貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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158話

『歴史に残る天皇賞、さあ今―――スタートしました!!好スタートを切りました、出遅れはありません。先頭を行くのは矢張りメジロランページ、得意の大逃げを打ちます、それを追うのはライアンかマックイーンかおっとレディセイバー!!レディセイバーが一気に抜け出してメジロランページに競り合う!砂塵の騎士とも言われるダートのウマ娘がこの天皇賞の舞台に殴り込み、帝王賞でのリベンジに燃える女騎士が果敢に女王へと戦いを挑みます!!』

 

開始された天皇賞(秋)。先頭を行くのは予想通りにランページ、それは誰もが予想出来ていた事、それに追走するのはマックイーンかライアンかという予想だったのがそれを破ったのがレディセイバー。芝の舞台だというのに自らの戦場だと言わんばかりの見事な走りでランページの後ろについた。

 

「この走り、強いと言わせるだけの事はありますわね!!」

「だけどアタシらだって負けてないよ!!」

 

『マックイーンとライアンも伸びて来る!!果敢に王者へと競り合いを行う!大逃げのランページに3人のウマ娘が迫っていく!!メジロの三本柱と言っても過言ではないこの3人に競り合うレディセイバー!!ダートが主戦場である筈ですが、芝の舞台も何のその!!』

 

レディの予想外の好走には観客どころかトレーナーも驚いた事だろう、確かに芝を走った事はあるがそれでも主戦場はダート。本来の走りは出来ないだろうと高を括っていたのだろうが……寧ろ本来の走りが出来ないのは芝のウマ娘達。小雨とはいえ長い時間降り続いている為にバ場は最悪の不良、走りづらさを感じる者が大半だがレディにとって重いバ場は大得意なのだ。

 

「フフッ雨のダートに比べたらこんな所、一般道みたいなもんです!!」

 

マックイーンとライアンも何方も他のウマ娘達よりかは重いバ場は得意だしパワーもあるので大した問題はない、だがレディのこの力強い走りだけは完全に予想外だったのかこれは本気で気を付けないとと警戒感を強める。

 

『先頭はメジロランページ、半バ身程の所にメジロマックイーン、そしてメジロライアン。その後方にはレディセイバーが続きますが此処でラストフレアも上がって来る。先頭集団に入り込んでいく、さあこの5人のウマ娘の戦いとなって来たぞ!後方とは既に7バ身は離れている、これが現役最強ウマ娘と言われるランページの逃げの恐ろしい所!!これに付いて行けるのか』

 

ハイペースな逃げを打つランページ、そんな走りに付いて行くマックイーン、ライアンそしてレディ。だがそんな彼女らに迫るラストフレア。

 

「ダートウマ娘に、好き勝手やられてたまるかっての!!」

 

天皇賞(秋)に至るまでに3連勝、毎日王冠ではダイタクヘリオスを打ち破って優勝したラストフレア。自分こそがメジロランページを打ち滅ぼすのだ、ダートウマ娘になど邪魔されてたまる物かと一気に競り上がって行く。間もなく半分という所でラストフレアがレディの右斜め前、4番手に到達した。

 

「ランページに期待されてるだが知らないけど、芝はそう簡単じゃないのよ!!」

「―――その言葉、そっくりそのまま返して上げます」

 

圧力を掛けられようがレディは全く屈しない、見つめるのは唯一つ、この先にあるゴールのみ、それまではどんな障害だろうが自分を遮る壁にはなりはしない。

 

「ダートが芝の二軍、そんな考えを持っているウマ娘に私は負けない」

 

幾らランページによって盛り上げられていると言っても長らく付き纏ったイメージというのは中々払拭出来ない、未だにダートを下に見る考え自体はある。ラストフレアの言葉の節々にもそれ見受けられる。

 

『メジロランページ、マックイーン、ライアンがほぼ横一線!!勝負はこの三人に絞られたか、2バ身差の位置にレディセイバーとラストフレアが競り合う!何方も懸命に走っている、おっとラストフレアがレディセイバーに迫る!!』

 

「あの人のように、私も挑戦し続ける―――根性ぉぉぉお!!!」

 

だが、レディはこの程度で負ける事なんてない。地面を一段と強く踏み込みながら一気に姿勢を低くしつつ頭を大きく下げる、まるで地を這うあのようなフォームを取るとそのまま一気に駆け出した。

 

「なっ!?」

 

『レディセイバーが一気に抜け出す!!ラストフレアを置き去りにして先頭集団を猛追!!なんという事だ、ダートからやって来た砂塵の騎士がメジロの三人へと襲い掛かる!!姿勢を低くして最早転倒一歩手前の所で踏み止まりながら大外、大外からレディセイバー強襲!!!』

 

