「ったく……如何過ごせってんだよ」
休日、その日も練習に当てようと思っていたランページだがその姿は喫茶店の外の席にあった。テーブルには珈琲が置かれているが、それにはあまり手を付けずに溜息ばかりを吐いていた。その理由はカノープスの南坂トレーナーにあった。
「れ、練習禁止ぃ!?」
「はい、この所ランページさんは少々オーバーワーク気味ですのでこの辺りで一旦打ち止めにして身体を休めてください。休む事だってウマ娘にとっては重要な事ですよ」
「いやそれは分かってるけどよぉ……ハァ分かったよ……」
そんな経緯があって、強制的に休日を満喫させられる事になってしまったランページ。ハッキリ言ってどんな風に過ごすべきか全くわからなかった、メジロ家の邸宅で過ごしていた時も困っていたが、今は特に困る。あの時はライアンと一緒にトレーニングや主治医の所に健康診断などを受けていたが……今はそれを切れないのでカフェに入ってみたのだが……想像以上に肌に合わない。
「ハァッ……お婆様にもバイトは禁止にされちまったしどうすりゃいいんだ……」
実は休日などはバイトしてメジロ家に感謝の気持ちを示そうと思ったのだが……先手を打たれたかのように高等部になってから早々にバイトをする事は禁止にされてしまった。せめて自分が使う分は自分で稼ごうと思ったら……今度はクレジットカードを渡されてしまった。
「しかもブラックカードって……持った事ねぇぞこんなの……」
流石は天下のメジロ家である、渡されたのはブラックカード。しかもお婆様から
『好きに使ってくれていいですからね。貴方も私の孫なのですから』
という有難いお言葉が授けられてしまっている。取り敢えず試しにカフェで使ってみたのだが……問題なく使えてしまってもう何も言えなくなってきた。
「何に使えばいいんだよこんなの……ゲームとか……使えるかよ……」
一瞬思い付いた使い先だが、流石に使えないと頭を抱える。休日だからと言って一人で出たのが失敗だったか、せめてライアンでも誘えばよかっただろうか……自暴自棄になって外に出たのが失敗だった。
「あれ、ラン?」
「……ライアン?」
頭を抱えていると声を掛けられた、顔を上げてみるとそこに居たのは青空色をしたスポーティな格好をしたライアンがいた。そしてもう一人、友達と思われるウマ娘が一緒に居た。
「吃驚したよ、ランがカフェで頭抱えてるんだもん」
「悪いな、南ちゃんにトレーニング禁止にされちまってよ。お婆様に貰った物使おうと思ってもこの位しか出来なくて」
「あ~成程ね、あっそうだ紹介しなきゃね。今年からアタシの同室になったんだよ」
「こんにちわ!あたしはアイネスフウジン、宜しくなの!!」
「此方こそ、話には聞いてると思うけどランページだ」
そして隣にいたウマ娘が元気よく挨拶をして来た。彼女の名前はアイネスフウジン、20万近くの大観衆が詰め掛けた第57回東京優駿においてメジロライアンとハクタイセイと鎬を削り、その勝利を手にしたダービー馬。レースレコードでの逃げ切り勝利を決め、勝利騎手中野栄治へのナカノコールの一際有名なエピソードとなっている。
「今日は折角同室になってから予定があったから遊びに来てるんだ」
「へぇっ~んじゃ邪魔になったか」
「ううん、全然そんな事ないの。寧ろ、ライアンが何時も話してるランページちゃんと会えて嬉しいの!」
「ちょ、ちょっとアイネス!!」
顔を赤くしながらもアイネスを止めようとするライアン、また自分の事を話していたのか。一体何を話していたのか……と思いつつも漸く珈琲を口にした。久しぶりに飲むコーヒーだが、やはり口に合う。紅茶も好きだが珈琲も捨てがたい。そう思っていると何やら二人の視線が気になった。
「何ぞ二人、そんなに凝視して」
「いやさ……ランページちゃんって凄い男っぽい服着てるなぁって思って。凄い似合っててカッコいいの」
「ホントにそれ着こなしてるんだね……吃驚した」
如何して二人が吃驚しているのかと言えば、ランページが今着ているのはスーツだからである。流石に上は羽織っていないが、それでもグレーのシャツと合わせられたそれを確りと着こなしている。長身のせいか、キャリアウーマンにしか見えないのが素直な感想。
「まともな服がこれぐらいしかなかったもんでな。他のは如何にもヒラヒラし過ぎてて俺には合わない」
本格化に合わせてメジロ家から新しく服は貰えているのだが……どれも女性的過ぎて、男のヒトソウルが入っている自分としては着にくい。なのでまともな物で着慣れているスーツを着てきた。今までは袖などをまくって無理矢理サイズを合わせていたが成長した今ならサイズはぴったりだった。
「でも女の子っぽい服も似合うと思うの!」
「そうかい、でもスカートとかは性分じゃねぇし」
「あっそうだ!!ねえアイネス、ランの服を選んであげるっていうのは如何かな!?」
「それとってもいいアイデアなの!!」
「おいおい俺を着せ替え人形にする気かいお嬢さん方」
苦笑しつつも自分に合う服を見つけてあげようとしている気遣いが見えて素直に嬉しくなって、それを隠すように苦笑したつもりだったが……二人は笑みを強めた。
「良いから良いから!ランページちゃんスタイルいいから色んな服が似合う筈なの!!」
「うんうんうん!!アタシもそれ思ってた、もっと女の子っぽい奴も着てみよ!ねっ!!」
「ったく……はいはい、幾らでもお付き合い致しますよお嬢様方」
珈琲を飲み干してから立ち上がると、直ぐに二人に手を取られるがままに引っ張られていくのであった。だが、不思議と自分も二人の笑みに惹かれるように笑顔を作っていたのであった。
イメージ的にはポケモンのチリちゃんが着てた感じ。
チリちゃん良いですよね……後、初見でこの人女性かって分かったら他の人になんで彼女って言われる前にわかるの!?って凄い驚かれました。いや、分かるでしょ。普通に女性だよ。
そして、グルーシャも普通に男性かって言ったらドン引きされた。何でや!!