「走る理由は見つかったか、テイオー」
「あっラン!!」
天皇賞(春)を制したテイオーの取材中、そこに乱入するような形で姿を現したランページ。現役最強ウマ娘として名高いランページの登場に報道陣は一気に騒めいた、その中にはランページが普段出禁にしている報道陣もいるが、自分が贔屓にしている者も居る。如何やら出禁にしている報道陣はかなり肩身が狭いのか、一番後ろに追いやられるような感じでいる。
「まさかマックイーンを破るとはな、ようやるもんだ」
「えへへ~頑張って特訓したからね!!」
「辛かったろ」
「うん、マジで辛かった」
その言葉でお互いに無表情になった。モンスニーの特訓はシンプルにスパルタなのである、特にシンザンと交流してからは鍛錬用のシンザン鉄も導入するようになったのでそのレベルが上がっている。テイオーは走法を覚える過程で長距離適性を上げる為の特訓も行っていたが……当然のようにシンザン鉄だった。
「ま、まあそのお陰で今があるからね。苦労も一入って奴だよ!!」
「そうか、そう言われるとこっちとしても有難いんだが……ああ、俺の方もレベル上がるのかなぁ……」
「でも如何やって……?」
「だよなぁ……今から怖いわ」
既にシンザン鉄はシンザン御大のオリジナルと同じ重さ、だとするとシンプルに特訓の内容が増すという事なのだろうか……これ以上行くとレジェンドクラスとの併走とかになりそうで考えたくはない……。
「え、ええっと……その」
思わず沈黙してしまっているとインタビュアーのお姉さんが困ってしまっていた、そういえばこれは普通に生放送中だった。自分たち二人が黙りこくるとか放送事故と捉えられても可笑しくはない、故にテイオーと視線を合わせる。無言で頷き合うと―――
「「おはこんハロチャオ~!!」」
笑顔いっぱいで振り向きながら手を振る、瞬間おおっ!!声が上がりながらもフラッシュが焚かれ、テレビクルーも真剣なまなざしでカメラを回し始める。
「貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、無敗のティアラ、星空に手を伸ばせば カシオペアさえ掴めるさ、なランページだぜい!!」
「君の記憶にテイオーステップ、無敵のテイオー、無敗の三冠!!瞳を閉じれば 空だって走れる、ボク達は英雄だった~なトウカイテイオーだよ~!!」
「「皆の者~善行積んでたか~?」」
配信テンションで場を盛り上げて先程まで放送事故の空気感をぶち壊しておく。基本テレビの前ではこういうテンションは出さない上にテレビに顔を出さない。それに顔を出すぐらいなら配信で顔を出した方が楽だからだ。故に、テレビ局側からしたらこれは垂涎物の機会。
「さてとテイオー、これで春シニア二冠だな。次は宝塚記念を狙うか?」
「勿論!!目指すのは春秋シニア制覇だよ!!」
堂々たる宣言に周囲からは声が上がった。大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念の春シニア三冠、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念の秋シニア三冠、その制覇を目指すという。未だにこの二つを達成したウマ娘はいない。
「そしてボクは―――カイチョーを越えるウマ娘になる!!そう、約束したもんね!!」
「だな」
皇帝を越える帝王になる、そう誓ったテイオーが目指すのは海千山千の強豪ひしめくシニアの荒波の戦場。既に春シニア三冠に王手を掛けているがラストの宝塚記念は簡単に取れる様なものではない。人気投票によって出走ウマ娘が決められる宝塚記念、人気の高さは実力の高さと=と言っても過言ではない。
「応援させて貰うぜ、まあメジロのウマ娘だって出るんだけどな」
「望む所だよ!!」
「それじゃあ頑張りな」
「お~う!!」
最後のハイタッチをするとランページはそのまま騒がせたな、と言い残してその場を後にする。報道陣からは名残惜しそうにコメントが欲しいという声が出て来るのだが、此方も此方で待たせている人がいるので此方ばかりを優先している訳には行かない。そのまま駐車場のインプレッサに向かうと乗り込むと待っていたと言わんばかりにタキオンたちが声を上げた。
「随分と派手にやったねぇ……TVが大騒ぎになっているよ」
「サーバー落とすより大分マシじゃね?」
「それを言われたら此方も立つ瀬がないね」
「んで南ちゃんと話は出来たか?」
「はい、色々とお話し出来ました」
自分がテイオーの所に顔を出す前に南坂と話をして貰った一同。自分のトレーナーである南坂から様々な話などを聞く事が出来てタキオンはほくほく顔だった。ポッケとカフェはサインを貰ったらしく、サイン色紙を嬉しそうに抱いている。
「イクノさんやネイチャさんにもサイン貰っちまったぜ!!」
「ターボさんには特に大きなサインを貰ってしまいました」
そう言いながらもカフェはノートを取り出して1ページを広げた、そこにはデカデカと
ツインターボ!!
