貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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217話

春の天皇賞も終わり、暦は5月。じんわりと暑さが増していく中、ウマ娘達は今日も直走る。そんな中には当然、ランページも含まれている。世間はテイオーの会見に突然出て来たランページに困惑とテレビでは見られない配信テンションに大興奮、テイオーの春秋シニア三冠を目指す発言にも注目が集まって益々トゥインクルシリーズは盛り上がりを見せようとしている中、一つの疑問がランページに届けられた。

 

「日本では走らないのか、ねぇ……」

 

ランページの今後のスケジュール、ドバイワールドカップを制覇以降日本に留まってトレーニングに励み続けている現役最強ウマ娘は一体何時渡欧するのか、それとも日本でまた走る姿を見られるのかという期待が集まっている。

 

「近々安田記念もあるからそれも兼ねて聞いてんのかねぇ……」

「あるでしょうね。そもそも凱旋門賞を目指すのに渡欧せずに日本でトレーニングし続けていていればそう思われてもしょうがないと思いますが」

「って言われてもねぇ……理事長が洋芝導入してくれたから無理に渡欧して向こうでトレーニングしなくて良いからいるだけなんだけどねぇ……」

 

トレセン学園にも洋芝が導入された。それはランページの活躍を見て理事長が導入に踏み切ってくれたのである、元々はドバイワールドカップに挑む前から目指していたのだが、海外G1初勝利が後押しとなってURAが助成金を出してくれたのでなんと丸ごと洋芝のコースを導入する事に成功した。これはこれでURAの目論見が見え見えではあるのだが……まあ折角用意してくれたのだから有難く利用させて貰っている。

 

「でも実際問題何時行くよ」

「それに付いてはスピードシンボリさんの予定がつき次第、ですね。どうにもあの人でないと処理できない仕事というのもあるそうでして……」

「何、天皇陛下との会食とか?」

「そんなホイホイあってたまるもんですか」

 

分かって行っているが、スーちゃんが処理しないといけない案件と言われたら実際に天皇陛下と会っている自分からするともうその位しか思い浮かなかった、反省はしている。

 

「つっても最悪の場合、俺のレーススケジュールも変えた方が良いって事もあるんだろ?」

「流石にそれはさせないと言ってましたよ、6月辺りには出発したいと仰ってました」

「やっぱその辺りか……」

 

自分が予定している次走はキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス。凱旋門賞やダービーとならんでヨーロッパの最高峰のレースの1つとされているG1レース。そこから一つレースを挟んでからの凱旋門、というのが当面のスケジュールである。流石に本場の洋芝に慣れる時間は欲しいので最低でも2週間程度の時間は欲しいとは思っている。

 

「ライスのダービーとかは見たいんだけどなぁ……」

「7月25日予定ですし、日本ダービーからほぼ2月は時間がありますから大丈夫だと思いますよ」

「あ~良かった、ライスのダービー見られないとかマジっべ~わ~」

 

ヘリオスとでも会って来たのだろうか、それを思わせるような言葉遣いをしながらもランページは入念にストレッチを行う。身体の固めなライスとは真逆に酷く柔らかく身体が完全に地面に付く程に倒せる。

 

「ああそうだ、南ちゃんってフランスのお土産って何がいい?」

「お土産、ですか?」

「だって渡欧したら流石に一旦こっちに帰って来るなんて事しないと思うし、今の内に聞いておきたいから。やっぱあれか、エッフェル塔の模型?」

 

また定番な物を……と思いつつも考えてみる、ヨーロッパと言えばのお土産とは何だろうか。まあ最悪の場合、何でもいいのだが……

 

「そうですね、ランページさんが良いと思った物で良いですよ」

「おっ言ってくれるねぇ~それじゃああれでいいな―――銀の凱旋門の置物」

「またそんなっ―――ええ、ではそれでお願いします」

「それの手に入れ方には心当たりがあんだ、大船に乗ったつもりでいな」

 

