貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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201話

「お~お~随分と集まってんなぁ……」

 

昼下がり、入学式も近かった事もあって授業は早めに終わった事もあってそんな時間からカノープスの入部テストが行われる事になった訳なのだが……コースに集まったウマ娘の生徒はかなり多い。以前、リギルの入部テストの様子を覗き込んだ事があったが、それ以上の人数が集まっている気がするのは気のせいだろうか。これも自分のせいかと思うと何とも言えない物が込み上げてくる。

 

「ひいふうみい……ざっと数えても40人超えてない?リギルでもこんな集まらないっしょ」

「凄いクラス越えてる!!」

 

ネイチャのざっと換算でもその位らしく、それに一クラス当たりの人数を越えている事にターボは喜びの声を上げる。これだけの人数がカノープス志望とは……直近でランページがドバイワールドカップを制しているだけあって凄い事だ。

 

「良い事です、またうちのチームが賑やかになりますね」

「どんな子が来るのかな~!?」

 

既に賑やかなチームが更に賑やかになる事になるのだが……まあ賑やかなのは良い事かとイクノの意見に同調する。タンホイザの意見にも分かる、見るだけでも多くのタイプのウマ娘がいるしどんな風になるのか楽しみでしかない。

 

「うぅぅぅぅっ~アタシにも後輩が出来るんだぁ!!」

「良かったねチケットさん」

 

何だかんだでチケットの意見には最も共感できるかもしれない、ライスも同意している通りに初めての後輩というのはワクワクする物だ。

 

「ね、ねえあの人が、ランページ先輩、よね……!?」

「ド、ドバイから帰って来たばっかりの筈なのよね……!?」

「サインとか、貰っちゃ駄目なのかな?」

 

「モテモテですなぁ」

「茶化すなよネイチャ」

 

矢張りというべきか、自分を見つめる視線がかなり多い。史上初の海外G1制覇をやってしまったからそりゃこうなるか、とも思う。これは明日からも大変な事になるんだろうなぁ……と思っているとそんな南坂がそろそろいいですかね、と声を上げる。

 

「それでは皆さん、本日はお集まり頂きまして有難う御座います。私がカノープスのトレーナーを務めさせて頂いております南坂です、本日は宜しくお願い致します」

『宜しくお願いします!!』

 

南ちゃんらしい丁寧さだなぁ……と思っていると視線を此方に向けられた、その意図を察する。

 

「これからカノープスの入部テストを行いたいと思います、入部というだけに囚われずに自分の実力を見極め、これからに繋げるように考えて頂けるとトレーナー冥利に尽きます。それでは始める前に……折角ですからこの方に挨拶をして貰いましょうか、ランページさんお願いします」

「あいよ~」

 

皆の前へと出ると一気にざわざわと賑やかになっていく、そしてきっと望まれているであろうことをする。

 

「おはこんハロチャオ~!!貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、無敗のティアラ、この想いは止められない♡なランページだぜい!皆の者~善行積んでたか~?」

『キャアアア!!』

 

やっぱり望まれていた、生の挨拶を聞けて発狂一歩寸前の希望者たちに良い反応をするなぁと思いつつも発狂者とかでないよな……と若干不安になり始めた。

 

「という訳で、今日ドバイから帰国したメジロランページだぞ~いやぁドバイだと暴君呼びがデフォだったぜハッハッハ~まあそれは置いといて、カノープスの入部テストにようこそ諸君。最初に言っておくと此処のトレーナーの南ちゃんはこんなお綺麗な面した優男だけど練習となったら割と容赦ないからそこの所は覚悟しとけよ~何せ、俺を鍛え上げたトレーナーなんだからな」

 

それを聞いて全員の顔が引き締まり、緊張した面持ちを作り出し、つばを飲み込んだりする。ランページという圧倒的な光に惹かれた虫のように此処にやって来たが、そうだ、此処のトレーナーはそのランページを鍛え上げたトレーナーのいるチームなのだ……生半可な気持ちで入る事も続ける事もきっと出来ない筈だ……。それを見て南坂は目論見通り……と笑いながらタブレットを取り出す。

 

「それでは、これから入部テストの説明をさせていただきます。皆さん学年も違えば得意な距離なども違います、事前に記入用紙に希望距離を記入して提出して頂きましたがそれらを参考にしつつテストを行います。それではまずは―――1000m、短距離コースから始めます」

 

それを聞いて希望者する者はコースに残り、それ以外はコースから離れていく。それを見つつ南坂の持っているタブレットに目を落とすと入部テスト用の物とは思えぬ程にテストに参加するウマ娘のコース別の資料が作られていた。短距離レースに出る者にも当然。