そんなサインが書かれていた。豪く達筆なのがターボらしい。自分がプレゼントした筆ペンで書かれている。
「そういえば俺のサインとか全然書いてなかったな……後で書いてやるよ」
「マジっすか!?おっしゃぁっこれでクラスの奴らに自慢出来るってもんだぜ!!」
「態々見せびらかしてやるような程の物でもないだろうに……下手なやっかみを買うだけだ」
「まあポッケさんらしいですし、大丈夫じゃないですかね」
小学生には小学生なりの世界という物があるという事なのだろう……下手に大人が首を突っ込むとえらい事になるのはどの世界も変わらないという物だろう。
「にしてもこの後如何っすっかな、明日学校だろ?」
「あっお休み貰ってます」
「天皇賞を見に行くと言ったら普通に休みを貰えてるっす」
「寧ろ教職員にもそうやって休む人が多いらしいからねぇ……ウマ娘が憧れのレースを見る為に休みを取るのは将来の為の勉強という事で休みは取りやすいんだよ」
「……それでいいのか公共教育機関」
柔軟というか、なんというか……それならば今から急いで高速を飛ばして帰る必要はないという事にはなる。それはそれで有難くは思うが……
「んじゃ……観光でもするか、俺も俺でちょっと行ってみたい豆腐屋あるんだよなぁ」
「ランページさんが興味ある豆腐屋!?俺も行きてぇっす!!」
「いやそこは唯の老舗豆腐屋ってだけだぞ」
「いや普通に私も豆腐は好きだから行きたいねぇ、両親が作ってくれる豆腐ハンバーグはぶっちゃけニンジンハンバーグより好きだねぇ」
「タキオンさんのご両親の豆腐ハンバーグは本当に美味しいですもんね、付け合わせのニンジンも最高ですし」
まさかの発言に吃驚である。自分が豆腐屋に行きたいと思ったのは単純に某関西系イタリア人に倣っただけなのだが……まあ京都を楽しむ事になった。尚
「此方にはよく買いに来られるんですか?」
「いや今日初めて来ましたね、だけど此処の豆乳で惚れましたね。京都に来るたびに買おうと思います」
『実はこちらのウマ娘のお客様、なんとあのメジロランページさんだったんです!!最早知らない人なんていない、日本で始めて海外の初G1制覇を成し遂げた未だ無敗のウマ娘!!』
「本当に美味い豆腐って最近中々無いですからね、昔ながらの作り方の豆腐をちょっと求めてました。後おからもお願いしますね」
「はい喜んで~」
「おからお好きなんですか?」
「ええ、昔から助けて貰いましたから」
この放送がされた後、この豆腐店には異例の大行列が連日出来るようになった。
「ランっておから好きだったの?」
「大好きだぜ。メジロに入る前は近くのお豆腐屋さんに良く分けて貰っててな、あのおからが無かったら飢えて死んでたな」
「……なんかごめん」
「何で謝んの?」