第4コーナーを越え残り600に入った所で遂にレディが先頭を駆け抜け続けていたメジロの三人を大外から捉える事に成功する。雨を切り裂く嵐となった騎士が襲い掛かるのだが、それを唯一王者だけが待ち侘びていた。

 

「来たかっ……!!」

 

ライバルの到来に血潮が加速していく、一拍一拍毎に気持ちが昂ってしょうがない。それを感じ取っているのか、隣のマックイーンとライアンも同じように笑っていた。緊張していた表情などはなく唯々強敵と戦える事への嬉しさに燃えていた。だったら自分達がするのはもう一つしかない―――この瞬間を全力で駆け抜ける事。

 

「負けませんわよ、メジロの名に懸けて―――いえ、私の為に!!」

「伊達に三冠を取った訳じゃ、ないんだからねぇ!!!」

「全力全開、いっくぜぇ!!!」

 

追いかけるメジロの三人、彼女らの姿にレディは喜びの笑みを浮かべた。彼女らは認めてくれた、自分の走りの脅威を、敵として完全に認識させた。ではここからは自分の目的―――打倒メジロランページの為に全てを尽くす、最初からそのつもりではあったが……本気で行く!!

 

『メジロランページ先頭!!マックイーン追走、ライアン猛追!!今年の春シニアを分け合ったこの三人は矢張り別格、だがそれにも喰らい付くのはレディセイバー!!!大外からレディセイバーも差を縮めていく、後3バ身!!それから逃げる逃げる、メジロランページが行けばマックイーンが、ライアンも迫って来る!!いや、此処でメジロランページ、ランページが僅かに抜け出したか!!?半バ身抜け出した!!』

 

誰もが譲らず、勝利を目指してひた走る、この姿こそがこのレースを天覧した理由。これを見たかった、この目で見届けたかった。本当にこの日、足を運んでよかったと天皇にそう思わせたのはランページだけではない、レースを走る全員がそう思わせた。そのような思いを抱いているとレディセイバーが最後の追い上げを見せ付ける、だが―――その猛追も届かずに、先頭のメジロ家の王者がゴール板を駆け抜けた。

 

『メジロランページが勝ちましたぁ!!2着にメジロライアン、3着にメジロマックイーン!!メジロ家が上位を完全に独占!!そして驚異的な追い上げを見せたレディセイバーは半バ身差で4着となりましたっおっと倒れこんだが大丈夫か!?あっ大丈夫なようです、立ち上がりました!』

 

勝利したのはランページ、マックイーンとライアンもあと少しまで追い込みこそしたがその後僅かが果てしなく遠かった。それを実感させるレースだった、そしてレディは限界まで倒し切った前傾姿勢の影響でゴール直後に顔から地面に突っ込んでしまったが、気恥ずかしそうに頭をかいた。

 

「凄かったよラン、逃げ切られちゃった」

「凄まじかったですわ……秋は取られてしまいましたわね」

 

ライアンとマックイーンは素直にランページの走りを称賛した。マックイーンはチラリと横目で掲示板を覗いて審議の文字が点灯していない事に思わずホッとしてしまい、それをライアンにバッチリと見られて気まずそうに顔を反らした。その時にランページが息を整えながら一段と高くある天皇皇后両陛下がいる方向へと向き直った。

 

「……」

 

そのまま静かに膝を付いた、それを見たライアンとマックイーンは一瞬驚くが直ぐに意図を察すると両隣に陣取り同じように膝を付いた。そしてそのまま頭を下げた。その光景にスタンドからは大歓声が沸き上がった。

 

『膝を付いての敬礼、上位を勝ち取ったメジロのウマ娘達による天皇皇后両陛下へと最敬礼が捧げられました。素晴らしい走り、素晴らしいレースを見せてくれました』

 

それを見た天皇は笑顔で拍手を彼女達へと送った。お礼を言いたいのは寧ろ此方の方だと言わんばかりの大喝采がレース場全体から沸き上がっている。

 

「……よく分かったな二人とも」

「ま、まあ陛下に向かって膝を付いてたから」

「……実はレディさんのセイバーという名前でもしかして……と思いまして……」

 

「う~ん……私もやりたかったなぁ……騎士の名に恥じないし」




「素晴らしいお孫さん達ですね」
「有難う御座います、自慢の孫達です」
「あちらのレディさんの走りも迫力があって凄かったです、シリウスさんもそうお思いませんか?」
「しょ、しょうでしゅね!!」
「あらあら、シーちゃんったら緊張しちゃって♪」
「とても仲が宜しいのですね」
「はい、ね~シーちゃん♪」
「は、はいお婆様……」



レディと競り合ったラストフレアの元ネタはプレクラスニー。ラストはプレを変えて、フレアはクラスニーがロシア語で赤い川という意味があり、太陽のように美しいという意味合いがあるらしいので、アニメのモブウマ娘にサンフレアもいるのでそれ繋がりでフレアにしました。
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