貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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215話

最終コーナーを越えて最終直線、此処まで耐え忍んできたウマ娘達が遂に牙を剥き始める―――が、それを出来るのはそれこそ一部の強者のみ。

 

「スパート、するだけの……」

「は、速過ぎる……!!」

 

此処までターボとパーマーの爆逃げペースに付いて来たのは見事ではあったがそれだけで精一杯になっていた。最後の末脚を繰り出すだけの体力も残っていなかった、その一方で二人を猛追するウマ娘達が居るのも事実だった。

 

『ナイスネイチャが行く、いやメジロマックイーンが上がって行く!!トウカイテイオーも上がる、メジロライアン、イクノディクタス、アグネスフローラ!!この6人が一斉にスパートを掛けていく!!』

 

連覇を狙うマックイーン、同じメジロとしても負けられないライアン、無敗の三冠としての意地を見せるテイオー、同じくダービーウマ娘として負けられないネイチャ。大逃げをするのであればそれに負ける訳には行かないと言わんばかりに一気に上がるイクノとフローラ。それらが一気に上がって行く。

 

「負けてられるかぁぁ!!」

 

まだまだ行けると言わんばかりにパーマーは脚に力を地面を蹴っていく、先頭を立ち続けているターボは未だにあの破滅的なペースを維持している―――訳ではなく、維持する事しか出来ずにいる。一歩でも退きたくない、この景色を譲りたくはない、テイオーに負けたくない。そんな思いだけが身体を突き動かしている。

 

「っ!!」

「此処だぁ!!」

「アタシだってぇ!!!」

 

『メジロマックイーンとトウカイテイオーが同時に更にスパートを掛けていく!!一気に3番手にまで上がって行く、パーマーを捉え、そのまま抜き去る!!さあこのままツインターボまでもを捉えきれるか!!?ナイスネイチャも徐々に上がって行く!!さあパーマーに並んだ!!』

 

「負けるかぁぁぁ!!!」

「それは、私達も同じ!!」

「大逃げとの勝負、その一点で負ける訳には行かない!!!」

「そう言う事ぉ!!」

 

パーマーの叫びを覆い尽くすかのように背後からイクノ、フローラ、ライアンの声が降り注いできた。大逃げウマ娘との勝負、その一点において自分達は絶対に負けたくはないという誇りがある。

 

「うあぁぁああああ!!!」

「負けっるもんかぁぁぁ!!!」

 

『メジロパーマーがまた伸びていく!!ナイスネイチャを抜き返し、いやナイスネイチャも伸びていく!!!ともに再びに伸びていく!!これがこの二人の恐ろしい底力!!おっと、此処でツインターボが少し垂れて来た!!流石に限界か、外からマックイーンだ!!マックイーンが強襲!!!』

 

「ハァハァハァハァハァ!!負けない、もんっドッカンターボだぁぁぁ!!!」

 

自分でも落ちてきていることが分かっていた、だからターボは切り札を切った。最後のドッカンターボ、真・ドッカンターボを発動させる事を決意してマックイーンを振り切ろうとする―――が、スピードは全くでない所かマックイーンとの差は更に縮まっていく。

 

「何で、何で……!?」

 

 

「自分のドッカンターボの特性を忘れる位必死だったか……」

 

『メジロマックイーンが今、ツインターボを抜いた!!ツインターボの先頭は此処で終わり!!』

 

3200という長丁場、それを逃げ続けて来たターボ。幾らトップスピードを維持出来る時間を増やしたと言っても限界はある、その限界を迎えた且つ最高のタイミングではなく自分の意志で此処で加速したい、という意図で切ったターボは十分ではなかったのだろう。

 

『トウカイテイオーが迫る、だがツインターボも粘る粘る!!トリプルティアラウマ娘の意地を見せております!!』

 

 

「(君は凄いよ、本当に凄いよターボ。本当に尊敬に値する、だから―――ボクも君に証明する、君のライバルはこんなにも凄いウマ娘だって事を!!)これが僕の真・テイオーステップだぁぁぁ!!!」

 

『ト、トウカイテイオーだ!!トウカイテイオーが更に加速していく!!ツインターボを抜き去ってメジロマックイーンに迫っていく!!なんという速さだ、先程ではまるで別人だぞトウカイテイオー!!?』

 

テイオーの走りが変わった。ターボがその走りを見た時にきっと菊花賞のネイチャと同じ事を思った事だろう。あれは、ランの走りだと。全身を全て連結させ、一つに融合させて行う完全な全身走法、それをモンスニーに頭を下げて直接指導を受けた。元々映像を見るだけで模倣出来ていたテイオーが直接指導を受けたらどうなるだろうか、その走りは一変する。

 

「テイオー、凄い……凄い、凄いよテイオー。ターボも、ターボだって負けてられない!!」

 

重なった。憧れのウマ娘に、師と呼ぶウマ娘の姿と重なった、ランページの走りと重なった。だったら尚の事追いかけたい、走りたいとターボは駆けた。既に息も絶え絶えでフラフラな状態にも拘らずターボは走り続けた。イクノ、フローラ、ライアン、ネイチャ、そしてパーマーにも抜かれていくがターボのその表情は何処までも明るく、楽しげだった。

 

