貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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遅くなりました。


214話

遂に始まった天皇賞(春)。天皇陛下の名を戴くこのレースに漕ぎ出していく優駿達、3200という距離は日本のG1レースの中で最も長い道。加えて行われるのは京都レース場、淀の坂があるこのレース場ではパワーとスタミナが要求される。3200を走り切るだけの体力とその管理も重要視される、一体誰が真っ先に飛び出していくのか―――

 

「ドッカンターボだぁぁぁ!!!」

「爆逃げで負ける訳には行かないぃぃ!!」

 

『おおっと一斉に飛び出したのはトリプルティアラウマ娘のツインターボとご存知大逃げステイヤーのメジロパーマーだ!!メジロマックイーンでもトウカイテイオーでもメジロライアンでもない、ペースを作るのは自分達だと言わんばかりにこの大逃げウマ娘二人がペースを作ります。がツインターボは余りにもペースが速すぎるのではないか、3200は初の旅程ですがこのペースを持たせられるのか!?』

 

知っていた、分かっていた、だが本当にやるとは全員に思わせる程に見事なドッカンターボを繰り出して先頭に踊り出したターボ。本当に3200を走り切るつもりがあるのかと言いたくなるようなペースにはパーマーですら驚いていた。

 

「ターボにはターボの走りがあるんだもん!!いっくぞぉぉおついて、こおおおい!!!」

 

笑みを浮かべ続けたまま、彼女は走り続けていく。嘗ての秋華賞を思わせるような走りで坂を駆け上がっていく、その姿に思わずテイオーは笑ってしまった。

 

「何処までも君は君だねターボ、ボクだって負ける気は―――ないよ」

「それはアタシだって同じだけどねぇ」

「同感ですね」

 

その言葉に続いたのはネイチャとイクノ、同じカノープスというのもあるが自分達だってこの京都には様々な思いがある。菊花賞と秋華賞での敗北を味わっている自分達だが、その敗北がくれた物がある。その為に鍛えた脚があると坂道をまるで平地のように駆けあがっていく、シンザン鉄を使っての坂路を取り入れている二人にとっては淀の坂道なんて苦ではないと走りが言った。

 

「ボクだって無敗の三冠だ、負けないぞぉ!!」

「それを言われたら、あたしも負けられないなぁ!!」

 

『先頭を行くのはツインターボ、そしてメジロパーマー。そこから2バ身程にイクノディクタス、トウカイテイオー、ナイスネイチャ、そこから1バ身の所にメジロマックイーンとメジロライアンが続きます』

 

春の天皇賞としてはかなりのハイペースレースとなっている今年、原因は紛れも無くターボだった。スタンド前を通過してもターボは未だ先頭で走り続けている、それを追いかける形のパーマー。この大逃げウマ娘達のペースに全体のペースが上がっている、さながらランページが制した有記念のようなありさまだった。そしてスタンド前を通り過ぎて第1コーナーへと入った時、土埃が上がった。

 

「芝が完全に禿げ上がってやがんな……」

 

思わず、そんな声を上げてしまう程にバ場が悪くなっていた。ボコボコとなって走りにくくなっているコースを疾駆していくターボだが、パーマーはやや走り難そうにしているがターボはそんな事お構いなくひょいひょいと走っている。

 

「ふふ~ん!!ターボに掛かればこんな所、全然平気だもん~!!」

 

「凄いけど、何で―――マジ?」

 

テイオーはその走りを見ているが、思わず目を白黒させた。ターボはボコボコしているバ場の僅かに残っている綺麗な部分を走っている、それこそ小柄なターボの小さめの足が一つ入るかどうかの小さな綺麗な良バ場の部分を的確に走っていた。まるでマジックでも見せられているかのような見事なコース取りだ。

 

「やりますわね、伊達にランページさんと同じトリプルティアラではない、という事ですわね」

「そうでないと張り合いがないからね」

 

マックイーンはターボは早々に脱落すると思っていた、だがターボは未だにトップを走り続けている。まだまだ走れると言わんばかりの勢いがパーマー同様にある。想像以上にこのレースは走っていて楽しいとマックイーンは感じていた、そしてそれは少しずつ上がって来たフローラも感じていた。

 

「フフッ……フフフッ―――」

 

 

「しかしやる物だねぇ……この距離であのスピードを維持し続けられるとは……」

「だよなぁ。流石トリプルティアラだぜ」

 

タキオンの言葉にポッケも同意見だった。長距離な上にバ場の悪いにも関わらずにトップを走り続けているターボ、序盤からフルスロットルでの大逃げ切りが定番のターボが此処まで持つのは意外な展開だった。

