貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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22話

カノープスでの練習の日々は夏だろうと続く、当たり前の事だ。しかし、ウマ娘は夏の暑さに対しては人間よりも弱い。故にトレーニングもそれに合わせて変更が要求され、暑さに慣れる事の時間が増える。リギルのウマ娘達ですら夏の体調管理は確りとするし夏は合宿などで環境を整えるのだが……カノープスのメンバーはトレセン学園の練習場に姿があった。しかも暑さは感じていないと言わんばかりに元気いっぱいな様子であった。

 

「これすっごい涼しい~!!」

「本当にこれは素晴らしいですね、走れば走る程に風が入ります」

「いやぁ助かるわこれ」

「わ~い!!夏でもこれなら頑張れる~!!」

 

「本当に有難う御座いますランページさん、まさか此処まで用意してくださるなんて」

「何の何の、暑さの辛さは良く分かってるつもりだぜ南ちゃん。この位訳ねぇよ」

 

そう言いながらも帽子を被っているランページが笑う。そんなランページに感謝する南坂、その理由は彼女が用意した物。それは空調機付きのジャージ、帽子にサンバイザー、そして凍らせたドリンクなどなど……対策の為に用意した物がたくさんあった。ランページは元々人間なので暑さに対しては普通のウマ娘以上に強い、何より―――夏のコミケに行った事のある社畜オタクにとってはこの程度の暑さなんて如何という事はないのである。

 

「さて、改めましてこれからのプランですが―――まずイクノさん、要望通りに来月のフェニックス賞への参加登録は済ませておきました。其処を目標としましょう」」

「無論です」

「ランページさんは新潟ジュニアステークスですね」

「応」

 

何方も来月にはまたレースを走る、無事是名バを目指すと言いながらもとんでもないローテだと南坂は他トレーナーから言われた事があるが自分は問題ないと判断しているし何より彼女たちの意思を尊重したいと思っている。

 

「良いな~……ターボも走りたいよ~……」

「それはアタシもだよ、だからこそ今は集中して頑張ろうじゃん」

「うん私も頑張りま~す!!」

「よ~しそれじゃあ頑張るぞ~!!」

『えい、えい、む~ん!!』

 

と本当に定着してしまったえいえいむん、若干力が抜けそうな響きではあるのだがカノープスらしいからこれはこれで良いのかもしれない。それではメニューを開始しようと思ったのだが、その前に南坂がベンチの上に置いてあった箱を指差した。

 

「南ちゃん何これ」

「今日から新しいメニューを採用しようと思いまして取り寄せました、開けてみてください」

「おっ俺に対してのプレゼントかい?南ちゃんったらナンパのコツでも使ったのかな~?」

「フフッそんな所ですかね」

「あれま、随分と簡単に返しちゃうのね。んじゃまっと……」

 

そんな何時ものやり取りをしながらも妙に仰々しい箱を開けてみる事にした。そこには……紫色のクッションの上に置かれた蹄鉄があった。逆T字の橋のような物で補強されているのが特徴的な蹄鉄。

 

「蹄鉄?」

「みたいだね、これを取り寄せたってこと?」

「はいそうですよ」

「それじゃあオーダーメイドのラン専用の蹄鉄とか!?」

 

そんな言葉にハニカミながらもそうとも言えますねと答える南坂、実質的にこれはラン専用の蹄鉄と言えるのは確実かもしれない。これしかないのもあるが、他のメンバーの調子を見ながら必要になれば調達しようと思っている。

 

「さあ手に取ってみてください」

「あいよ、んじゃま―――」

 

折角のプレゼントだ、有難く頂いておこうと手に取ろうと指を掛けるのだが―――滑ってしまった。掴みそこなったわけではない、軽い力では保持出来なかったのだ。思わず、真顔になりながらも今度は力を込めて鷲掴みにして持ち上げる事が出来た。

 

「お、おいなんだこれ!?普通の蹄鉄の数倍は重いじゃねえかよ!?」

「そんなに重いの!?ターボも持ちたい!!」

「気を付けろよ、マジで重いぞ」

「お~っておっもっ!!?」

「た、ターボ大丈夫!?」

 

分かっているつもりで持ったターボは思わず下に落ちる程の重さ、咄嗟にタンホイザが補佐に入って怪我はなかったが本当にこれは重い蹄鉄。通常の数倍の重さはある。それを見たイクノは正体に気付いたのか顔色を変えた。

 

「トレーナーさん、これはもしや……」

「はい、イクノさんは気付いたようですね」

「えっ何々アタシ全然分かんないんだけど」

「因みに俺も分かんねぇ」

「―――これは、シンザン鉄です」

「シ、シンザン鉄だぁ!!?」

 

