貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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02話

メジロ家の主治医に見られている事から薄々メジロ家との関係があったのでは……とは思っていたがまさか本当にその通りになっているとは思いもしなかった。しかもその相手がライアンだったとは思いもしなかった。そもそも自分とライアンはどんな関係だったのだろうか、此処までライアンが自分の無事を喜んでくれている……という事は自分は友人という事で良いのだろうか、それとも自分はトレセン学園の生徒なのだろうか。

 

「お嬢様、その辺りに」

「だって、だって……!!主治医が、もう起きないかもしれない事を覚悟してくださいなんていうから……!!」

「それについてはご不安を煽ってしまったことをお詫びいたします、ですが医師として不確かな事をお伝えする訳には行きませんでしたので」

「うぅぅ……!!」

 

言葉の節々から伝わってくる自分が目覚めた事への驚きと不安、自分は脳死状態にでもなっていたのだろうか……とさえ思わせる。分かっているつもりだが、もう目覚めないかもしれないと言われて本当に不安を感じたのだろう、抗議をするかのように抱き着いてくる力が少しずつ増してきている。

 

「え、えっと……兎に角ライアン……起きてるから、その大丈夫……ですよね」

 

と視線を投げかけると頷かれた。兎に角状況を説明して欲しい、どうして彼女が此処まで取乱しているのかを知りたい。

 

「まず、どうして私が主治医となったのかという所ですが……ライアンお嬢様が第一発見者であるからです、お嬢様が如何しても助けて欲しいと私にご連絡をくださったのです」

「ライアンが……?」

「だって、だって……」

 

思わず視線を向けられたライアンは震えていた、だがそれは恐怖からなる物だった。必然的にその恐怖を与えてしまった自分は一体どんな状態だったのだろうか……と思わざるをえない。

 

「ライアン、俺は一体君に何を見せてしまったんだ……?」

 

その言葉に思わず、彼女は身体を大きくビクつかせた。自分の身体に顔を埋めるようにしながらまるで拒否するかのようにするライアン、だがそれでも知りたい、それこそが今自分が此処に居るヒントになるかもしれないと思った。無言を貫いていると、根負けしたかのようにライアンは漸く離れて椅子に座るが、それでも拳を握りしめながらも言い出せなさそうにしている。

 

「……落ち着いて、聞いてくれる。それが絶対の条件」

「聞くよ、ライアンの話だから」

「……ランらしいや」

 

少しだけ、笑った。ランというのが自分の名前なのだろうか、と思ってると直ぐにライアンは語り出した。

 

「私はね、ランの忘れ物を届けに行こうと思ってランのアパートに行ったんだよ。でも幾ら呼び鈴を鳴らしても出てこないし携帯に掛けても出ないから、如何しようって思ってドアノブ回したら、開いちゃってさ……それで、不用心だと思って中を少しだけ見たら……見たら―――ランが首を吊ってたんだ」

「―――っ……!!」

 

そう言われた瞬間に一気に記憶のフラッシュバックが巻き起こった。如何してそうしたのか、その経緯やそこに至るまでの事が一気に脳裏を駆け巡っていく……両親を亡くしたランこと、ランページ。自分は親戚の夫婦に引き取られたのだが……その叔父と叔母が親の遺産を持って高飛び、残された自分は必死にバイトなどをして生活費を稼いでいたのだが……ある時、限界がきて自殺を図った―――らしい。

 

「あ~……頭いてぇ」

「だ、大丈夫!?気分悪くなったの!!?」

「いや、色々と思い出してきただけだから……そっかぁ……ごめん、いやなもん見せたよね」

 

友人の首吊りなんてショッキングなシーンを見たら震えるのも当然、天下のメジロ家の御令嬢にそんな所を見せたなんて色んな意味で大問題。だが同時に今の自分の事についての理解度も高まって来た、ランページというウマ娘の記憶が蘇ってきたが、それらを何処か俯瞰した、というよりも客観的に観ている自分が居る。そこにあったであろう感情などを一切感じない、映画のワンシーンでも見ているような気分だ。

 

つまり今此処に居る自分という存在は、社会人として働いていた人間が自殺をしようとしたウマ娘に憑依して、それらが統合された状態なのだろう。比率的には人が7でウマ娘が3、それで生まれたのが今の自分(ランページ)という人格……だと思われる。

 

「い、嫌な物なんて……」

「いやぁだってさ、多分だけど遺書もあっただろうし読んだでしょ?」

「……うん、私向けの遺書があって、その……読んだ」

 

まだ完全に記憶を整理できたわけではないが……自分はライアンとはかなり親しかったらしい。というよりも、様々な意味で辛い日々を過ごしていた中でライアンとの一時は本当に救いになっていたらしい。ならばその友人に向けた何かはきっとあると思った、きっと感謝を綴ったのだろう、そして謝ったのだろう。

 

「ライアン、それじゃあさ代わりにちょっと大事なカミングアウトさせて貰ってもいい?」

「えっ?ああうん、どうぞ……でいいのかな」

「私は席を外しましょうか」

「出来れば主治医さんも聞いてくれると有難いですね」

「承知しました」

「俺さ―――きっとライアンの知ってる俺じゃない」

「えっ……?」

 

ライアンには酷な話の連続になるかもしれない、だがこれが正しいのだと思って話を切り出す。

 

「―――つまりさ、俺はライアンの知ってるランページではないって事。荒唐無稽な話かもしれないけどさ」

「確かに、私の知ってるランは俺なんて使わないしもっとおどおどしてたっていうか……暗かった感じだった」

「生憎と専門外ですが興味深いお話ですね」

 

驚きだったのはこの話をライアンと主治医は確りと聞いてくれた事だった、バカにする訳でも無く真剣に耳を傾けてくれていた。そして一定の理解を示してくれた事が何よりの驚きだった。そして最も驚いたのは……

 

「でも、ランはランだよ。さっきだって即答してたでしょ、私の話なら内容を聞くよりも先にYESって答えちゃうところ……うん、寧ろそれが本当のランなのかもしれないよ?本当のランは男勝りな所がある元気っ子!!それでいいじゃん」

「―――……いうのもなんだけど、そう簡単に受け入れちゃっていいの?」

「うん。だって友達なのは変わらないから」

 

呆気らかんと言い切るライアンの潔さと明快な答えに思わず呆然としてしまった、だがそれが今は酷く有難く思えてしまった。拒絶されてしまったらどうしようかという不安も何処かにあったのだ。しかし、そんな不安なんていらなかったと言わんばかりに受け入れてくれた彼女の対応に思わず嬉しさが込み上げて来てしまった。

 

「ねぇラン―――もう、死ぬとか考えないでね?」

「老衰するまで生きるよ」

「約束」

「うん約束」

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