ド定番だなぁと思ったが、その言葉の真意が分からない程鈍くはない。それは即ち、凱旋門の勝者に贈られるトロフィー、世界一のレースと言っても過言ではない凱旋門賞を勝って戻ってくると宣言をした。相変わらず大胆不敵で自信に溢れた言葉だと笑いながらもその光景を見たくてしょうがなくなった。

 

「それでは、期待させて貰いますね」

「応よ。ついでに城の模型も貰って来てやんよ、アイルランドの奴でいい?」

「えっアイルランド?」

「いや、アイルランドの王族とコネがあってさ」

「天皇陛下、ドバイの首長陛下、次はアイルランドの国王陛下ですか?」

「正確に言えば殿下だけどな」

 

そう言う事……だよね?と一瞬、困惑しているとエアグルーヴが駆け寄って来た。

 

「ランページさん、お客さんが来てます。えっと、サクラバクシンオー先輩とヤマニンゼファー先輩、ニシノフラワー……先輩が来てます」

「バクちゃんにゼファーにフラワー?面白い取り合わせが着たもんだな、どっこいしょっとちょっち行って来るわ南ちゃん」

「はい、いってらっしゃい」

 

エアグルーヴに案内されて3人の元へと向かって行く愛バを見つめながらも本当に何処まで大きく、広がっていくのだろうかと思う。最悪の場合、そこに大統領が加わると思うと……なんだろう、今から彼女が自分の人望に呪いを掛けそうな気がして来た。

 

「さてと、ランページさんにお願いされましたしタキオンさんのメニューを組み始めますか」

 

 

 

「あっランページさん、すいませんトレーニング中でしたよね」

「ストレッチしてただけだから気にしなさんな、桜花賞おめでとさん。次はオークスか、こりゃ三年連続でトリプルティアラかな」

「そ、そんなっ私がトリプルティアラなんて……!!」

「ハハハッそう謙遜するなって、G1ウマ娘なんだからもっと胸を張って良いんだよ」

 

桜花賞を制しG1ウマ娘となったフラワー、次はオークスを制しランページ、ターボに続くのではと期待も高まっている。が、そんな期待がある中でフラワーはオークスには不安があるらしく、今回は相談に来たらしい。

 

「実は2400は私には長い距離でして……如何したらいいのかなってトレーナーさんに相談したら先人に倣ってみようか、って言われたんです」

「そうです、私達にはランページさんという頼れる方がいます!という訳で、皆でともにバクシンしましょう!!」

「皆さんで薫風、そして青嵐のようになるのも良いと思いまして」

「え、ええっと……」

 

エアグルーヴはバクシンオーの勢い、ゼファーの独特な言い回しに困惑してしまう。結局何が言いたいのだろうかと参っているとランページはそういう事ね、と納得しながらも通訳してやる。

 

「薫風は新緑の間を吹きぬけて青葉の薫りを感じるような初夏の風、青嵐は初夏の青葉を吹き渡るやや強い風。つまり、G1ウマ娘として芽吹いたフラワーの為に自分達も協力したいと思っていて、一緒に走りましょうってお誘いって事だ」

「はい、その通りです」

「そ、そんな意味が込められていたなんて……勉強不足でした……!!」

 

こればっかりはゼファーの独特な言い回しなので厳しい所もあるだろうが……兎も角言いたい事は分かった、ティアラ路線の先達として力を尽くすのは望む所。それに、カノープスとしてもこれは利益になる話でもある。

 

「エアグルーヴも来るか。将来お前さんが挑戦するティアラ路線、それを現役で走ってるウマ娘の走りを見るチャンスだぞ」

「ぜ、是非!!」

「という訳で一人追加頼むわ」

「はっはい。こちらこそよろしくお願いします」

「ウムウム!!では参りましょう、バクシンバクシーン!!」

「フフッ参りましょう」




ぶっちゃけ、ヘリオスよりもゼファーの方が台詞は作りやすい。
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