 

「相変わらずお優しいこった……」

「トレーナーは導く者ですから」

「気づかせる者、でもあると思うぜ。アンタみたいに優しい奴ばっかじゃねえんだ」

 

トレーナーの特色は正しく十人十色、東条のような管理主義もいれば沖野のような自由主義もいる、黒沼のようなスパルタ主義もいる。それでも三人に共通しているのは心からウマ娘の事を考えてその未来を案じている事だ、だが中には自分の出世欲などを満たす為という考えを持つ者も居ない訳ではない。導くのも重要な仕事だ、だが必要な時には気付かせ、別の道を歩ませるのもトレーナーの役目。

 

「ですから、私みたいな優しくて別のキャリアに進みやすいトレーナーが居てもいいでしょう?」

「ったく……敵わねぇなアンタには」

 

ウマ娘とは走るものだ、そんな彼女らを支えるのがトレーナーだ、唯支えるだけはない。導き、気付かせる者だ。その意味合いは様々あれど……矢張り自分にとって最良且つ最高のトレーナーは南坂を置いて他に居ない事が改めて分かる。

 

「んじゃまあ、折角だから俺がスタートの合図出すわ。それではカノープスの入部テスト、短距離第1レース、位置について……ヨ~イ……ドンッ!!!」

 

開始された入部テスト、今年入学したばかりの子達のレースが始まる。入部した子達にとって1000mは少し長めに入るかもしれない、それでもこのトレセン学園に入って来たのならば問題はない。入部者を選定するだけではなく、その後にも繋げられるように南坂が配慮している。此処だけが全てじゃない。そんなやさしさの詰まったカノープスの入部テストが始まった。

 

「ハァァァァッ!!私は、あの人のようになる為に、此処に来たんだ!!!」

 

「先輩みたいな、立派でカッコいいウマ娘に、なるんだぁぁぁ!!!」

 

「ハッハァッ!!タイマン上等、自分とのタイマン勝負、開始だぁぁぁぁ!!」

 

「私は此処で走ってみたい、だから、頑張るぅ!!」

 

様々な思いが交錯するターフの上、レース故それが当然の事。そんな選定で入部が決定したウマ娘達、惜しくも逃したウマ娘、実力を知ったウマ娘、だが全員が笑顔だった。何故ならば―――

 

「皆様お疲れ様でした。レースの内容についてのデータは後日、皆さんに届くように手配させて頂きます。そしてこれからは定期的にカノープス主催でレースを行いますので是非ご参加ください」

「えっ!?だ、だってカノープスってリギルやスピカと同じ強豪チームですよね!?」

「そ、そんなチームが常にメンバー募集状態になっちゃうって事じゃ……」

「正確に言えば、カノープスが主催する選抜レースです。自分の実力を測る、スカウトを受ける為、カノープスメンバーに会いに来る、そんな目的で遊びに来てください」

 

カノープスは賑やかなチーム、それを上手く利用してウマ娘達のモチベーションを上げた。チャンスはまだまだある、月一で行われる選抜レースとは別にそんなレースがあれば可能性はもっと広がるしトレーナーとの出会いの場にもなる。理事長もこれには笑顔でOKサインを出したとか。その分、南坂の負担も増える筈だが……。

 

「その辺りは他のトレーナーさんもお手伝い頂きますので大丈夫ですよ」

 

と余裕の表情だった。そしていよいよ入部テスト合格者発表に移るのであった。

 

「ではまず―――新入生、エアグルーヴさん」

「はっはい!!」

 

未来の女帝、ランページに憧れたその子がカノープスの門を叩き、見事にその枠を勝ち取った。

 

「ドラグーンランスさん」

「はい!!」

 

ランページと友達の付き合いをし、彼女を目標にするウマ娘。彼女も強いライバルに負けずに此処まで駆け上がった。

 

「ヒシアマゾンさん」

「あいよ!!」

 

男勝りで力強く、己とのタイマン勝負で過去を常に乗り越え続けることを目標するある意味で最強を目指すウマ娘、ヒシアマゾン。

 

「サクラローレルさん」

「はい!」

 

明るく前向き、自分を信じて突き進む。桜の花びらが似合うサクラローレル。この4人が新しくカノープスに入る事になった。

 

「それでは皆さん、本日はお疲れ様でした。また、このレースに来てくださいね」

『はい!!有難う御座いました!!』

 

季節は春、出会いの季節に相応しい始まりとなった。

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