イクノから告げられたそれに思わずランページは大声を上げてしまった。その名前を聞いて漸く記憶の片隅にあったそれを引き出す事が出来た、知識としては知っていたがまさかこれが―――と息を呑む……

 

「シンザンテツ……って何?新しいパラドックスポケモン?」

「確かにテツノワダチっぽいよね」

「いやいやいや、テツノツツミじゃない?」

『あっそれだ!』

「どれもこれもちげぇよ!!シンザン鉄!!五冠を取ったシンザンが付けてた蹄鉄だ!!」

『シンザン……記念?』

「あってるようで間違ってる!!」

 

とハテナを浮かべてしまっている3人にツッコミを入れるランページだが、それも致し方ないかもしれない。このトレセン学園には三冠を達成したシービーとルドルフがまだ在籍しているしドリームトロフィーで激突しているのだから其方の方に意識が向けられるのも致し方ないという物だろう。

 

「ったく……だけど南ちゃん、これマジでシンザン鉄なのか?」

「はい。特注品です」

「うっへ~……こんなん着けてたってのかよ……」

 

五冠馬にして神の馬、シンザン。セントライト以来史上2頭目の三冠馬であり、その戦績・産駒成績・長寿ぶりのすべてにおいて日本競馬界に長く大きな影響を与え続け、シンボリルドルフが登場するまで、競馬会においてはシンザンを超えろという事が至上の命題だったとまで言われた。それ程までにシンザンは強く、ホースマンの目と脳を焼いたのだ。

 

そしてそのシンザンと言えばのエピソードに余りの脚力の強さ故の踏み込みにより、後ろ脚から出血したというのがある。その対策として開発されたのが専用の蹄鉄、世にいうシンザン鉄である。その重さ故に凄まじい音を立てるとまで言われたそれによってシンザンの足腰は鍛えられたとも言われている。

 

「実際のシンザン鉄は無理な改良もあって強度も低かったそうですが、これはその点をクリアしているものです」

「技術の進歩~って奴だな。んで南ちゃん何でこれをプレゼントしてくれた訳?」

「はい、これからランページさんにはこれを付けてメニューをこなしていただきます」

「え"っ」

 

まさかとは思ったが、それが的中するとは思っても見なかった。軽く見積もっても2倍は重いこの蹄鉄を使ってメニューをこなす?本当にそれをやれと言うのだろうか……

 

「これからのトゥインクルシリーズで確実にランページさんはマークを受ける側となります、そうなると矢張り大切なのは基礎的な部分の強さになります。ペース変更にも徐々に対応されることになりますから、ランページさんの素の能力の向上を図ります。その為にこのシンザン鉄を特注したんです」

「つまり、これを使ってランページさんの脚を強化するんですね!!」

「正解ですタンホイザさん」

 

要するに、アニメでマックイーンがやっていた持久力や脚力の強化を行うという事なのだろう。ハッキリ言うと余り気は進まない……進まないのだが……トリプルティアラを掴み取る為にはこの位の努力は確実に必要になるのだろう。ならばやるしかない、こうしている間にもライアンも自分も約束を果たす為に頑張っているのだから……自分だって負けてられない。

 

「分かったよ、やるぜ南ちゃん。その代わり、ちゃんとメニュー頼むぜ!」

「はい、お任せください」

 

早速シューズにシンザン鉄を打って履いてみるのだが……

 

「は、走れない事はねぇがマジで重いなおい!?」

「おおっ!!ガシャンガシャンっていってる!!ロボットみたい!!」

「ねえあれ、実際どのぐらい重いの?」

「4倍ですね、普通の蹄鉄の」

「4倍!?」

「それだけの重さで鍛える……私も試したいですね」

「イクノさんには機を見て発注しますよ」

「グオオオオオ!!?重いぞぉおお!!!」

 

 

 

 

「なんで、何で!!?」

 

焦りの声が木霊する、先頭を走るウマ娘の焦りは手に取るように見える。君の走りは悪くはない、寧ろ良い部類だが―――

 

「ランに比べたら―――全然!!」

『メジロメジロメジロ!!!メジロライアンが追い上げる!!4番手から一気に駆け上がって今先頭を捉―――ない!?あっという間に抜き去った!!瞬く間の出来事に言葉を挟む暇すらありません!!メジロライアン先頭、先頭のままどんどん今度は突き放しに掛かる!!』

「もう、無理ィィィ!!!」

『凄まじい末脚、此処からまだまだ伸びる!?5バ身から6バ身、そのままゴールイン!!!圧倒的な強さでメジロライアンが勝ちました!!』

 

「どんどん勝って行くよ、ラン!!」




えっこの時代にスカーレットバイオレットがあるのは可笑しい?
ンな事言ったらアニメでスペ達が活躍してる時にスマホがあるのも可笑しいから大丈夫!!
大丈夫、俺は気にしない。
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