貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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203話

後輩という存在が出来てもカノープスの日々というのは変化しない。カノープスは色んな意味で安定したチームなのだ、それは良い意味でも悪い意味でも。主に悪い意味というのは騒がしいという事になるのだが……生憎、ターボもチケットも騒がしいのは相変わらずだった。傍から見ればカノープスはリギルとスピカと同格の強豪チーム、この二つで言えば矢張りリギルのイメージが強いのかカノープスもきっと厳しいチームなんだろうと……思う者も居るのだが実際はそんな事はない。

 

「よ~しチケット、ターボとダービーの2400で勝負だ!!」

「負けませんよ~!!」

「駄目ですよ、ターボさんまだデビュー前のチケットさんに無茶させては」

「「えっ~!!?」」

「ここは、ジュニアクラスのG1、2000mにしましょう」

「「やる~!!」」

「ネイチャさん、ゴールお願いしますね」

「はいほ~い」

 

緩い、色んな意味でカノープスは緩いのだ。トレーナーである南坂は基本的に笑みを浮かべ続けている好青年で言葉遣いも懇切丁寧で優しい、それで居ながらも常に全体を見渡して指導の手を緩めず、それで居ながらも適宜調整などを行っていく。緩くはあるが決して楽ではないのがカノープスである。

 

「おやっ……ランページさん、私のシンザン鉄何処にあるか知りませんか?」

「何言ってんだ、今日から新しいのに変わるんだからなくて当然だ。ほれっアップデート」

「そうでした。まだまだ貴方に追い付けませんね」

「簡単に追いつかれてたまるか」

 

そう言いながらもイクノは新しいシンザン鉄を装着する、ランページを除けば彼女が現状最も重いシンザン鉄を装着している。今日で8倍、後僅かで本来のシンザン鉄を付けられるようになる……そうなったら逃げ切れるかなぁ……と少しばかり心配するランページだが、颯爽と走り出していく彼女を見送ると走り込みから戻って来た後輩たちが戻って来た。

 

「お姉様、ただいま~」

「ただいま帰りましたっ!!」

「応お帰り」

 

駆け寄って来たのはライスとタンホイザ、皐月賞も近いだけあって二人も気合が入っている。そんな二人の後ろには息が切れている新入部員の4人が居た、南坂から走り込みに同伴させるように指示を受けたらしいのだが……カノープスでも生粋のステイヤー二人の走り込みに付けるとは、相変わらずお優しい顔をしてやることがエグいトレーナーだ。

 

「ほれ、二人は南ちゃんから新しい指示受けて来な。皐月賞、ブルボンに勝つ為のメニューをな」

「うんっ頑張るねお姉様」

「私も頑張ります~!!」

 

ウキウキ気分でスキップするように跳ねていくタンホイザと明確な目標がある為か、気持ちが昂っているライスは一緒に南坂の元へと向かって行く。そして、荒い息を吐き続けている4人へと目を向けながらもクーラーボックスをその前へと置いてやる。

 

「お疲れさん、息整えてから飲めよ?」

「あ、有難う、ございましゅ……」

「無理に返事すんなドララン」

 

あの様子では二人も一応は加減はしているとは思うが、それでも皐月前のウォームアップなのだからそれなりの距離だった筈。ドラランの憔悴っぷりからもそれは伺える。

 

「な、中々に、来るねぇ……」

「フゥッ……時折、急にペースを上げて下げてを繰り返したりもしましたものね……」

 

長距離にも適性があるローレルはそこまでではないが、流石のアマゾンもお疲れ気味だ。そして一番疲れているのは……完全にへたり込んで荒い息を吐き続けているエアグルーヴだろう。

 

「大丈夫かい、流石にキツかったろ」

「だ、だいじょう、大丈夫……です、まだ行けまっ……」

「無理するな。辛いなら辛いで良いんだ」

 

憧れの人の言葉を受けて無理に立とうとするのを抑えながらその頭に冷たいドリンクを当てて冷やしてやる。二重の意味での頭を冷やせ、というのは直ぐに伝わったのかエアグルーヴはそれを受けて大人しく息を整える事に集中し始めた。

 

「良い根性したよアンタ、最後まで付いて来れるんだから」

「途中で何度もライスさんが休憩入れる?って聞いたのに大丈夫って頑張ってましたもんね」

 

新入生でそこまでやれるのは本当に凄いと思う、流石は未来の女帝だ。

 

「私は、ただ、この位やらないと……ランページさんみたいになれないと思っただけです……」

「言ってくれるねぇ……その意気込みは買うけどな。あんまり無理はすんなよ、特に新入生で無理をし過ぎたら却って毒だ。まずは一歩一歩、自分の身体を作ってから頑張ればいいんだ」

「はい……!」

 

自分の言葉を受けて彼女は瞳を輝かせた、矢張り憧れの人からの言葉は素直に聞くんだねぇと茶化すようにアマゾンが言うとエアグルーヴは顔をそっぽを向いてちびちびと冷たいドリンクを飲み始めるのであった。

 

「一休みしたら、ドラランにアマさんにローレルは3人で模擬レースだ。南ちゃんがそれぞれの資質を見極めるってよ」

「マジですか!?距離は!!」

「2000mだ、皐月も近いしそれも関係あんのかねぇ」

 

ティアラ路線志望の彼女達からすれば皐月とは関係ないが、秋華賞はその距離なのでそう思っておこうと勝手に思うのであった。指示を受ける為に早々に立ち上がる。

 

「よぉ~し頑張る!!先輩も見てくれますよね?」

「見物させて貰うよ、そうだな……頑張ったら夕飯を御馳走してやるよ」

「先輩と食事、これは気合入るね!!よぉ~しタイマンだぁ!!」

「フフフッさっきまで疲れたのにもう元気、かくいう私も元気いっぱいですから負けませんよ」

 

傍から見れば余裕たっぷりそうなローレルの有利かな、と思いながらも情熱を燃やして己との勝負というタイマンに燃えるアマゾンも負けない、そして自分の友人のドラランも中々にハイテンション。これはこれで模擬レースながらも見逃せない戦いになりそう、と思っているとエアグルーヴが此方をチラ見して来ていた。

 

「あ、あの……その……」

「分かってるよ、頑張ってライスとタンホイザに付いて行ったもんな。連れて行ってやるよ」

 

自分の気持ちを察してくれていた事に喜ぶように跳ねあがる尻尾と耳、そして満開の花のように咲き乱れる笑顔。伊達にお姉様とは言われていない、年下の気持ちを察する事は出来るのである。

 

「さてと、一緒に見るか」

「はいっ!!」

 

手を差し出すと、一瞬躊躇しながらも思い切って握って来る小さな手を握り返しながら三人の模擬レースへと向かって行く。

 

「そう言えば、スピカには誰か入ってるんかね~」

「アマゾンさんとランスさんが、ローマンさんとブリザードさんという方が入ったと言ってました」

「ローマンとブリザード……あ~オグリさんの妹さんか(んで、確かブリザードは冠がタイキだったかな……マル外かまでは覚えてねぇけど)」

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