貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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162話

『それでねそれでね、お姉様ってばサインを見たら凄いお喜びになったんだけど私がランページさんのお車に乗せて貰ったって言ったら凄い羨ましぃ~!!って感じだったの!!』

「ハハッそりゃまた、今度はピルサドスキー姉殿下もご一緒でドライブか。せめてその時はSPの隊長さん位はご一緒させないとな、でないとあの人今度はひっくり返るぞ」

『うん、伝えとくね』

「伝えとくじゃないんだけどなぁ……」

 

余程自分とのお出かけが刺激的だったのかあの日からファインからの通話とチャットが頻繁に来るようになった。何時の間にか、仲の良いお友達という事になってしまった。自分の国のトップどころか、アイルランドの王族とまで交友関係が広がってしまうとは……自分は一体何処まで行ってしまうのやら。

 

『それとね、お父様とお母様が欧州に来る時は是非力にならせてくれって言ってくれたよ。凱旋門でこっちに来るんでしょ?』

「そのつもりではあるんだが……態々アイルランドの王族様のご協力とは畏れ多いなぁ」

 

と言いつつもこれはこれで頼もしい味方が生まれたと言っても過言ではないが、その味方がアイルランド王家というのは余りにもデカすぎる気がする……何ともスケールの大きな海外遠征計画になって来た。後で南坂になんて言えばいいんだろうか。

 

『任せて、その代わり、今度お姉様とお話して貰ってもいい?お話をしたがってるから』

「まあその位ならいいけど……」

『お姉様ったらランページさんにゾッコンなの、ああっあの人こそ私の麗しの女王陛下、一度でご尊顔を……なんて言ってたから』

「ああうん……何れな何れ……」

 

アプリではエアグルーヴに対して愛しの女帝陛下とか言っていた筈だが……それが自分に来たという感じだろうか……しかし何故だろう、ストレートな分受け止められるせいかこれはこれで全く身体に寒気が走る事はない。フローラのあれは凄い震えるのに……だとすると彼女のあれは本当に何なんだろうか……。

 

「んで、お前さんはいつまで日本にいるつもりなんだ?」

『んっ~今年いっぱいって所、お父様が折角だから日本を満喫しなさいって』

「そりゃいいお父様で」

『エッヘン!!』

 

ファインに取っても自慢の出来るお父様らしく、自分の言葉に胸を張る。そんな風に自慢が出来る父親がいる彼女を羨ましく思ってしまった自分を諫める。

 

「んじゃファイン、ピルサドスキー殿下に伝えといてくれ。友達のお姉さんとは仲良くしたいし挨拶もしたいってな」

『っうん言っとく!今度のエリザベス女王杯頑張ってね!!』

「応サンキュ」

 

そう言いながら通話を切る、ファインの声はとても弾んでいた。自分の事を王家とは無関係の友人と呼んでくれた事が余程嬉しかったと思える、自分にとってのライアンのような物だろう……まあそういう存在になれたのであれば喜ばしい事だろう……それ以上に自分は考えなければいけない事が控えているのだから其方に集中するべきだ。

 

「分かっちゃいるが、今更じたばたした所で何の意味も無いからなぁ……南ちゃんの言う通りに調整に徹するのが吉なんだよなぁ」

 

既にイクノとターボはエリザベス女王杯に向けて動き出しているが、自分はまず天皇賞(秋)のダメージと疲労抜きが先決。普通ならば焦るかもしれないが、焦る気持ちなんて微塵も沸かない、高々1週間そこいらの準備時間で何が出来るというのだろうか。出来る事もやる事も変わらない、唯シンザン鉄とマスクを付けて走り込むだけでしかない。

 

イクノもターボも同じカノープス、故にやって来たメニューの密度に差こそあるが基本的には同じ方向性で練習を続けてきている。基礎体力という点では全員が同じように伸びている、ならば最後にものを言うのは精神的な強さ、根性だ。

 

「基礎体力と根性は言うなればカノープスの得意技、その領域での全開バトルになる訳だ」

 

シンザン鉄という過去の遺物を取り入れたのは基礎体力を鍛えるのもそうだが精神面も同時に鍛える為、レースというのは突き詰めると一対多の戦い、そんな戦いでは自分との弱さと向き合う事がある。苦しさや辛さは自分の弱さを助長して一気に身体の動きを鈍らせていく。

 

「上等、根性なら負けるつもりはない」

 

様々なレジェンドによって鍛えられているのもあって精神的な強さには自信がある、この前は天皇陛下ともあったしその後にはアイルランドの姫殿下を中華料理屋に連れて行って一緒にラーメンを啜ったのだ。これで精神力がないと言ったら完全に嘘になる。

 

「つっても最低でも明日までは休養しろって言われてるしなぁ……」

 

疲労とダメージを抜くのも調整の内。万全な状態で挑むのも必要な技術の一つ、何より―――自分と戦ってくれる二人にしての礼儀でもある。その為にも今は確りと身体を休めなければならない、そんな思いを抱いていると自分に近づいてくる影に気付く。振り向いてみるとそこには何やら笑みを湛えているフローラの姿があった。

 

「どうも、今宜しいですか?」

「何の用だよ態々……ジャパンカップに向けての調整は良いのかよ」

「順調そのものです、おハナさん曰くこれ以上ない仕上がりに出来ると言われました」

 

エリザベス女王杯を回避してジャパンカップに向けて練習をし続けているフローラ、目指すのは唯一つ、ランページが勝ち取った栄光の死守。それにしか興味はない、そしてまた何れランページと戦う為……。

 

「絶対勝ちます、期待しててくださいね」

「大言壮語じゃない事を祈るよ」

「フフッ大丈夫ですよ、私には最高の御守がありますから」

 

そう言いながらも懐からネックレスのようなペンダントを取り出した、それは写真入れになっておりその中には二人のウマ娘と共に撮ったフローラの写真が納められていた。

 

「タキオンとフライトが私の為にお小遣いを合わせて送ってくれたんです、フフッどうですか素敵な妹たちでしょう?」

「何とも微笑ましいねぇ……お前の妹じゃなければという一点を除けば」

「ホントに私に対しての風当たり強いですね……」

「お前が愛なんて言い出すからだ」

 

それもあるが……それ以上に不安な事がある、そうタキオンの事だ。まだまだ幼くはあるだろうがタキオンという一点でどうしようもない程に不安を感じずにはいられない。失礼かもしれないがこれはウマ娘のタキオンを知っていれば当然の反応なのである。

 

「タキオンと言えば、是非貴方に会いたがっていましたよ。確か……」

 

―――姉さん、我儘を言うようで申し訳ないのだが、一度でいいからメジロランページと引き合わせて貰う事は出来ないかな。彼女の走りは実に興味深いんだ、その身体にもね……。

 

「フフッ流石私の妹です、貴方に対する目の付け所がシャープというかアメイジングというか、という訳でなので今度私の家に遊びに―――ってあれ、ランページさん?」

 

その言葉を聞き終える前にランページは逃走していた。

 

「考えたくなかったけど、やっぱり俺はタキオンにも狙われてるのか……!!なんでアグネスのウマ娘はこう、あれなんだ!!」

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