『トウカイテイオー、メジロマックイーンを完全に捉えた!!いや、後方からメジロの三冠のメジロライアンが迫って来る!!イクノディクタス、アグネスフローラも来ている!!ナイスネイチャも来ているが少し厳しそうか!?さあどうなる残り200m!!!アグネスフローラが激しく上がって来るか間に合うか!?』

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

「だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

『メジロマックイーン粘る!!現役最強ステイヤー、メジロ家四天王の意地を見せるのか!?春の盾は、春の盾は譲れないメジロマックイーン!!春の盾こそ絶対に欲しいトウカイテイオー!!無敗の三冠帝王が行くのか!?』

 

「天皇賞に勝ちたいのは、貴方達だけじゃない!!」

「私とて、その思いは同じ!!」

「譲れないよねぇ!!」

 

『半バ身差でメジロライアン、ほぼ横一線でイクノディクタス、アグネスフローラ!!!誰が勝っても可笑しくはないこの天皇賞で誰が勝利の栄冠を掴むのかぁ!!!』

 

あと少し、ほんの少し。ほぼ横一線にまで迫れている中でテイオーは必死に走り続けていた、その瞳に映るのはゴールのみ。

 

「約束、したんだ……!!」

 

「―――お前は確実に皇帝を越えられる、無敗の三冠になってお前は会長に並んだ。なら次は越える事を目標にすりゃいい」

 

「ボクはもう、憧れるだけじゃない―――ボクが、ボクが―――絶対の帝王だぁぁぁぁあっっ!!!」

 

その時、マックイーンは見た。帝王の背中に翼があった。その翼が力強く羽ばたいた時、一気に地面を蹴って宙に舞うかのような加速をして―――自分を、僅かに越えて跳んでいった。

 

『勝った、のは―――トウカイテイオー!!!トウカイテイオー一着ぅぅぅぅ!!!激戦の天皇賞(春)を制したのは無敗の三冠ウマ娘、帝王、トウカイテイオーだぁぁぁ!!!現役最強ステイヤー、メジロマックイーンをハナ差で上回っての春の盾をもぎ取りましたぁぁぁぁぁ!!!』

 

最早それは喜びを上げる絶叫だった。この瞬間に立ち会えた事への喜びを表す雄叫びだった。一着のゴールをもぎ取ったのはテイオーだった。

 

「やった、やったぁぁっ……これが、真・テイオーステップだぁぁぁ……!!!」

 

勝利の雄叫びを上げつつも疲労故に膝を付いて荒い息を吐く。勝利の余韻でもこの疲労感は拭いきれない、そんな自分を興奮した目で見つめて来るターボが目に入った。

 

「凄かったぞテイオー!最後の何なんのあれ!?ランみたいだったぞ!!」

「こらこらターボ、テイオーだって疲れてるんだから迫っちゃ悪いって」

 

諭すようにネイチャがターボを下げさせるが、その表情にも話を聞きたいというのが見えていたのでテイオーは素直に話す。

 

「アハハッ……単純だよ、ランにあの走りを教えて貰った人を紹介して貰ったの。モンスニーのスパルタ指導を受けたんだ」

「モ、モンスニーさんにですの!?」

「マ、マッジィ……!?」

 

肝心のメジロ家の二人が思わず声を上げてしまった。驚き、というよりもその表情には本当なのかという疑いと心配の物があった。

 

「テ、テイオー貴方本当にモンスニーさんに指導を受けたんですの……?」

「うんっランに仲介して貰ったの」

「き、厳しくなかった?モンスニーさんって普段は優しいんだけど指導の時はすっごい厳しくて……」

「滅茶苦茶厳しかった。少しでもフォームが違うと大声で違う!!って言われた」

 

モンスニーの指導は兎に角厳しい、それを味わっているマックイーンとライアンからすると本当に大変だったろうに……という同情の色があった。

 

「フフッ道理で思わず上がっちゃった訳ですよ、だってランページさんの走りにそっくりでしたから」

「ええ、本当にそっくりでした」

 

ランページと覇を競い合ったフローラとイクノからのお墨付き、しかもテイオーステップも加わってテイオーだけの走法となったのだ。それで勝利できた、マックイーンの手を借りて何とか立ち上がった時、大きな歓声が上がった。

 

『タイムは―――3:17.5!?レコードです!!ニチドウタローが達成した3:18.7を1秒以上も短縮したレコードタイムです!!そして2着のメジロマックイーン、3着のメジロライアン、4着のアグネスフローラ、5着のイクノディクタス、なんと6着のメジロパーマーまでもがレコードタイムです!!』

 

 

「すげぇ事になってんなぁ……」

 

テイオーのタイムも凄いが、まさが6着までがレコードとは……しかも7着のターボのタイムだって3:18.9……前年のマックイーンに迫る物だった。

 

「―――っげぇ……!!」

「まさか、こんな素晴らしいレースを生で見られるとは……!!」

「凄い……」

 

三人も興奮のあまり武者震いを抑えきれずにいるのか、尻尾が大きく揺れている。それは自分も同じ。まさかこんな凄いレースを見られるとは……

 

「帝王は皇帝を越えられる……天才はいる、悔しいが」

 

そう呟くランの顔に、笑みがこぼれていた。

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