貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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197話

『さあ既に日本は丑三つ時、眠気も一段と激しくなる事でしょうが日本の盛り上がりは正しくここからでしょう。私達、日本にとってこれ程までに興奮する海外G1は数えられるほどしかありません、世界の頂点を決める凱旋門賞、アメリカ最強決定戦と言っても過言ではないブリーダーズカップ、そしてそこに新たに加えられる事になる事でしょうドバイワールドカップミーティング第9レース、ドバイワールドカップ!!唯一日本のウマ娘が出走登録を行っているレースであります、日本の悲願、海外G1勝利が遂に現れるのか!?それを迎え撃つのは海外の猛者達、さあ間もなくウマ娘達が姿を現します。先程まで空は快晴、星空が見えておりましたが、おっと少々曇り始めて来ました。これは波乱を思わせる、嵐が巻き起こすという神の言葉を思わせます』

 

日本でも放送されるドバイワールドカップ、実況でおなじみの赤坂の言葉にも異様に力が入っている。解説を担当するゲストもその力の入りように苦笑する。

 

『さあ此処までのドバイワールドカップミーティングの展開はいかがでした武さん』

『矢張り世界レベルの走り、というのを感じさせる物でしたね。ストライドからピッチの切り替えの滑らかさや駆け引き、どれをとっても超一流。世界の名を冠するこの舞台に相応しいウマ娘の走りと言わざるを得ませんでした。そして、そんな舞台に私達の代表が居る、誇らしい限りです』

『はい、私も極めて同感です。歴代最強と言っても過言ではないと言われている世代、昨今ではTTG世代や永世世代、ランページ世代、どれが凄いのかというのが話題になってるそうですよ。武さんとしては如何ですか?』

 

力が抜きんでているウマ娘が一人、というのは良くある話だが世代として纏めて取り上げられる事は少数。それこそシンボリルドルフやミスターシービーなどもそれだ、彼女らの激突で生まれる物語はある。だがそれらに匹敵するウマ娘達が同時に誕生するという事は中々ない。世代として取り上げられるのは一種の奇跡とも言われる程。

 

『そうですね、色々思う所はありますが―――私が一番嬉しいのは彼女たちの名前をまた、聞く事が出来る所ですね』

『聞く、ですか』

『レースの世界だけではありませんが、様々な世界では過去の名前というのは次第に聞く頻度、印象が薄れて行ってしまうという物です』

 

どんな世界でも過去の存在で何時までも存在感を放ち続けるのは難しい、それが出来るのは本当に一握り。それこそ史実で全盛期を更新し続けている武 豊などは競馬界の筆頭レジェンド。そんな彼でも嬉しく思う事は―――過去が今に繋がる瞬間だ。

 

『何かきっかけがないと過去に目を向けない、そんな切っ掛けに彼女はなっている。そしてそれを通じて過去が今に直結する』

 

それを聞いて赤坂は納得した。ランページの配信程レジェンドが頻繁に出て来る事などはない、テレビ局も彼女らにコンタクトを取って自分達の番組に出て欲しいと言っても彼女らは中々首を縦に振らない。だが、何故か彼女の配信には頻繁に出る、それは何故か―――

 

『多分、分かるんでしょう』

『分かるですか……』

『ええ。自分達の意志を、思いを継いでくれることが』

『思いを―――お、おっともっとお話をお聞きしたい所ですが間もなくウマ娘達の本バ場入場が始まります、武さんお話はあとでごゆっくりお願いします!!』

『はい、では集中しましょうか』

 

過去、日本を盛り上げたウマ娘達と交流を持ち、彼女らから様々な物を貰ったメジロランページが今、世界の舞台で走る。長らくウマ娘の世界に関わって来た自分もドキドキを抑えきれない。出来る事ならば、ドバイの現地でこの興奮を味わいたかった。

 

 

『一番乗りは―――ニュージーランドからやってきました白いイレギュラー アームドリンクス。純白の髪を靡かせながらの満面の笑顔での登場であります、しかし可愛らしい笑みとは裏腹にその走りは圧倒的、彼女のトレーナーをして、強者に強い理由などはいらない、強いから勝ったフィジカルエリートと言わしめる実力ウマ娘です』

「イエ~イ!イッチバ~ン!!」

 

 

「まっけないも~ん!!イエ~イ!!」

『おっと負けてはいれらないとやって来たのはアメリカ、バニッシュ・E(Eater)・アウト。此方も太陽のような笑顔を浮かべておりますが、サメの背びれに鮫顎の骨格標本とインパクトで言えばこのレースで一二を争う事でしょう』

『ウマ娘界のジョーズですね、追い込み型の走りで一気に喰らい付く走りは狩りを行うサメのようだと言われているそうです』

 

 

