貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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167話

「あっラン、これからヘリオスの所行くんだけど何かある?」

「んじゃ優勝おめでとさん、今度お祝いの品持って行ってやるからリクエスト頂戴なとでも伝えといて」

「畏まっ!!」

 

そう言いながらも駆け出して行くパーマーを見送りながらも完全に日課となった新聞を読む。マイルチャンピオンシップを優勝したヘリオスのお祝いの為に一緒に出掛けるらしいパーマー、自分も同行してみたいが調整期間中である上に本格的な練習メニューをこなす日程も近いので遠慮する事にする。

 

「しっかしこれも俺のせいかねぇ……」

 

新聞にはヘリオスの見事な勝利がデカデカと掲載されており、そこにはこんな文も乗せられていた。

 

『快勝大逃げウマ娘!!大逃げウマ娘が生み出す先頭の波』

 

自分であるメジロランページ、パーマー、ヘリオス、ツインターボ、確かに考えてみると此処まで大逃げウマ娘が集中しているのも極めて珍しいだろう。逃げはいても大逃げは早々居ないのが普通なのにたった2年で4人の大逃げが結果を出しているのだから驚きである。これは後年のウマ娘達が逃げを選択する子が増えそうだと今更ながらに思う。まあ選んだとしてもそれは自己責任なので自分のせいではないので知ったこっちゃない。憧れるのは勝手だが、それを選択したのは己なのだから。

 

「海外ウマ娘日本入り……ハァン……」

 

そんな記事はそこまで興味を示さずに捨て置くと好い加減に食事に手を付ける事にした。新聞に集中し過ぎるのも行けないと手を合わせる、サラダを口へと運んでいるとテイオーとターボがやって来た。

 

「ラン此処良い?」

「ああ好きにしな」

「それじゃお邪魔しま~す」

「邪魔するなら帰ってや~」

「えっ~!?」

「マジにすんなよ」

 

ついタマとよくやるやり取りをやってしまった。そんな小芝居をしつつも席に着いたテイオーはとんかつを口に運びながらもランページにある事を聞く。

 

「ねえ、ランってさレースの後には療養所を利用するよね?」

「ああそれが?」

「でも今回は全然使ってないよね?」

 

前々回の天皇賞、前回のエリザベス女王杯を制した後にもランページは療養所を利用する事無くトレセン学園での療養で疲れとダメージを抜いている。それでも十分な程度の物しか溜まっていないのかとも思ったので聞いてみたが、如何やら違うらしい。

 

「逆にこれまでが遠慮なく使い過ぎてたとも言えるな、だからそれを矯正する意味でもあるんだ」

「どゆ事なの?」

「質問だターボ、海外にもメジロの療養所はあるでしょうか」

「ない!!」

「正解、景品に生姜焼きを一枚贈呈してやろう」

「やった~!!」

 

自分の生姜焼きを一枚渡しつつも答えるとテイオーは納得したような顔をした。これから海外に行こうというのにメジロの専門的な集中療養に頼り切るのは危険だと判断したのだろう。海外でも休養のための施設は使う事は出来るだろうが、それでもメジロ家のスタッフとは違うので同じだけの回復が出来るとは限らない。なので出来るだけ自分で回復出来る分はするに越した事はない。

 

「まあ元々南ちゃんの方針で月一ペースでレースに出てたからな、その辺りは慣れてるつもりだ」

「ボ、ボクとは本当に経験が違うんだね……」

「チームが違うんだから方針が違って当然だろ」

 

そう言われてもテイオーとしてはそれがランページの強さの秘訣なのでは……と思わざるを得ない。圧倒的なレースの経験の蓄積をしているからこそ今がある、それを経ての無敗なのだから格の違いという物を感じてしまう。だが、それでもテイオーは自分の走りに自信を持てていた。

 

「だけどラン、有記念じゃ負けないよ!!僕のテイオーステップはトレーナーも認める位に進化してるんだから!!」

「へ~あの変態が認めてるのか、そりゃマジみたいだな」

 

色々言われこそするが、沖野は腕自体は確かなトレーナー。そんな彼が認めるのだからテイオーステップは確実に進化しているのだろう。それを聞いて真っ先に対抗の声を上げたのはターボだった。

 

「テイオー、相手がランだけだと思ったら大間違いだぞ!有記念にはターボも出るんだから!!ターボの真・ドッカンターボで勝つんだから!!」

「勝つのはボクだもんね、ネイチャにだって勝ってるんだから!!」

「ネイチャに勝ったからってターボに勝てるとは言えないぞ~!!」

 

と額をこすり合わせるようにしながらもムムム~!!と言い合いをする二人、微笑ましいような呆れるような光景が続くのだが二人は大急ぎで食事を掻き込んでいく。途中で全く同じタイミングで喉を詰まらせるのでお茶を渡すと一緒に飲み干して死ぬかと思ったぁ……!!と口にする。その位でウマ娘が死んでたまるか。

 

「「勝負してくる!!」」

「おいおいおい、有まで待てねぇってか?」

「「待てない!!」」

 

そう言うと二人は速攻で食器を返しに行くとそのまま駆け出して行った。仲が良いというか似た者同士というべきなのか……というか食べたばかりで走れるのだろうか……幾らウマ娘とは言えどある程度の休憩時間が無ければ辛いとは思うのだが……まあ例外的なウマ娘はいる、それは勿論オグリキャップ。自分の数倍の量を普通に平らげるし、妊婦のように膨らんだ腹が直ぐにシュッと引き締まるのだから一種のホラーである。

 

「まあ元気があるのは良い事だな、御馳走さんでしたっと……さてと、一服でもしに行くかねぇ」

 

食器を返すと屋上へと向かう、やはりシガーを吸う時は屋上が一番だ。そんな思いを携えながら屋上へと向かっていると途中で愛するライスと遭遇する。

 

「あっお姉様、これからフラワーさんとマヤちゃんと一緒にケーキ食べに行くの。お姉様も一緒に行かない?」

「行く行く~ライスが行くだから行く~」

 

ライスからの誘いを蹴る訳もなく、早速待ち合わせ場所を聞くと二人に話してくると先に行く後姿を見送る。既にシガーを吸うなんて事は頭から抜け落ちていた。

 

「―――私とは随分と対応が違いますね」

「そりゃそうだ、お前なんかとライスじゃ全然違う―――ぎゃぁ!!?」

 

何時の間にか背後に居たフローラが黒いオーラを滲ませながら、自分の腰に抱き着いていたので思わず大声を出してしまった。

 

「テッメェ何抱き着いてやがんだ離れろ!!」

「何故です、私の何処がライスさんと違うんですか!?ライスさんが抱き着いたら絶対に喜ぶんでしょ!!?」

「当たり前じゃねえか!!ライスとお前を一緒にすんな!!」

「貴方の方が余程酷いじゃないですか!?軽いギャグで抱き着いただけなのに!!」

「お前がやると洒落にならねぇんだよ!!」

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