貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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210話

いよいよやって来る天皇賞(春)。最も長いG1レースとしては3200、クラシックからシニアに上がってきたばかりのウマ娘としては未知の領域。だがそれでもこれまでに積み重ねて来た鍛錬と準備、それらを信じて前へと進むだけ。そんな舞台での最有力候補は連覇を狙う前年度覇者のマックイーン。ステイヤーとしては国内では無敵と言っても過言ではない彼女はどんな走りをするのかと期待が積み上がっていく中、とある公園の前にとあるウマ娘が待機していた。

 

「なぁっ本当なんだろうな!?」

「君もしつこいねぇ……信じられないなら勝手に行けばいいじゃないか」

「だ、だけどよぉ……もしも本当だったら逃す手はねぇじゃねえか!?」

「同意します、けれども……タキオンさんの言葉だからいまいち信憑性に欠けるというのも何とも言えないのも事実です」

「御挨拶だねぇ、だから信頼できないならそれまでで勝手に行けばいいと言ってるじゃないか」

 

待っているのはタキオン、そしてそんな彼女の言葉に信頼があるようでないのか疑いの視線を外せない二人のウマ娘がいた。それは同級生のジャングルポケットとマンハッタンカフェであった。

 

ジャングルポケット、史実でもタキオンの同期。皐月賞ではタキオンに3着に敗れてしまった、だが最大のライバルでもあったタキオンが故障離脱、朝日杯3歳Sのメジロベイリーも長期の療養、それによって最大のライバルはNHKマイルカップを制したクロフネだった。この年はマル外解放元年、外国生まれの競走馬もクラシック戦線に参加できるようになった記念すべき年。海外から来た黒船が未知の偉業をなすのか?日本馬が意地を見せるのか?そんな状況にあった、そして―――そのダービーを制したのはジャングルポケット。直後ウイニングランにて、ジャングルポケットは走りながら大きく嘶いた、自らの勝利を誇るようにも見えた嘶きは日本の意地を見せた咆哮となった。

 

マンハッタンカフェ、ポッケと同じくタキオンの同期。初勝利を挙げてからの3戦目、弥生賞には馬体重を20kg減らした状態で挑むがタキオンに敗れて4着。そしてアザレア賞ではそこからさらに16kgも落ちていた。原因は輸送に弱かった上に心身と爪に弱さがあったからとされる、この大減量もあってダービーを断念し放牧、なんと次走では46㎏も増え、元の体重を取り戻し1番人気としてその人気に応えた。そして菊花賞を制し、そこからなんと有馬記念、春の天皇賞を制した。菊花賞、3歳時の有馬記念、4歳時の天皇賞(春)という記録は皇帝たるルドルフ以来という歴史的な快挙でこの条件を満たしたのは未だ、カフェとルドルフだけ。

 

ジャングルポケット、アグネスタキオン、マンハッタンカフェ。クラシックの一冠をそれぞれ取っているので、JAMと呼ぶファンもいる。そんな三人は公園で待っているとそこへ車が止まる、青のインプレッサの姿を見て話通りの約束通りだねぇと笑いながら言うタキオンの言葉にポッケは耳を向け、カフェは期待に胸を膨らませているのか尻尾が大きく揺れている。そして、運転席から出て来た人物を見てタキオンは声を上げた。

 

「やぁやぁやぁ待っていたよ、しかしまさか貴方自らが本当に迎えに来てくれるとは言ってみる物だねぇ。いやぁ友人というのは想像以上に良い物だねぇ」

「厭味ったらしい言い方しやがって……ダチを便利屋みてぇに考えるんじゃねぇよ」

「貴方ほどのウマ娘を便利屋なんて畏れ多い……対等の友人だと思いたいだけさ!」

「口が減らないなぁ……まあフローラの奴に比べたらマシだから良いけどよ、ンでそっちの御二人が友人か?」

 

サングラスを指で上げて自分の目で二人を見る、タキオンと同じ位の背丈の幼いウマ娘二人が此方を見ている。一方はヤンチャ盛りで男勝りで自分っぽく思う一方で隣のウマ娘は興奮を抑えようと努力するのだが気持ちが尻尾や耳に現れてしまっている―――がそれ以上に目を引くのがあった。彼女の背後辺りに見える歪……というか影のような物がある。少女、カフェにかなり似ている。

 

