17話
時は進み、季節は再び一巡する。季節は春、トレセン学園に編入してから初めての春に流石のランページも気分が高揚し始めている。何より、今年は―――いよいよ自分達のデビューを控える年なのだ。楽しみにならない訳はなく気分上々、練習にも気合がはいるというもの。
「うおおおおっターボ全開ぃぃぃぃぃ!!!」
「それが続けばいいがな!!」
「続きます!!」
「アタシだって負けないよ~!!」
カノープスでの全体練習、先頭に立つのはやはりと言わんばかりのツインターボ。それに続くは大逃げの態勢を維持しながらも時を待つランページ、それにペースを合わせるようにしながらも疾走するイクノディクタス、そして自分のペースを守りながらも決して離され過ぎないようにしているナイスネイチャとカノープスの全員の実力は順調に付き続けている。
「今日こそターボが貰ったぁ!!」
「残念無念、また来てねんってなぁ!!」
破滅逃げのターボに直線で追い付くとそのまま抜きにかかるランページ。それに驚きつつも必死に脚を動かして逃げようとするターボだが、まだ脚を残していたランページによってあっさりと抜かれる。そしてそれに続くかのようにイクノも残していたものを全開に使って抜きに掛かる。
「負けるもんかぁぁぁ!!」
「うおおおおおっ!!負けるかぁ!!」
背後からもネイチャが迫る、だがターボも耐える。既にスタミナは尽き始めているのにも拘らず根性で粘り続けている、失速もしないままそのまま駆け抜けていく。そして―――全員がゴールを駆け抜けていく。ブレーキングをしながらもトップのウマ娘が片足で回転しながらも天に向けて指差しながらもポーズを取る。
「YES!! I am a №1!!」
「ゼェゼェゼェでも、何とか今日は2着キープしたぞぉ……!!」
「ハァハァハァ……お、お馴染み3着ぅ……てね」
「同着、でしたね……」
結果はランページが1着、そして2着ターボ、3着にはネイチャとイクノが同時にゴールしたと言った所だった。
「お疲れ様です皆さん、以前よりもずっと早くなりましたね。ターボさんは以前よりもスタミナも付きましたし逃げ切れるようになってますし」
「そ、そりゃ、ランといつも一緒に走ってるからね……!!」
「いやぁ俺としては恐ろしいさね、まあそれはイクノも同じなんだがな」
「負けては、いられませんから……」
肩で息をしながらもイクノは力強い瞳を作り続けている。実際にランページとしての天敵はイクノとターボであると南坂は分析している。ランページの微細なペース変更による煽りはイクノの正確な分析には通じないしターボはターボで最初から最後まで全力で走るという事で自己完結しているのでペース変更による揺さぶりが効かないのである。故にランページは二人と走り続けており、自分の基礎を鍛え続けている。
「そう言えばよトレーナー、今年はカノープスに新メンバーとか入るのかね」
「一応お声掛けはしているんですが、やはりというか予想通りというかリギルやスピカに行ってしまっていますね」
「ま~あっちにはルドルフ会長やらシービー先輩がいるもんね~そりゃしょうがないよ、同級生のテイオーもチーム決めたっていうしアタシらの世代も結構動いてる感じするよね」
「えっターボ知らないよ!?」
「アンタはもうちょっとアンテナ広げなって」
アンテナを広げろと言われて、ウマ娘のアンテナ?と言われて首を傾げつつもイクノに意味を尋ねるターボ、聞かれて丁寧に教えるイクノと呆れるネイチャと微笑ましく見つめるランページ。これがカノープスの定番の光景になりつつある。
「……これなら大丈夫そうですね、すいませんランページさんとイクノさん。お話があります」
「何よ南ちゃん、デートのお誘いかい?」
「残念ですが違いますね」
流石に南ちゃん呼びも慣れたのか、苦笑しながらも軽く受け流す。それにお堅いね~とちょっかいを掛けつつも一体何の話なのかと興味津々なランページ。
「お二人の様子ですと、問題ないと思いますのでデビューの日程の仮予定を組んでおきました」
それを聞いて二人は思わず顔を見合わせながらも思わず瞳を輝かせてしまった。そしてそれは隣で聞いていたターボやネイチャも同様だった。
「おっ~!!二人のデビュー戦!?いついつ!?絶対、絶対応援しに行く!!」
「チームメイトなんだからそれは当たり前でしょ、でも何時なの?」
「はい、ランページさんは6月でイクノさんは7月を仮予定として組んでいますがどうしますか?」
「俺は異論ねぇぜ」
「私としても問題ありません」
基本的に新馬戦、ウマ娘で言う所のメイクデビューは6月頃に始まり、翌年の2月頃まで行われる。其処で勝てばいよいよ本格的な中央デビューと言える。
「という事は大体二か月後か……今から楽しみになって来やがったなイクノ」
「はい、気分が高揚しますね。もう一本行きましょうか」
「応よ」
「あっターボもやる!!」
「ターボさんは休憩ですよ」
「ブ~!!」
「はいはいブーたれない」
走らせてあげたい気持ちもあるのだが、流石に破滅逃げをするようなターボはもう少し時間をおいて休ませてやる必要がある。と言っても以前よりもずっとスタミナも付いて来ているしスピードも更に磨きを掛けている。今のターボでもきっとメイクデビュー戦に出しても勝利は確実に持って帰れるだろうという気持ちはある。
「お二人は如何します?クラシックかティアラか」
「う~ん……分かんない!!だからランとイクノが走ってる所を見て決めようと思ってる!!」
「アタシも同じかなぁ~でもクラシックを考えてる感じ」
「分かりました」
そんな事を言いながらも走り出したランとイクノ。この二人がいよいよデビューを行う、そしてそれは新しい世代がトゥインクルシリーズへと殴り込みをかける事を意味する。大豊作とも言われるこの世代、今年からはあのオグリキャップもシニアクラスに入る。タマモクロスとオグリキャップの戦いが世間では注目されているが、南坂はそれ以上にこの二人が何処まで行けるのかが気になっていた。
「此処で、勝負です!!」
「負けるかよぉ!!」
気持ちよさそうに、楽しそうに駆け抜けている二人に南坂は武者震いをしてしまった。無事是名バを目指していると言ってもどんな成績を残してくれるのかを思ってもきっと良いのだろう。きっと彼女たちはタマモクロスやオグリキャップたちにも負けない名ウマ娘になる事は間違いないのだから。
「お~い南ちゃ~ん今のどっちが勝ったぁ~?」
「私だと思いますが」
「いやいやいや俺でしょ」
ターボエンジン性能向上中。