貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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メジロランページ―――いよいよ世界へ!!


190話

夢を見ている、そう言う自覚がある、偶にある感覚だがこの時ばかりは不思議と夢とは思えぬ感覚があった。空の上、雲海の上を走っている自分がいる。走れる訳もない大地を駆ける。正しく夢の世界、柔らかいのに確りと蹴れるという二面性、そこを走り続けている自分メジロランページ。何処まで走っても見えるのは雲の大地、自分の知っている世界ではない―――ただ一つを除いて。

 

「さっさと出て来な、何時まで俺を走らせるつもりだ」

 

その言葉に雲の一部を突き破って光を背負った影が見えた。後光を纏った姿は何処か神々しい。

 

『何時から分かっていた?』

「最初から。飽きて声掛けて来るのを待ってたのにこっちが折れちまった、んで何の用だ―――。」

『なんだお見通しだったのか……唯の応援だよ』

 

刹那、その光は自分の傍を駆け抜けていく。まるでついて来いと言わんばかりに、その行いに思わず口角を持ち上げながらも走り出していく。ウマ娘としてそんな行為をされたら追いかけない訳には行かない、逃げ切れるのならば逃げ切ってみるといい。

 

「何処の誰かが知らねぇが、やるねぇ!!」

『まだまだこの位で喜んで貰ったら困るな、お前はこれから世界と争う、俺程度で満足するな!!』

 

そう言うと、光は更に加速していく。同時に自分に呪縛を与えて行った。だがそれはワザとだと分かる、自分に本気を出させる為の行いだと……何とも生意気な行為だが、ある意味公平とも言える。ならば答えてやると言わんばかりに本気の領域に踏み込んだ―――

 

 

 

「ランちゃん、ランちゃん」

「―――ふぇ……?」

 

身体を揺さぶられた事で目が覚めた、瞼を起こすと真っ暗闇が広がっているのだが、隣に座っていたスーちゃんによってそれが開けられる。

 

「何時の間にかぐっすりだったわね」

「寝る気は、なかった筈なんだけどな……悪い、水貰える?」

「承知いたしましたお嬢様、只今お持ち致します」

 

乗務員が飲み物を取りに行く、今乗っているのはメジロ家が所有しているプライベートジェット。それに乗って自分は遂に世界へと飛び出す事になった、目指すはドバイワールドカップが開催される国、ドバイ。時差対策の為に現地で寝る為に飛行機で寝るつもりはなかったのだが……スーちゃん曰く1時間ぐらい寝ていたらしい。

 

「緊張しちゃってるのかしら、ランちゃんも緊張するのね」

「あのねスーちゃん、俺だって緊張は当たり前のようにするのよ。聖蹄祭じゃそりゃもう酷い緊張の中だったんだから」

「フフフッそれは失礼、でも楽しかったでしょ?」

「心臓止まるかと思ったわ、ハートブレイクだよ」

 

持って来て貰った水でのどを潤す、気付けばあと数十分でドバイに降り立ってしまう。そんな時間の最中に自分は眠っていたようだ、それにしても妙な夢だ……と自分で思うが一体あれは誰だったのだろう。

 

「どんな夢を見てたの?」

「さあ、俺が見てた夢は分からないけど―――これから俺は夢を見せる、こっからが始まりだぜ」

 

いよいよ降り立ったドバイの大地、ウマ娘としては初めての外国、ヒトソウル時代には海外出張やら行かされた事もあるのでその辺りの経験も使ってドバイの環境になれるように努力するとしよう。入国手続きや手荷物を回収してロビーへと出るとそこでは矢張りと言わんばかりの光景があった。大量のマスコミの登場である。

 

「あっ遂に来たぞ!!」

 

その言葉を皮切りに、自分を待ち受けていたと言わんばかりに取材陣が一気に迫って来るのだが―――それを遮るように黒服の一団が自分とスーちゃんとマスコミを切り離すように展開された。それに思わずファインのSPを彷彿させたのは当然の事だろう。

 

「ちょっ何だアンタら!?」

「取材を、是非お願いします!!」

『一言、せめて一言!!』

『調子如何なんですか!?』

 

どうやら日本だけではないらしい、様々な言語が飛び交っている。分かるだけで英語、フランス、ドイツ、イタリアだろうか……他にもドバイの現地と思われる者も居る。そんな者たちを屈強な黒服たちが動じる事も無く通さない。何とも頼もしい。

 

「正に肉の壁ね」

「スーちゃん、此処横浜じゃねえんだわ」

「それじゃあ芝浦?」

「風間組でもねぇわ」

 

本当にこの御大はネタのカバー範囲が広いというかなんというか……だからこそ話が合うのだが。そんな中、黒いスーツに身を包みながらもサングラスを装備した一人の男性が自分達に頭を下げて来た。

 

「メジロ、ランページ様とスピードシンボリ様、でスね?お待ちシてオリました」

 

発音が何処か不慣れなのか少し片言になってしまっているが、ちゃんとした日本語で語り掛けて来た。その男性はサングラスを外すと人のよさそうな笑みを浮かべながら頭を下げて来た。

 

「ボクはエリック・S・キャンベルと言います。お二人のBody guardをお願いされました」

「あれま、んじゃあんたが南ちゃんが手配した護衛って事なん?」

「Yes.宜しクお願いシマす」

 

素直に握手に応じるとフラッシュの光が黒服の隙間から漏れるように自分達を照らす。そんな彼にスーちゃんも手を差し出すとエリックは握り返す。

 

「黒人さんなのね、フフッ日本語御上手ね」

「有難ウ御座イます。ボク、南にお世話ニナッテ、何時カ、日本に住みタいと思っテ勉強中なんです」

「中々に上手だぜ、良い身体してるし気軽に話せて頼りになるって最高の護衛だな」

 

流石に自分一人では何かあった時に対応しきれないという事で纏まった人数を連れて来たとの事、元々いた仕事場の友人や今の職場から選抜されたメンバーとの事。勿論南坂の審査も入っているので問題はない。

 

「ソレでは、レース出場者の宿泊ホテルへトお連れしまスね」

「応頼むぜエリちゃん」

「エリちゃん……早速ランページさんからNicknameを貰えタね!!これは自慢出来ルね!!」

 

頼りになる護衛をリーダーにした黒服たちに警護されてそのまま車へと乗り込んでホテルへと向かうランページ、その一糸乱れる事のない統率の取れた動きにスーちゃんも感嘆の息を漏らした。

 

「これは頼りに出来るわよランちゃん、中々の手練れよ彼ら」

「それはそれで心強いんだけどさ……何やってる人ですかってすげぇ聞き辛い……」

 

軽くエリックの身体を叩いた時にその肉体に触れたが、まるで鉄でも叩いているかのような硬い筋肉の鎧に覆われていた。条件付きとはいえウマ娘にも一対一で勝てるというのも納得出来る。さてとならば自分はドバイのレースに向けての準備をしなければ――

 

「ホテルに着いたら何をするランちゃん?」

「そ~だな……時間もいい所だし飯食って寝るかな」

「あら、寝ちゃうの?」

「時差ボケ対策って奴だよ、現地の時間で寝るのが一番いいんだ」

 

此処から、自分の世界挑戦を始めよう。




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