ワールドカップの名を冠するレースを開催するドバイワールドカップミーティング、その中でも最後の大取を飾るのがランページが出走するドバイワールドカップ。その他にもレースが行われるがそのどれもがG1とG2だけで構成されている。そんな舞台で走るウマ娘を迎えるホテルは絢爛豪華、その一言に尽きる。超一流のホテルはメジロ家の豪邸よりも金が掛かっている、流石に比べる対象を間違えてると言われたらそこまでだが……。
「にしても流石はドバイ……富豪の国ってイメージは強ち間違ってなかったな」
タックス・ヘイブン。ドバイに富豪が多いのは税金が掛からないからとされている、それ故かこの高級ホテルの敷地内にはウマ娘用の芝ダートコースが当然のように完備されている。レース目的で招待したのだから当然と言えば当然かもしれないが……こんな国で自分は走るのかと思うと何とも言えない気分になって来る。
「……ああそうか、そう言う事か……」
胸の内に沸き上がって来た何とも言えない感情、この国に降り立った時から何となく感じていたそれの正体が漸く理解出来た。それは孤独感だ、これまで自分は生まれ故郷である日本でしか走った事がない、そしてホームである国の風土、人、文化があったが此処にはそれがない。そして周囲にいるウマ娘は当然のように海外の者ばかり、それで心が揺れている。シガーを取り出して咥える。
「寂しいねぇ……今更過ぎんだろ感じるの、孤独孤立孤高、上等じゃねえか。こちとらそういう風に生きてた時期もあったウマ娘だぜ、そう言うのには強いんだ。それに―――今の俺は一人じゃねえしな」
煙を吐き出しながらも決意を新たにする。今の自分は孤独なんかじゃない、心強い味方だって居るのだから。そう思いながらコースを眺めているとウマ娘がコースを走っているのが見えた。自分以外のドバイ入りしたウマ娘だろうかと視線を向けた。
「―――速いな」
一瞬で瞳の色が変わる。コースを走っている全員が速い、しかもダイナやセイバーとは別の強さを感じさせる走りをしている。彼女らだって自分の目から見ても世界で通用するとは思うが……世界にはそれと戦えるだけの強いウマ娘がいるというのも事実だったという事だ。
「ジッとしてるのは、性に合わねぇな」
シガーを消しながらも早速着替える事にした、トレーニング用のシンザン鉄も確りとバッグに収めると同室のスーちゃんに一言言ってから部屋を出る。
「俺ちょっち走って来るわスーちゃん、下のコースに居るから」
「我慢出来ないって所かしら、無理をし過ぎちゃ駄目よ。エリックさんには私の方から言っておくから」
許可を貰った所でエレベーターに乗り込む、世界のウマ娘と戦う……ジャパンカップでも感じたが如何にも身体が疼いてしまう。こんなにも自分は好戦的な性格だっただろうかと自問したくなる。だがそう感じるのだからしょうがない、走りたいのだ、自分は。そんな思いを抱きしめながらもレース場へと顔を出した―――瞬間に一斉にこちらに視線が向いた気がした。
「あれま、俺ってば有名ね」
その視線に動じる事も無く歩き出す。配信者としてもウマ娘としても破格的な知名度を誇るランページ、そんな彼女が調整の為に作られたコースに現れれば当然視線を集める。ドバイワールドカップミーティングの関係者、そしてそれに出走するウマ娘からも。
『―――日本の暴君か』
その言葉に思わず肩を竦めた。此処でもそんな風に呼ばれるか、まあランページなんて暴れ回るという意味の名前で王者として君臨すればそう呼ばれるのも必然ではあるのか、と勝手に納得しながらも振り返る。そこに居たのは美しい金髪を靡かせながらも何処かクールな印象を受けるウマ娘。
『まあそう呼ばれる事はあるな。其方さんは?』
『アルカンシェル、アメリカから来た』
その名前には聞き覚えがある、アンブライドルドとの会話で覚えがある。彼女曰く自分と似ているタイプのウマ娘、単純な二刀流だけではなく様々な距離にも適応する勇者の素質を持ったウマ娘、しかし酷い無口で何を考えているのか分からないとも言っていたような気がする。そんな彼女はそっと手を差し出してきた。
『……負けない』
『そりゃどうも。生憎俺も負ける為に此処には来てない』
手を握り返す、確かに口は少ないが言葉の一つ一つには熱が込められている。寡黙で近寄りがたいが、実際には静かに燃える熱血系と言った所だろうか。不思議とシンパシーを感じる、そんな最中に後ろから思いっ切り誰かが抱き着いて来た。
「ハァ~イジャパニーズタイラント!!」
「俺のニックネームタイラントで決定~?コート新調しねぇといけねぇじゃん」
「何それ~?」
と気付けば日本語で会話していた、振り向くと鮫の背びれ、首元に鮫顎の骨格標本というなんとも鮫々しい格好をしたウマ娘が腰にまで届く黒髪。前髪に緑のメッシュが所々入っている黒髪を靡かせているウマ娘を引き連れていた。
「会いたかったよ~私はバニッシュ・アウト!バニーって呼んでね♪」
「ウサギなのかサメなのかウマ娘なのか一つに絞れ」
「同感だ」
「バニーは愛称でサメは趣味なウマ娘なだけだよ~配信いつも見てるよ~」
どうやらリスナーらしい、そう言えばいつもスパチャを飛ばしてくれる中にシャークという名前があったがもしかして彼女なのだろうか……そして隣のウマ娘はギロリッという擬音が付きそうな程に鋭い瞳を此方へと投げ掛けて来る。
「メジロランページ……私はお前に勝つ、それだけを伝えに来た」
「俺が勝つ。俺はその言葉にはそう返すだけだ」
「レースで確かめさせて貰う、俺はヒューペリオン。お前に勝つウマ娘だ」
そう言い残すとヒューペリオンはコースへと入ると走り始めた、それに続くようにバニーも手を振りながらも追いかけて行った。仲がいいのだろうか……それともバニーが絡んでいるだけなのだろうか……何とも言えないが二人も二人でかなりの強敵なのだろう。
「世界にはいろんな奴がいるもんだな……なら俺も俺を見せるとするか―――何せ俺はランページだからな」
そう言いながらも、敢えてシンザン鉄を使わずに走り出していく。それを見て皆は何を思うのか、どう思うのか彼ら次第。既にランページにとってはこれからのレースが楽しみでしょうがなくなっていた。
不知火新夜様よりアルカンシェル、ムッシー様よりバニッシュ・アウト、琴葉あきゅぅ様よりヒューペリオン、を頂きました。有難う御座います!!
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