんな序盤から!?このまま逃げ切るつもりなの!?」

「させて、たまるかぁ!!」

 

『さあツインターボが逃げる逃げる!!既に後方とは10バ身以上も突き放している、その背中をグランルーブル、コネクトトウショウ、ダブルシャフトが続いて行きます。だがこのペースにはついて行けない!!流石に脚を溜めるか、だがツインターボの兎に角逃げ、先代メジロランページに続けるのか、いや寧ろ追い抜かんとするこの走りであります!!さあ間もなく1000mを通過しますがタイムは―――57.5!!57秒5という超ハイペース!!』

 

正真正銘の全力逃げ、後先の事なんて考えずにこの瞬間に全てをぶつけようとしているターボの気迫が見ているだけで伝わって来る。淀の坂に入ってターボは脚を緩めない、一度でも緩めたら恐怖に憑りつかれる、だったらその恐怖ごとブッちぎってやると言わんばかりの走りを展開している。

 

『さあツインターボが、ツインターボだけが第4コーナーへと差し掛かる!!後方のウマ娘達も懸命に追いかける、グランルーブルもスパートを掛ける、8バ身差を縮められるのか、行けるのか!!?』

 

心臓の一拍一拍ごとに全身に力が漲る、此処で来てくれた、いや持っていける事が出来た。やっぱり最初に使えば終盤まで溜められるんじゃないか、という自分の考えは間違っていなかった。ランの言っていた自分にとって最高のタイミングとはこういう事も言うんだと納得出来た、そうだこれが本当の真・ドッカンターボ!! 『何か』を押すのではなく殴り押すかの様に腕を振り抜き脚を上げて再び解き放つ!!

 

「ダリャアアアアアアア!!!!」

 

『此処でツインターボが更に勝負を掛けるぅ!!!オークスを制した二段加速だ、グランルーブルに後塵すら拝させない!!独走状態、唸るエンジン音が聞こえるでしょうか!!これがツインターボの名を冠するウマ娘の走りだ!!唸れ、叫べ、吼えろツインターボ!!最初から最後までの全力全開の疾走で今、ツインターボが秋華賞を制しましたぁぁぁぁ!!!なんという事でしょうか、2年連続でトリプルティアラが誕生しましたぁ!!!』

 

先代、無敗の十冠の姿はそこにはなかった。過去の栄光と照らされる事も無く、そこにあったのは紛れもない今。彼女は自分は自分だという事を証明した。自分だけの走りで、自分だけの称号を確立させたのだ。

 

「やったよぉぉぉぉっ!!ターボが、ターボがトリプルティアラだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

前回のオークスでは倒れこんでしまった彼女、だが今は確りと大地に立っていた。大粒の汗を肩でする息のままで上げられた歓声に、それを皆も続いた。彼女こそが今年の女王だ、2年連続だなんて事は如何でもいい、唯々この瞬間の樹立に立ち会えた事に感謝を捧げ続ける。

 

「―――っ……!!」

 

2着に沈んだグランルーブルは悔しさを噛み締めながらも、喜んでいるターボを見つめていた。最初からの大逃げは予想していたが、ターボのそれは予想を大きく上回っていた。文字通りに全力全開、自分達は否が応でも後半の事を考えてしまったが、此処で逃したら絶対に追い付けないと思い追った。だがそれによってペースを作る所ではなくなってしまいスタミナなんてなかった。全員がターボと同じ走りを強制させられたと言ってもいい。

 

「っ……ツインターボ!!」

 

思わず、大声が出てしまった。それに肩を震わせながらも此方を見たターボ。自分でも分かる程に自分は顔に力が入っている、それに怯えているのだろうか、震えている。だがあの走りの後ゆえに逃げる力なんてない、だから近づけた。

 

「な、なに……ターボ、何かしちゃった……?」

「何か……した?」

 

何も分かっていない、こいつは何も分かっていない、私達に何をしたのかを―――!!!

 

「ああ、したよ―――ターボ、いやトリプルティアラ・ツインターボ、次は絶対に負けないから。秋華賞に勝つって事を目標にしてたけどこれからは違う、あんたに勝つ事を目標にする。あんたを抜いてレースで1着になってあたしの後ろで踊らせてやる、だから―――次も一緒に走ろっ!!」

「―――うん!!今度も一緒!!」

 

そう言いながらも固い握手をした。周囲のウマ娘は思わずホッと胸を撫で下ろした、自分が暴力を振るうとでも思われたのか……それはそれで心外だが、ならばそれを払拭する為に良い事をしよう。ターボの小さな身体を担ぎ上げる。

 

「ホラッ!!このまま走るよ、ウイニングライブならぬウイニングランってとこかな、あんたは全力で手振りな、落ちるんじゃないよ!!」

「おおっ!?凄い良い!!イエ~イ!!行け~ルーブル~!!」

「ったく調子いいんだから!!」

 

ルーブルの表情は何処までも晴れていた、トリプルティアラになるという夢は無くなったけど新しい夢も出来た。肩の上に居るツインターボに勝つ、そんな夢が出来た。だから私はこの小さな女王を称賛する、認めて前に進む。

 

「ねえターボ、あたしあんたのライバルになりたいんだけどいいかな」

「ライバル!?うん良いよ!!って事はルーブルもテイオーのライバルだね!!一緒~!!」

「あっそうなっちゃうわけ!?あ~あ、やっぱ遠慮しとこうかな~……」

「ええっそんな~!?」

「冗談だよ、ほらっ行くよ~!」

 

私はツインターボのライバル。ライバル、その言葉はまるでトロフィーのように輝いて、胸に炎を灯した。次は負けないから覚悟しなよ、ターボ!!




ターボ流幻惑逃げ:ターボの超ハイペースに相手を巻き込んでペースを乱すのではなく、ペースその物を自分のペースにしてしまう。
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