「あ、あっあの!!マジで、マジであの無敗のメジロランページさんですか!?」

「おはこんハロチャオ~♪独裁暴君でおなじみなランページさんだぜ、後大声はNGな。騒ぎになっちまう」

「はぅっ!?本物だぁ……!!」

 

ウィンク付きでの生おはこんハロチャオを見れて感激するポッケ、必死に声を抑えようと口を塞ぐがそれでも声がハッキリと聞き取れる程には声がでかい。

 

「という訳で、私の同級生のジャングルポケットとマンハッタンカフェだよ」

「あれ、お姉さん来るとか言ってなかったか?」

「断られたよ、自分の友達と行くと言っていたよ。やれやれ遠慮など必要ないのにねぇ」

「お前が言うセリフではねぇよ」

 

と言いつつも、タキオンは姉が気を遣ってくれている事は分かっている。内心ではランページと会ってみたかったりサインを欲しかったと思っていたのを抑えつけながら断腸の思いで遠慮した事を分かっている。

 

「まあ折角だからフライト姉さん宛てのサインをお願い出来るかな、きっと喜んでくれると思う」

「その位だったらお安い御用だ、んじゃ行くか」

「それじゃあ私が―――カフェ何時の間に乗り込んだんだい!?」

「助手席確保しやがった!?」

「駄目でしたか?」

「俺は別にいいけどな」

 

取り敢えず運転席に座るのだがタキオンとポッケは乗ってこない。

 

「あっタキオンお前、俺がランページさんの後ろだ!!」

「何だいその位、如何でも良くないかい?」

「良くねぇよ!!あの人の後ろだぞ!!俺だ!!」

「それなら私がいたからこういう機会に巡り合えたのだからその権利は此方にあると思わないかい?」

「何やってんだか……」

 

助手席の取り合いならまだ分からなくもないのだが……まあある意味子供として見たら健全なやり取りかと思う。そんな時に助手席のカフェは此方をジッと見て来る。それも気になるが、それ以上にカフェの後ろにいる影のようなウマ娘の存在が気になってしょうがない……。

 

「(あれが『お友達』って奴か……マジでカフェに似てるな、マジでサンデーサイレンスなんじゃ……)」

「あれ、一つ聞いても宜しいですか?」

「んっああ、なんだ」

「ランページさんは……私のお友達が、見えているんですよね?」

「そのお友達っていうのが外の二人じゃねぇって意味合いならYESだな。なんか超見える、めっちゃ笑ってね?」

「嬉しそうに、してます」

「うん、なんか俺の肩叩いてますよねこれ。すげぇバンバンと」

「はいバンバンと」

 

カフェ曰く、お友達はランページが自分の存在を認知している事が分かると嬉しそうにしながら肩を叩いているらしい。鞭を入れるが如く、叩かれている方を見ても何も無い筈なのに衝撃がある。なんて怪奇現象だ……やっぱりアプリトレは化物だな。

 

「私以外に、お友達が見えると言ってくれたのは貴方が初めてです……」

「まあ簡単に見えるようには見えねぇしな……後好い加減に肩叩くのやめさせてくんね?」

「その辺りに……」

 

カフェが一言掛けると衝撃は無くなった、そして今度は摩るような感触に変わった。心なしか悪かったな、という笑いを浮かべた表情をしているように見える。

 

「喜んでいます、私も嬉しいです……改めて、宜しくお願いします」

「応。お友達さんも宜しくな」

 

すると背中にバシィン!!という音が走った、力強いビンタをされたらしい。ニュアンス的には応よ!!という気持ちを込めた一撃なのだろう、肉体的な痛みならば我慢は余裕なので顔にも出さないでいるとお友達は面白そうなものを見つけたと言わんばかりの表情をする。

 

「やれやれ、結局変わらぬならする必要性がなかったじゃないか」

「くっそぉっ……!!」

 

漸く乗り込んできた二人、如何やら最終的な決着はじゃんけんで決めたようだが結局自分の後ろはタキオンになったらしい。ポッケは酷く悔しそうにしている。

 

「さてかなり時間を無駄にしてしまった、早く行こうじゃないか」

「お前が言うなお前が、にしてもよく親御さんも許してくれたもんだ」

「ランページさんのお陰っす!!ランページさんなら安心、というか寧ろ自分達が行きたいって言ってたっす!!」

「私も……」

「ハハッそうかそうか、んじゃまあ出発すっか」

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