貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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第10回ジャパンカップ


史上二人目のトリプルティアラ。
再びメジロから現れたそのウマ娘に日本は狭かった。
世界に挑む、そして……世界を縮めた。煌めきの尾花栗毛。
そのウマ娘の名は―――メジロランページ。

この日、日本は世界を凌駕した。全世界に届け、ジャパンカップ。



169話

「この空気、変わらねぇもんだなぁ……」

「そうそう変わるものでもありませんよ」

 

そんな言葉にうなずきながらも東京レース場の空気にどこか哀愁があるような表情を浮かべるランページ。今日、自分との対戦をするために海外からウマ娘がやってきている。だがその場に自分はいない、故に彼女らが挑戦するのは前年の自分の記録、ワールドレコード。

 

「さて、彼女らは貴方に勝てるのでしょうか」

 

出走登録期限のギリギリまでランページに対するラブコールは数多く寄せられていた。ジャパンカップに出て欲しい、貴方と勝負したい、必ず勝つ、そんな物ばかりが届けられて来たがランページはそれに応えるつもりは毛頭なく、当初の予定通りにチャンピオンズカップへの出走を決定付けた。散々な事を言われてきたが、その全てを振り払った。

 

「全くウザいったらなかったな」

「私としてはランページさんがそれぞれの母国語で言い返す姿は面白かったですよ。見世物としては中々に爽快でした」

「こっちは中々にストレス溜まって疲れてたんだけどね」

 

納得出来ないと態々自分に直接連絡をしてくるウマ娘も多かった、なので直接言い返してやった。相手の言語に合わせてやると相手は驚いたようになりながらも好都合だと説得を試みてくるのだが、それら全てを一蹴した。

 

「そもそも態度が気に喰わねぇ、俺が出ないジャパンカップに価値がないなんて言う奴もいるんだぜ?全くムカつくな」

「芝2400という条件下ではランページが暫定的に世界1位ですから言いたい事は分かるんですけどね」

「まあいいさ、今日は楽しませて貰う事にしよう」

 

自分を目標にし、倒しに来たのは理解する。だが此方の事情を一切考えずに勝負を挑んでくるのはお門違いだ、戦いたいのならばチャンピオンズカップに来ると良い。そう突き返してやった、芝じゃないから走れぬという返答を持った者達にランページはこういった。

 

―――だったらワールドレコードを破ってみろ、まあ、そこに届かずに敗北するだろうがな。

 

極めて挑発的な言葉を送った、自分の記録に絶対の自信がありそれには勝てないと受け取ってならばそれを打ち破るのみと声ばかりが上がった。誰一人として自分の言葉の意図を理解していなかった事に溜息を漏らした、そんな溜息を再び吐きながらも新聞を広げて出走ウマ娘を確認する。

 

「アルダンさんも出るんだよなぁ……頑張って欲しいけど、如何だろう」

 

ジャパンカップにはマックイーンだけではなくアルダンも出走、メジロ家から二人が挑む事になる。この顔ぶれの中で一体どんな走りを見せるのか……そんな中に混じるアグネスフローラの名前。自分が態々レース場に来たのは彼女の走りを見る為だ、だが昨年の自分と同じようだと思わず笑ってしまった。

 

「見ろよ南ちゃんこれ」

「フローラさんですね、おっとこれは……」

 

フローラの人気は12番人気、アルダンが9番人気でマックイーンに至っては1番人気。日本勢の中ではブッチギリに低い、フローラは基本的に自分と同じレースばかりに出走しているので勝利は少ない。それでも自分と被らない重賞にも出走して勝利しているが……あまり評価されていないのが実情、そして同じメジロ家というのもあってかアルダンとマックイーンはかなり期待が寄せられている。

 

「物事の本質を見ないというかなんというか……まあいい、チャンスだぜフローラ」

「なんだかんだでフローラさんもリギルとしては破格なペースでレースに挑んでますからね、経験で言えばランページさんに負けてません」

「まあそれも俺のせいなんだけどな」

 

フローラの戦歴は18戦6勝、そこだけを見たら注目株という訳でもない……だが、そこが狙い目でもある。

 

 

「12番人気、まあ順当な所ね」

 

自分の人気を改めて確認しつつも正当な評価かもしれないな、と認識するフローラ。そんな自分に比べて同期のマックイーンは1番人気、全く凄い物だ。

 

「アグネスフローラさん、本日は宜しくお願い致します。同じ日本ウマ娘として、意地を見せてやりましょう」

「メジロアルダンです、ご一緒出来て光栄です」

「あっいえ此方こそ……」

 

普段ランページとばかり絡んでいるので忘れがちになるが、メジロと言えば名家、そしてこの二人は紛れもない御令嬢、つまりお嬢様だ。良くも悪くもお嬢様らしくも無いランページのせいで本当のお嬢様だ……と一瞬焦ってしまった。いや、自分もそれなりの家柄ではあるのだが……。

 

「それにしても……」

 

そう言いながらも周囲を見回すマックイーン、海外のウマ娘達の視線は何処から此方を舐めているかのようにも、落胆しているようにも見える。それは当然だろう、彼女らはランページに挑む為に此処に来たのだ。本当は彼女自身と戦いたかったのを今日はその記録を出した舞台で過去の彼女に挑むという事で慰めている。不満はあって当然。

 

「ランページさん目的の連中ですからね、私達じゃ不満って感じが凄い事凄い事」

「それだけの事をランページさんはやってのけましたものね、私も負けてられませんわ。今日は勿論勝ちに来たんですもの」

 

こんな状況にもかかわらず、アルダンは緊張もしていなければそれにあてられてもいない。平常心のままで闘志を燃やしていた。それはマックイーンも同じで同意していた。

 

「たとえ相手が誰であろうと、私はメジロのウマ娘として恥じないレースをするまでの事。皆様が望んでいるのはランページさんでしょうが、私だって同じメジロのウマ娘だという所を見せ付けてやりますわ」

「カッコいいな~緊張とかないの?」

「天皇皇后両陛下がいらっしゃいました天皇賞に比べたらこの程度で動じなくなりましたの、慣れって怖い物ですわね」

 

確かにそんな強烈過ぎる経験をしてしまったら並大抵の事では緊張はしなくなるものか……と思っているとマックイーンから同じ質問をされる。

 

「そういうフローラさんも全く緊張されている様子がございませんわ」

「私は別に。ちょっと嬉しくて」

「嬉しい、ですか?」

「ええ―――あの人に挑める。それだけで私は満足です」

 

彼女の瞳に映っているのはいない筈のランページだった、ゲート前に立っている彼女の姿が自分にみえている。ジャパンカップに焼き付いたシャドウ、全員が追いかける幻影の姿がハッキリと見えていた。そんな様子にアルダンは愉快そうに笑った。

 

「まるでランページさんに恋焦がれているみたいな顔をしてますよ」

「えっそんな顔してます!?」

「はい、まるで意中の殿方を前にしたような……ランページさんが男らしすぎるのは認めますけど」

「ええっ……ああっこんなところ見られたらまたランページさんにドン引きされる……」

 

ジャパンカップ、出走前だというのに何処か緊張がない空気が流れるが直ぐに三人は気を取り直した。そしてもう一度視線を交えると自らのゲートの前へと歩き出す。

 

「―――行こう」




「もう既にドン引いてるわ」


やっぱり、JRAのCMセンスってエグいわ……。誰か、私にああいうセンスをくれ。
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