有馬記念。ウマ娘の全てが此処にあるとも言われる冬のグランプリレースで実質的な年度最優秀ウマ娘決定戦と呼ぶファンも多い。圧倒的な認知度の他にも、このレースでは数多くのドラマが生まれて来た事でも有名。今一番皆の記憶に新しく刻み込まれているレースは恐らく、オグリキャップのラストラン。そんな伝説が生まれ続けるレース、その中でも今日のレースは恐らく一際伝説として語り続けられる事だろう。
メジロの三冠 メジロライアン。
ルドルフ以来の無敗三冠を成し遂げ、真の王者は自分だと挑戦を叩き付けた
帝王 トウカイテイオー。
3代目トリプルティアラ。唯一無二の大逃げウマ娘
爆速ターボエンジン ツインターボ。
ティアラ路線の最前線で暴君と覇権を争った乱れぬ貴婦人。
鉄の女 イクノディクタス。
無敗の帝王に敗北を突き付けかけた
もう1人のダービーウマ娘 ナイスネイチャ。
メジロの四天王、最初に盾を掴み取り、名を知らしめた
名優 メジロマックイーン。
太陽のような笑みがその名が如く。
太陽の走り屋 ダイタクヘリオス。
ライバルに続けと言わんばかりに世界の強豪を打ち破った
ランページ世代最後の大物 アグネスフローラ。
誰も知らぬとは言わせない、この勝利を胸に世界へと挑戦の旅路へとする
独裁暴君 メジロランページ。
クラシックとシニアが入り乱れる有馬記念と言えどこれ程のメンバーが集まる事などは普通はあり得ない。トゥインクルシリーズである筈なのに内容としてはドリームトロフィーリーグのそれと殆ど変わりがない。余りにも奇跡的過ぎるメンバーに今日ほどこのレースに夢を乗せる事はないだろう。
昨年のクラシックとティアラ三冠、今年のクラシックとティアラ三冠が同じレースで覇を競う。そしてそれらと共に駆けるウマ娘も彼女らと覇を競い続けて来た強豪ウマ娘、これ程予想が付かないレースも滅多にない。正しく一年間の集大成に相応しいレースとなる事だろう。
『さあ、今年もこの日がやって参りました。暮れの中山レース場、吹き荒ぶ寒風を跳ね返す程の異様な熱気がターフと観客席を包んでおります。G1有馬記念です。間違いなく今年の総決算に相応しい激しいレースが繰り広げられる事でしょう』
『私もこの日が来るのを楽しみにしていました、今年の有馬記念は今までとは違いますからね』
『有馬記念は紛れもなく、歴史に刻まれる事でしょう!何故ならば、今年のメンバーはドリームトロフィーリーグも顔負けの猛者ばかりが集っております!!私も始まる前から鳥肌が立ちっぱなしで興奮を抑える事が出来ません!!!』
解説の言葉に思わず全員が同意する、今までこんな中山があっただろうか。確かに熱気に包まれているが、何処かで重苦しくも感じ続けていた異様な不思議な緊張感が漂い続けている。それもその筈だ―――正しく、今年の中山は一味も二味も違う。その言葉を肯定するかの如く、ウマ娘達が地下バ道から姿を現していく。
『さあウマ娘が次々ターフへと姿を現します。今年を様々に盛り上げてくれたウマ娘ばかり、全員が貫禄を携えながらレースへの気迫を纏っております』
此処に並び立つ者は全員が強者、一人たりとも弱者など存在しない、この場に立てる事自体がその証。そんな者が集う場の空気は、熱く重苦しい。これがシニアを経験するウマ娘達なのかと言わんばかりの空気がそこにある。
『さあダイサンゲンの次に姿を現すのは―――おっと逃げ宣言の一番手はこのウマ娘、ステイヤーズステークスを大逃げで勝利経験のある脅威の大逃げステイヤーメジロパーマーだ!!続けてやって来るのは太陽の走り屋ダイタクヘリオスだぁ!!早速大逃げ宣言のコンビが登場したぞぉ!!』
「へへっ来ちゃった~中山~!!」
「ウェ~イ爆逃げかましてこ~!!」
「「ウェ~イ!!」」
史実では出走しなかったパーマー、だがこのレースの面子を見て我慢が出来なくなってしまったのか出走を決意したとの事。つまり、このレースには大逃げをするウマ娘が4人もいるというとんでもない状況が出来上がっている。
「大逃げと言われたら負けないぞ~!!やっほ中山~!!」
「はいはい、元気なのは良いけど怪我しないようにね~」
『爆速ターボエンジン搭載のトリプルティアラの登場!今年のトリプルティアラウマ娘、ツインターボの登場だぁ!!例を見ない程の大逃げの激突という世紀の一瞬が今から待ち遠しいです!!そんな彼女と一緒にやって来たのは同じカノープス所属にして帝王に唯一、敗北を突き付けかけたダービーウマ娘のナイスネイチャ!!今日はどんな作戦で来るのでしょうか!!』
元気いっぱいに登場するターボを落ち着かせる世話係のようなネイチャ、入場制限が行われて制限ギリギリまで入っている中山の空気に少しだけ苦笑いしつつもターボと共に歩き出していく。
「本日は宜しくお願いしますわイクノさん、全力を以て相応しい走りをして見せますわ。メジロの誇りに賭けて」
「此方こそ、このような場で走れる事は光栄です」
『続くのは天皇賞(春)を制したメジロ四天王の一人、名優メジロマックイーン!!かの暴君と覇を競い続けた貴婦人、イクノディクタスです!!』
同室ということもあるからか一緒に登場した二人は何処か仲良さげな雰囲気を醸し出しながらも品のあるぶつかりを行っている。正しく名優と貴婦人の名に相応しい。
「へへん、ボクの方が凄いもんね!!此処で証明しちゃうもんね!!」
「それは楽しみだね、これでも三冠だから簡単には負けないけどね」
「フフン、世界の厳しさに勝った私だって負けません」
『来たぞ来たぞ、遂に来たぁ!去年のクラシック三冠に輝いたメジロ四天王の一人、春秋グランプリ制覇を狙うメジロの三冠メジロライアン!!シンボリルドルフに以来の無敗三冠を成し遂げ、真の王者を証明をする為にやって来た帝王トウカイテイオー!!そして今年のジャパンカップを制覇したアグネスフローラ!!この三人が一気にやって来たぁ!!』
クラシック三冠のライアンとテイオー、そしてジャパンカップを制したフローラの登場。もうレース場の興奮は最高潮、だがまだあのウマ娘は姿を現さない。全員の視線が地下バ道の出口へと集中する。それに呼応するかのように一人のウマ娘の姿が少しずつ、見えて来た。
『さあ―――遂に来たぞ、チャンピオンズカップを制した事で達成したG1勝利数は脅威の13勝。23戦23勝は、全世界的に見ても破格の無敗伝説。この有馬を最後に彼女は世界へと羽ばたくか、待ち受ける猛者たちを相手にしながらも無敗の王者はどんな走りを見せてくれるのでしょうか!!?メジロ四天王筆頭、ターフの独裁者、無敗のティアラ、メジロランページィィィィ!!!』
「―――待たせたな」
コートを肩に担ぎながら登場したランページ、待ってましたと言わんばかりの大歓声がレース場を、いや一帯を震撼させる。人気投票で決定される有馬記念、文句なしの堂々の1番人気。名実共に日本最強のウマ娘となるのか、それとも彼女を破ってその名を得るのか。それを考えると今から震えてしまう。
「このメンバーで走る有馬記念か……最高の気分だな」