兎も角、名馬のご冥福をお祈りいたします。
「お待ちしておりましたランページお嬢様、長らくの旅路お疲れ様でした」
「誰が出迎えてくれるかと思ったらまさかの爺やさんじゃねえか、アンタ本家の仕事如何したのよ」
「何を仰います、此度のレースはメジロ家の悲願の天皇賞。その為にお嬢様の為に尽くすのが私の役目に御座います」
「言われてみたら納得だったわ」
順調だった京都への旅路、途中高速道路の中では音楽を掛けて突発的なライブ状態が起きて大盛り上がりだった。そんな事もありながら到着した今回の戦場となる京都、メジロの悲願を達成する場。そんな京都で過ごすのはメジロ家所有のホテル、タキオンはそこまで驚いてはいないがポッケとカフェは想像以上の巨大なホテルに呆然としてしまっている。
「此方がホテルの支配人になります」
「支配人です」
「宜しく頼んます、早速で悪いけど俺達の部屋に行けるかい?荷物置きてぇ」
「畏まりました。荷物については此方でお運びさせて頂きます」
ホテルの支配人が直々に選抜したメンバーの相手を受けつつも部屋へと案内される。当然通された部屋が最高級のVIPルーム、映画でしか見た事がないような豪華な内装と最上階に設けられただけあって素晴らしい眺めが楽しめる部屋に思わずランページは口笛を鳴らす。
「御用がありましたらお気軽にお声掛けください」
「それではお嬢様、私はマックイーンお嬢様達の方へと行ってまいります」
「ああ分かった」
そうして部屋には宿泊するメンバーのみが残されたわけなのだが……目を白黒させて続けているポッケとカフェとは対照的にタキオンは窓の前の椅子に腰を落ち着けながらも途中で買って貰ったニンジンワインを夕暮れの景色を肴にしながら楽しみ始めた。
「ホゥ……景色だけで此処までドリンクの味というのは変わる物なのだね、知らなかったよ」
「何浸ってやがるんだ小娘、そんな歳でもねぇだろ」
「形だけでも変わるという物なのさ」
自らも荷物を置きながらも景色を眺める、間もなく夜の帳が下りる京都の町は美しい。
「ほれ、お前らも何時まで突っ立ってんだ。正気に戻れ」
「ハッ!?いや、だってマジでこんな部屋に、泊っちまっていいのかなぁ……?」
「え、ええ……流石にこれは……」
「良いんだよ別に、メジロ家の御令嬢である俺がお客様として招待した方々と泊まるんだぜ?」
普通に考えたら宿泊料金などはとんでもない値段などになるだろうが、それらは気にする必要などはないのだ。兎も角子供は妙な事を考える必要などはなく甘えていいのである。
「しかし、貴方ほど御令嬢という言葉が似合わない令嬢もいないだろうねぇ……」
「自覚してるわ、とりま部屋については此処と隣の部屋を二つ取ってある。一部屋二人の割当になるな」
寝るだけなら一部屋でもいいかもしれないが、幾ら子供が3人とはいえ4人で一部屋というのも中々に狭さがあるのでもう一部屋確保して貰っている。如何するかとくじ引きで決める事になったのだが……
「ムゥッ……」
「カフェぇお前羨ましぃ!!!」
「やりました」
うっすらと笑みを浮かべているカフェが自分に向けてVサインを向けるのであった。自分と同室はカフェになり隣の部屋はタキオンとポッケという事になった。一先ず少し休憩してから食事か風呂にするという事で一旦解散、数日京都に滞在する予定なのでその予定を確認するなり家族に一旦連絡するなどの時間を取る事にした。
「しかしドレスコードなどがいいのだろうか……?」
「問題ない、要るにしてもレンタルで如何とでもなるからな」
「流石ですね!」
二人を隣の部屋まで送り届けた後に部屋に戻り、一先ず自分の荷物を解いていると隣で同じように荷物を解いていたカフェが此方を見て来た。正確に言えば此方を激しく凝視しているお友達に釣られるように自分を見ていると言った所だろうか。
「如何やらお友達は気になるみたいだな、俺が見える理由って奴が」
「私も気になります」
「と言っても俺には確信的な
「聞きたい、です」
カフェの意見は変わらなかった。自分にしか見えず感じられないお友達、それを共有出来る相手のその理由を。ランページだって本当にこれなのかという事は分からない、だが思い当たるとしたらそれしか考えられない。だがそれをストレートに伝える訳にも行かない、相手は幼い子供だ。憧れを向けている相手が自殺したから……何て聞いたらショックを受けるに決まっている。
「一回な、どうしようもなく辛くてもう全部投げ出したくなっちまった時があったんだよ。それで全部投げ出そうとした時に助けられたんだ―――友達にな」
「―――お友達、に」
「そう、お友達にね」
何処か濁しながらも汲み取ろうとすれば汲み取れるように伝えた、カフェはその答えを聞いて何処か納得したような目で輝きを向けて来た。自分と友人が同じで助けになっているんだ、自分だけじゃないと思っているのだろう。その一方でお友達は言葉の真意を察しているのか、よく頑張ったと肩を叩いて来た。
「二進も三進も行かなかった時に友達が新しい道をくれたんだ、友達って本当に有難いんだなって実感したよ」
「私もそう思います……私にとっても、お友達はかけがえのない存在ですから」
「そうか、俺と同じだな」
それを聞いてカフェは嬉しそうに頷いた。方向性は違うかもしれないが、大切な友達というのは共通している。それだけでも十分なのかもしれないと思っていると部屋の扉が開けられた。
「失礼するよぉランページさん。ポッケが食事に行きたいとうるさくてねぇ……」
「い、言ってねぇだろ!?ただこういう所の飯ってどんな感じなのかなぁって言っただけじゃねえか!?」
「言ってるじゃないかい」
顔を赤くしたままタキオンを睨みつけながらポッケとそれを軽く受け流しつつもケラケラと笑っているタキオン。そんな二人を見てカフェは騒がしいなぁと思いつつも何処かこの二人といる事も嫌いではないという表情を浮かべているので彼女の頭を軽く撫でてやる。
「んじゃまあ、ポッケが御所望な事らしいし飯に行くか」
「ちょっランページさんまで!?」
「ハハハッまあいいじゃないか、先程見たが如何やらこのホテルにはウマ娘用のスペシャルパフェというのがあるらしいよ」
「マジか!?」
「機嫌、治るの早いですね」
「まあいいじゃねえか、つうかタキオンはフローラに会いに行くとか連絡は良いのか?」
「姉さんよりも貴方といる方が貴重な時間だからねぇ」
「合理的なのかなんというか……そういう時位は姉ちゃん優先しないと泣くぞあいつ」
「泣けばいいさ」
「……タキちゃんが電話に出てくれない……もう京都に来てる筈なのに……」
「ランと来てるって話だから、今ご飯の最中とかじゃないの?」
「……一緒に、食べたかったなぁ……」
「一応聞くけどそれってどっちと?」