 

「練習が役に立ったって事か、付き合った甲斐があったな」

「練習……スタミナ練習、ですか?」

「そうでもあるけどそれだけじゃないな」

 

カフェの言葉に肯定と否定を込めておく。

 

「問題、スタミナを消費するのはどういう時?」

「んなもん走っている時ずっとなんじゃ……」

「どういう時、という限定的という聞き方をするという事は局所的という事だろう。その位考えればわかるだろうポッケ?」

「あったまくるなぁお前ぇ……」

 

それはタキオンの頭の回りが同年代と比べたら段違いに早いだけなのだが……と思うだけにしておく。そんな時にカフェが応える。

 

「ペースを変える時、ですかね」

「それもあるな、他には」

「フム……バ場が悪く体勢を直すときかな」

「それもある」

「えっとえ~っと……プレッシャー掛けられた時!!」

「それもある」

 

三人の答えはどれも正しい、ペースなんて自分が良く使う手段だし体勢もバ場が悪い時にはしょっちゅう、プレッシャーは精神的な疲労からスタミナを。今回の場合、如何してターボが持つのかという意味では正しくはない、正解は―――的確なコース取り。

 

「良バ場に比べてバ場が悪いと必然的に疲れるだろ?今回なんて正にそうだ、ターボは荒れてない無事な芝を見抜いた足運びをするコース取りをしてるんだ」

「マジですか!?」

「走っている時に見える景色から芝が見えるだろ、そっから抜き出してる」

「言うのは簡単だが、それこそ言葉通りの一瞬の間になってしまうが?」

「出来ちまってるからなぁ」

「凄い……」

 

ターボのスタミナ強化は南坂ですら手古摺っていた、何せ幾らスタミナを強化した所で走るターボがそのスタミナをどんどんエンジンに焼べるので加速とスピードの燃料にしかならないので他のウマ娘に比べて圧倒的にスタミナの伸びが悪い、その分加速とスピードの質は上がるのだが……そこでランページがある事を考えた。

 

『開き直ろうぜ、こうなったら長時間トップスピードを維持する事にシフトしようぜ』

 

発想の逆転、以前の二回ドッカンターボを行うという発想をヒントにしてターボのスタミナ強化ではなく走りの質を上げる事をランページは提案した。やった事は簡単―――視点を活かす事。

 

『視点を活かす……どゆ事?』

『ターボは基本先頭だろ、まあ天皇賞だと多分パーマーもいるだろうけど3200を逃げるっつってもある程度は抑える。だから基本はお前がトップだと思っていい、つまり先頭には誰もいないだろ』

『うんっそれがターボのレース!!』

『ああ成程、良い考えですね』

『面白いだろ』

『えっ何々、教えて教えてよ~!!ターボにも分かるように~!!』

 

ランページの案、それはつまりターボの全力を走れるバ場を常に走り続けるという物。荒れていないコース取りをして常にベストな走りをし続けるという一見荒唐無稽な発想。だがターボの走りは大逃げ、しかも最初から全開の大逃げ、それならば前に他のウマ娘がいる可能性は極めて低い。それを使わない手はない。

 

「そっからは只管にターボを走らせた、俺が走る山の悪い道を走らせたりもしたな。木の根っことか石とかが転がってない地面を見つけて走らせる、それを繰り返させたんだ」

「そんな事を……」

 

そしてターボはそれを驚くような速度で物にした。まだ意識するとぎこちなさはあるが、十分に通用するレベルにまで練り上げた。

 

『さあツインターボが未だ先頭!!ツインターボの先頭は終わらない!!だが此処で後方からメジロライアンが上がって来たか、いや他のウマ娘達が落ちてきているか!!春の天皇賞も後半に差し掛かっているのに未だにツインターボのドッカンターボは未だに衰えません!!このハイペースに追い付けないか!?おっと第三コーナーに入りましたがイクノディクタスとアグネスフローラが仕掛けた!!ターフの独裁者と覇を競い続けたこの二人にとってこのペースは何のそのか!?メジロマックイーンも徐々に、徐々に上がってきている!!さあ間もなく第四コーナー、ツインターボがこのまま逃げ切るのか!?それとも無敗の三冠のトウカイテイオーが春の盾を取るのか!!それともメジロマックイーンが盾を守り切るのか!!メジロの三冠、メジロライアンが盾までその手にするのか!?』

 

「このままターボが逃げ切る~!!」

「ぐぬぬっ根性根性ォ!」

 

大逃げウマ娘がペースを握る天皇賞、その終幕は近い。

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