貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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166話

「こうして会えるなんて光栄だね、無理言った甲斐があったってもんだよ」

「本当に無理を言って来たから嫌だった……」

 

溜息混じりに肩を落としながらも直ぐに持ち直すと自分に向けて頭を下げて謝罪をする。それがこの状況への物だとはすぐに理解出来る、気にしていないのだが……深刻そうに頭を下げるブライアンに逆に此方が困る。

 

「すいませんランページさん……チャンピオンズカップに向けての調整があるっていうのに……」

「後輩が一々先輩の顔伺ってんじゃねえよ、そういう時は思いっきりでいいんだよ」

「さっすが偉大な無敗の十二冠は言う事が違うね!」

「「それってつまりマーベラース!!」」

「如何でもいいけど十二冠って言い難いよな~」

 

今居るのはトレセン学園の談話室、誰でも使う事が出来るウマ娘達の集会所。そんな場所を今使用中にしているのはエリザベス女王杯を勝利し、次なるレースの為に身体を休めているメジロランページ。そんな彼女に頭を下げているのはナリタブライアン、今日は同級生に自分がランページと交友関係がある事がバレてしまって如何しても会いたいというので話を付けてみた、そしたら何故かマヤノとマーベラスまで付いて来た。

 

「改めて自己紹介させて貰うよ、アタシはヒシアマゾン!!ブライアンのダチさ!!」

 

ヒシアマゾン、外国産馬故に当時の規定でクラシックに出走出来なかったが当時のオークス馬のチョウカイキャロルをエリザベス女王杯で見事に打ち破り、同世代最強牝馬の地位を確固たるものとした。3年連続で最終優秀牝馬に輝く程に煌く末脚の切れ味を備えた事で女傑と呼ばれた名牝。圧倒的な強さを誇ったブライアンにも挑戦した事でも知られる競走馬。

 

「是非とも先輩には一回話をしてみたくってさ」

「そりゃまた光栄だな、ブライアンもこの位なら幾らでも相手してやるから遠慮なんてしなくていいんだぜ?」

「ですが……いえ、これ以上は野暮ですね」

 

それ以上は口にしなくなったブライアンだが、以前よりもかなり自分を出せるようになり始めているように感じる。酷く臆病だった筈の性格は少しずつ前向きになっているのか、一々オドオドとした態度を作らないようになっている。これも成長、何れ枝を咥えるようになって自分にも勝負を挑むようになってくれるのだろうか。

 

「へへっ実はこう見えてもアタシはアンタに憧れてるんだよ、何せ無敗の三冠だからね」

「ヒシアマお姐さん、逆にランページさんに憧れてない人の方が少ないと思うな~」

「そう思う~」

「アハハッ!!そりゃそうか、こりゃマヤマーベに一本取られたねぇ!!」

 

ケラケラと愉快そうに笑うヒシアマゾン、サバサバとしていて姐さん気質らしい笑いかたに何処か親近感がわく。まあ自分よりかはずっと女らしさは感じられるのだが……。

 

「んでさ、アタシも何れチームに入る訳なんだけどカノープスじゃどんな練習してタイマンに備えるんだい?それを是非聞きたくてさ!!」

「こう言って聞かないんですよ、全くヒシアマ姐さんは……」

「あれま姉さんって呼んでるの?」

「私の姉さんはハヤヒデ姉さんだけです。ヒシアマ姐さんはヒシアマ姐さんです」

「姐さんってそっち的なあれなのね」

 

其処は譲る事が出来ないのか、ブライアンはムッとしながらも訂正する。まあ確かに姉と姐さんは大分違う物ではあるだろう。それでも既に持ち前の面倒見と気風の良さが受けているのか彼女は人気を集めつつあるらしく、同級生と下の学年の子達には親愛を込めてヒシアマ姐さんと呼ばれているとの事。

 

「俺もそう呼んだ方が良いかい、ヒシアマ姐さん」

「よ、よしてくれよ。アンタにそう言われるのは違和感しかないしアタシが姐さんとかって言わなきゃならない立場だよ」

「もう既にお姉様云々って呼ばれまくってるけどな、好きに呼んでくれていいぜ」

「んじゃランさんって呼ぶ事にするよ」

「あれまスタンダートな呼び名に落ち着いちゃったか、奇を衒ってるのを期待したのに~」

「あたしにそういうセンスを求められてもねぇ……」

 

軽い笑い話になりつつもカノープスについての話が始まった。同席させて貰ったマヤノとマーベラスもそれを聞きに来たと言わんばかりに耳をピクピクと聞いている。ヒシアマは一番熱心に、食入るように話を聞いている。時にはメモを取り、質問をするなどしてその内容を聞き漏らさぬようにしていた―――同期の彼女に負けぬように。

 

「ってな感じだな、カノープスは徹底的に基礎を磨き上げることに重点を置いてるんだ」

「マヤには合ってないかな~……」

「天才肌のマヤっちには性に合わんか、マベちんは如何だい?」

「う~ん……でもその積み重ねがマーベラスな事になるんだから……う~ん」

「此方は比較的に好印象」

 

天才肌なマヤノからすればカノープスのメニューは理解こそ出来るが、肌に合うかと言われたらかなり微妙な部類。何方かと言えば彼女はステータスよりもスキルをどんどん覚えていくタイプなので相性的には微妙になるかもしれない、一方マーベラスはマヤノよりかは好印象だが何とも言い難い。

 

「徹底的に基礎を鍛え続ける、つまり自分とのタイマン勝負って事だね!?」

「まあそう言いかえてもいいかな、レースで最後に物を言うのは強い自分の意志だから」

「くぅっ~いいねぇ良いねぇ!アタシそう言うの大好きな性質でね!!」

「こういう奴なんだ、気にしないでくださいランページさん」

「気にしないどころか、こういう風に気風の良い奴は大好きだぜ俺は。肩が凝らずに済むってもんだ」

 

最近行儀良くしなければいけない相手ばかりなのもあるせいかヒシアマゾンのような肩肘張らずに自然体且つ自分と対等に接してくれる相手を求めていたのかもしれない。特に自分と似ている相手を、それを聞くとヒシアマゾンは目を輝かせた。

 

「おおっ話が合うじゃないかい、こりゃ思った以上に仲良く出来そうじゃないかいアタシ達」

「だな、よ~しこのままお姉様と姐さんコンビでも結成するか」

「そりゃ面白そうだね」

「「イエーイ!!」」

 

とハイタッチをする二人、完全なノリによる行動だが思った以上にシンパシーを感じるというか気が合う。それに合わせてマヤノとマーベラスが同じようにマーベラース!!と声を上げる。それを見つめているブライアンは姉と同じ位に尊敬しているランページと気が合うというヒシアマゾンに嫉妬を浮かべてしまった。

 

「(……あんな風になれば、ランページさんと仲良くハイタッチが……それに、姉さんだって安心してくれるんじゃ……)」

「んっどったのブライアン」

「い、いやなんでも……!!(頑張ろう、この臆病さを少しずつでも良いから直してランページさんみたいに強くて凛々しいウマ娘になるんだ……!!)」

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