貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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219話

基本的にランページは雑誌などの取材には応じるが、TV出演などには応じない。理由としては自分自身が配信者なので自分で発信した方が手間が掛からないし妙なしがらみなども無いので自由にやれるから。無敗の現役ウマ娘としてそういった申し込みは常に来ている、時折高額のギャラを提示して申し込みが来る事もあるのだが……生憎、レースの賞金で財布は潤っているので高額ギャラには興味がない。加えて贅沢もあまりしない、最近した贅沢もインプレッサの新しいタイヤ代ではないだろうか……。

 

「……」

「ラン、此処良い?」

「ああ、お前ならオールカマーだぜ。走った事無いけどな」

 

昼食時の学食、端の席でノートパソコンを置きながら何やらを打ち込んでいるランページ。そこへ昼食を持ってきたライアンが座る。

 

「ランってば何やってるの?」

「いやな、フラワーのトレーナーに頼まれてバクちゃんとゼファーとやったトレーニングについてをな……俺も俺で好い加減忙しくなり始める頃合だしな……おし、こんなもんでいいだろ。送信っと」

 

書き上げたのか、それをフラワーのトレーナーへと送信しておく。向こうも向こうで新人トレーナーらしく、いきなりG1ウマ娘を育て上げたトレーナーとして注目が集まり出しているらしい。フラワーは飛び級しているのでまだまだ身体も小さく精神的にも幼い、故に彼女に対する取材やらを代わりにやっているとの事。これで少しは助けになればいいのだが……

 

「あ~腹減った、頂きますっと」

 

漸く手を付け始めた炒飯は冷めているが、そんな事を気にする程繊細ではないので普通にモリモリ食べていく。そんな姿に続くようにライアンも食事を始める。

 

「如何、最近は」

「んっ~まあまあだな、洋芝にも慣れたし後は向こうで慣らす位だな」

「凄いなぁ6月には渡欧だっけ?」

「ああ。それまではにほんでのんびり~だな」

「のんびりがシンザン鉄でトレーニングかぁ……」

「俺にとってはもう日常の一ページよ」

 

ライアンもライアンでシンザン鉄を使ってトレーニングをする側ではあるが、流石に数年単位で練習をし続けているランページには遠く及ばない。まだまだ頑張らないと、と思っていると学食にセットされている大型モニターにとある番組が流された。ウマ娘に直接インタビューをする類の番組なのだが……その相手がフローラだった。

 

『本日のゲストは昨年のジャパンカップを制しましたアグネスフローラさんにお越しいただきました』

『おはこんハロチャオ~アハハッアグネスフローラです、宜しくお願いします』

 

「あいつ、TVとかに出るんだな」

「ランとは全然出ないよね」

「配信した方が早いじゃねえか」

 

そうはまあ、そうかもしれないのだが……そういうライアンはCM出演などには応じている。最近ではシャンプーとスポーツ関係のCMだった。

 

「出ても良いと思うよ、引退した後の選択肢を増やすって意味でもそういうのは有効だってお婆様言ってたし」

「そういうもんかねぇ……というか、俺の場合は増やしたとしても取れる選択肢になり得るのか極めて謎だけどな」

「ま、まあねぇ……」

 

余りにも有名になりすぎてしまっているので引退後は様々な所から引く手数多だろう、指導者として招きたいという声すら現状で既にある位なのだ。その中にファインからウチに来ない~?という物もある。

 

「にしても引退か……そうか、考える位はしとかないとまずいのか」

「ドリームトロフィーリーグに移籍するのもありだと思う、まああたしとランの場合は確実に誘いは来るだろうけどね」

 

実績的に見ても三冠ウマ娘の自分達に誘いが来るのは必定。その走りの争いを更なる上のステージで見てみたいと望むファンも極めて多い事だろう。ランページ自身も望んでいたオグリとの対決も望めるし、何だったらルドルフやラモーヌ、シービーと言った三冠の先達との激突も……。

 

「う~ん……」

「あんま興味なし?」

「だって、ダートないじゃん」

「流石にまだ出来てないからね……」

 

ドリームトロフィーリーグも面白そうではあるのだが、夏と冬に走るだけというのは如何にも……そもそもランページのトゥインクルシリーズは月1で走るようなハイペーススケジュールだった、そんな彼女からすれば年に2回のみのレースというのはどうにも……これでダート部門も設置されて春夏秋冬ドリームリーグという触れ込みなら面白そうとは感じただろう。現状ではドリームリーグはそこまで興味がそそられない。

 

「つうかさ、引退したら俺はまずメジロ家で淑女教育とかじゃね?」

「いや、ランはそのままが良いって。やるとしても礼儀作法位じゃないかな。だってお淑やかなランってぶっちゃけ需要ないと思うし」

「ハッキリ言うわねアンタ……泣くぞわちき」

「えっこの程度で泣けるの?」

「ぶっちゃけ無理」

 

その程度で泣くような軟なウマ娘ではない事は周知の事実、それに思わず二人は笑いながらお互いの近況ついて語り出す。ライアンは最近よくメジロ邸に顔を出しているらしくドーベルとブライトから話をせがまれてしまっているとの事、トレセンではどんな感じなのか、シンザンと仲がいいというのは本当なのか、そんな事を聞かれて思わず困ってしまったとの事。一方ランページの話は―――

 

「んでスーちゃんがシリウスと過ごしたらしいだけどその時の事が余程嬉しかったのか、すげぇ惚気るんだわ」

「あ~……確かにシリウスさんはそういうタイプじゃないもんね、というかよくスピードシンボリさんをスーちゃん呼び出来るよね……」

「もう慣れたよ、何だったら天皇陛下とすら喋ったからな、なんならドバイの首長もいるぞ」

「それ出すのは反則だよ」

 

穏やかに流れていく平穏な時、不意にライアンは楽しそうに話すランページの姿を見て昔の光景を幻視した。偶に一緒になってランの家に遊びに行った事、一緒に川遊びをした事、ランの家で一緒に昼寝をした事……あの時の事は直ぐに思い出せる。

 

「ねぇっラン、今度どっか遊びに行こうよ。昔みたいに二人でさ」

「いいな、俺が車出して遠出するのもありだな」

「それもいいね、温泉とか行く?」

「温泉もいいなぁ……って一応学生が温泉って枯れてね?」

「……アスリート目線で言っちゃったかな?」

 

と、同時に笑い出した。引退した後なんて、その時に考えればいいのかもしれない。今は兎に角、楽しい今を存分に過ごそう。




『アグネスフローラさんにとってランページさんとはどんな存在ですか?』
『絶対に捕まえたい存在です』

「……なんで寒気するんだろうな……」
「ごめんフローラ、フォローしてあげたいけど出来そうにない……」
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