「勝つ、ただそれだけの事」

『次には来たのはイギリス代表、ヒューペリオン。短距離以外のレース全てに適性を持つという驚きのウマ娘。そして何よりも彼女は極めて冷静、その実力に裏付けされた自信に満ちた堂々とした登場です』

 

 

「親愛なる人族諸君……長らく待たせたな、いよいよゲームの始まりだ!!」

『お、おっと巨大なハンマーを担ぎながら入場したウマ娘がいるぞ!?ドイツからやって来たシュタールアルメコアだ!!おっと、あっ今トレーナーにハンマーを渡しました。如何やらパドックで何時も渡しているそうですが、今回は渡しそびれたそうです。しかし大胆不敵な登場です、彼女の自信の強さが見て取れます』

 

 

『そしてシュタールアルメコアの次に現れるのは―――此方もアメリカからの刺客、砂塵の蜃気楼 アイリーン!!如何やら彼女はもともと日本の出身だそうですね』

『ええ、ですが芝が合わなかったそうですがアメリカでダートに出会って完全に覚醒したそうです。驚異的な末脚とどんなバ群でも抜け出す様子から砂塵の蜃気楼、日本の砂塵の騎士と砂の超特急との対決にも期待です』

「さあ、注目を集めてみせよう、そしてその前でボクは消える……フフッ」

 

 

「さて……どんなレースになるか楽しみね」

「……」

「無口な事」

『おっと、此処でやって来たのはフランスとアメリカのウマ娘の二人。フランスはリスフルーヴ、ダートでは最早独壇場と言っても過言ではない程の強さの女傑のリスフルーヴ、このドバイの舞台ではどんな走りを見せてくるのでしょうか。アメリカはアルカンシェル、ダートだけではなく芝でも力を発揮しアメリカでは勇者とも呼ばれているそうです』

 

次々と紹介されていく海外ウマ娘達、全員が注意しなければならない相手。マークするにしても誰にするべきか分からなくなるレベルにはメンバーが充実している。そんなコースに遂に日本勢が出陣する。

 

「うぉっ凄い人だぁ……や、やったるぞぉ~!!!皆見てる~!!?」

「元気を出すのは良いですが、空回りだけは勘弁してくださいね」

『さあやって来たぞ我らが日本のウマ娘!!まずはフェブラリーSを制してこのドバイ行きの切符を手にした砂の超特急 アメイジングダイナ!!』

『フェブラリーSでの走りは見事ですね、敢えて大外を走って邪魔出来ない状況を作り出して自分の走りを最大限にまで活かした末の勝利でした。あの走りをこの舞台でも見られるのかに期待ですね』

『さあ続くは砂塵の騎士、レディセイバー!!東京大賞典を勝利して此処まで上がって来た騎士、その刃は世界に届くのか!!?』

『彼女の超前傾姿勢走法は正しく砂塵の騎士の切り札、それを何処で切るかにかかっていますね』

 

そんな二人は思わず振り返った、日本中が期待を寄せているように自分達もそれを抱いている。彼女と再び走れる事に強い喜びを抱いている。しかもこの舞台で―――さあ走ろう、競おう。

 

『さあお待たせしました日本の皆さん、前走は過去最高とも称された有記念を制しております。世代の頂点、日本の頂点を掴んだ無敗の神話。その神話はこの世界では通じるのか!!?日本海外遠征総大将、無敗の王者、メジロランページ!!!』

 

姿を現すとコートに手をかけ、一気にそれを翻す。堂々たる姿で呟いたその一言は、レース場を更なる大歓声を包み込んだ。

 

「待たせたな」

 

『凄まじい大歓声です!!日本の王者は今は世界中で大スターと言っても過言ではありません、日本中央トレセンのチーム・カノープス所属、担当トレーナーは南坂、今回は南坂トレーナーは残念ながらおりませんが、その代理が途轍もないウマ娘。何とあの凱旋門賞に挑戦したスピードシンボリがトレーナーとしてこのドバイに同行しております』

『頼もしい事この上ないでしょうね、スピードシンボリ氏との仲も良好でスーちゃんランちゃんと呼び合ってるらしいですね』

『わ、私達では到底真似出来ませんね、王者の貫禄が成せる業という奴でしょうか』

『いや彼女だからこそでしょう』

 

そしていよいよ行われるゲート入り、次々とゲートへと収まっていく中、最後にランページがゲートへと入る。

 

1枠1番 アームドリンクス

2枠2番 アイリーン

3枠3番 シュタールアルメコア

4枠4番 リスフルーヴ

5枠5番 バニッシュ・アウト

6枠6番 アルカンシェル

7枠7番 レディセイバー

7枠8番 ヒューペリオン

8枠9番 アメイジングダイナ

8枠10番 メジロランページ

 

ゲート入りが終了し、今か今かと始まりが告げられるのを待つ。そして―――空を稲光が走った時に

 

『さあドバイワールドカップ、いよいよ―――スタートしました!!』

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