貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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159話

先日の天皇賞での上位をメジロが完全に独占した事は大きく取り上げられ、様々な命題が打たれた記事が出回っている。やはりというべきか、当たり前というべきなのか、ランページ、マックイーン、ライアンというメジロの三人による上位の独占と最敬礼が最も強く押し出されている物が多い。それはそれで致し方ないとも思うのだが……

 

「やれやれ、やっぱりというべきか予想通りというべきか」

『私はそこまで気にはしていませんがね』

「こっちは別の意味で気にするさ、なんだこの記事、バッカじゃねえの?」

 

そんな苦言を呈する程度には酷い記事もある。確かにメジロによる独占は記事にするのに値するかもしれないが、それだけを押し出し過ぎる物が多い。完全制圧だの敵はいないだの……レースの最後辺りしか見ていないような物も多いので辟易とする。

 

『しかし、貴方お気に入りの2社は良い記事は書いてくれているではありませんか』

「だけどそれだけってのがねぇ……全然分かってないってなんか呆れるわ」

 

『最敬礼を見つめる砂塵の騎士』

『地を這う走法、ダートウマ娘の強襲』

 

メジロ黄金時代と銘打ちながらも確りとレディセイバーやそのほかのウマ娘の事も取材しているのがランページお気に入りの2社、最敬礼の事を取り上げつつもレース全体を詳しく調べ上げているので満足度も高い。

 

「しっかし、あんな走りで身体は大丈夫なのか?最後なんて盛大にこけたじゃないか」

『お恥ずかしい……そのための勝負服なので問題ありません』

 

通話相手のレディは恥ずかしそうな声を出す。彼女の編み出した地を這うようなフォームで繰り出す走りは前に倒れこむのを前へ前へと走り込む事で通常の倍以上のストライドとスピードを生み出す―――のだが、ハッキリ言って危険な物でしかない。転倒の危険性は高い上にゴールした後は減速するのでほぼ確実に転倒する。その為に彼女の勝負服には前面にプロテクターが装備されている。ランページ曰くケンプファー。

 

「その為だけに勝負服改修するってなんぞ、G1の時位しか出来ないだろ」

『ダートだと柔らかいから大丈夫なので芝だとG1しか出来ないですね』

「その内に怪我すんぞお前」

 

実際レース後に南坂から自分の大逃げとは別の意味での玉砕戦法なのであの走り方は真似しないで欲しいという事を言われた。ある意味前傾姿勢はウマ娘にとってはポピュラーなフォームだが、それを更に推し進めるという意味では修得する事は簡単、だがその代償に怪我のリスクも高い。レディはその辺りの匙加減を熟知しているし基本ダートに絞っているので大丈夫かもしれないが……ランページはそうはいかないし南坂的にもOKは出せない。

 

『それで貴方は次は何処を走るんですか?』

「エリ女、んでその後はチャンピオンズカップ」

『また、中1週じゃないですか……主戦がダートならまだ理解出来ますが、芝なのにそんなローテーションで大丈夫なんですか?』

「去年と同じだから行ける行ける」

 

普通ならば、此処までの活躍をするウマ娘の脚は大事にしたくなるのがトレーナーなのではないだろうか……と思うのだがその南坂公認なので問題はない。渋々ではあったが。

 

『ならば、次走はみやこステークスか武蔵野ステークスですね……フフッ今度は砂塵の騎士として貴方に挑みましょう』

「望む所だ、勝てよ」

『愚問』

 

その言葉を最後にレディは通話を切った。チャンピオンズカップでまた彼女と戦えるとなると此方も気を引き締め直さなければなるまい、今から気分が高揚し始めてしまった……。

 

「ランページお嬢様、お時間で御座います」

「あいよ、あ~……慣れねぇ」

「ご容赦を」

「わぁってるよ」

 

気分が昂り始めてしまっているが、そんな自分はそこへと気持ちをぶつける事は出来ない。次はエリザベス女王杯、それに間に合わせる為にも療養所で確りと疲れとダメージを取る必要がある。昂る気持ちはしまっておかなければならない……のだがそうも言ってられないのが現状。

 

「いよいよって感じか……」

 

エリザベス女王杯にはイクノも登録を行っている、だがそれだけではない。ターボも前年の自分に倣っているつもりなのか出走を決めている、カノープスから三人の同時出走が確定している故か既に出走取り消しを行っているウマ娘もいるとの事。練習では何度も走った事はあるが、レースでは初めての激突になる。あのドッカンターボと遂に真正面から激突する日が来たという事実に僅かに頭痛を感じる。

 

「ぁぁぁぁっ~……と言っても幻惑~逃げ~は愚策~……だしなぁ……」

 

一番厄介なのがイクノとターボという自分にとっての天敵の二人が同時に出走するという事、これまではあくまで練習メニューの中でだけだったが、本番のレースでそれが起きるとなると果てしなく厄介。戦術の一つが完全に封じられるので真っ向勝負になる、が、ターボはターボでドッカンターボがあるので自分が負ける可能性だって普通にある事をマッサージを受けながら思う。

 

「シンプルに捻じ伏せるのが一番、というかそれしかないか」

 

同じチーム故にそれぞれがどんな手段に出るのかは完全に把握している、なので最後にものを言うのが自分が持つ実力。カノープスが最も重視する基礎的な体力で全ての勝敗が決すると言っていい。

 

「悪くはないな、そう言うのも……」

 

身内同士の対決になるが、それはそれで面白い。一度ターボの走りもマジのレースで体験してみたかったとも思っていた、エリザベス女王杯が楽しみになってくる一方で名前の中にフローラが無かった、以前自分に言っていた通り、ジャパンカップに備えて準備をしているという事なのだろう。

 

南坂がくれた来日予定のある海外ウマ娘の一覧からジャパンカップに出走するウマ娘を見る、その中で最も大きく期待されているのが今年の凱旋門に出走し2着だったソーサリーシュバリエだろうか。他にも様々な有力ウマ娘はいるが、その中で最も声高に取材に応えているのがゴールドフェザーン。

 

「『メジロランページは出走しない、私に恐れをなしたか。それも良し、レースに出なければ負けないものな!!』お~お~強気な発言ですこと……」

 

やはりというべきか自分目当てに来日する予定を組んだウマ娘が多いらしい、そしてその舞台で自分を打ち破るつもりだったのに出ないのかと落胆の声も聞こえてくる。だが彼女らは忘れていないだろうか、自分がジャパンカップを制した時もそうやって警戒する程には思えないと油断していたからこそ足をすくわれた事を。

 

「自信満々なのは結構な事だが……あの変態は手強いぜ、油断したままだと足元すくわれるぜ」

 

不思議と海外ウマ娘達は脅威に感じずにいた、それは間近でフローラの力を知っているからだろうか、きっとレディとの絆と似たような物なのだろう……フローラとそれが繋がれているというのは聊か複雑な気分にはなるのだが……兎も角自分はエリザベス女王杯に向けて、確りと調整をするとしよう。




「天皇皇后両陛下、ウイニングライブを満喫される……何だろうこのパワーワード感、まあ俺もサイン書いた時は手が震えたしな……」

次回、この辺りを詳しくやります。
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