貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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222話

5月31日、5月最後の日に執り行われる日本ダービー。やはりこの日はレース場の雰囲気全てが違うような気がしてならない、それだけ日本ダービーというのは皆からの認識が違うという事なのだろう。

 

「あの、ランページさん今日はご一緒で良いんですか?」

 

思わずエアグルーヴが一緒に観客席に来るというランページについて南坂に小声で尋ねた。ランページは間もなく渡欧する身でその事は周知の事実、バレたら確実に大騒ぎになるのに今日は同じ観客席にいる。

 

「大丈夫ですよ、ほらっ」

 

南坂が示すと一人の女性がやって来た、白黒のロングスカートのワンピースを見事に着こなしている少々大きめの帽子と色付き眼鏡を付けている。

 

「えっあの人、ですか……?」

「いやだってあれって……」

「えっマジ?」

 

ローレル、アマゾン、ドラランは思わず困惑した。三人は特にそういう感じの姿に見慣れていないので特に困惑している、女性は傍まで来ると指で眼鏡を上げつつウィンクした。

 

「やっほ、遅くなったわ」

「マ、マジで先輩だったんですね……!?」

「結構似合ってんだろ、見た目は良い方なもんでな。普段の印象もあるから思い切って清楚系のメイクもして来た」

 

言われて観たら確り化粧までしている、何も知らない人が見たら良い所の家のウマ娘なんだなぁ……としか思わない、まあ実際メジロ家のウマ娘だから良い所どころか名家のウマ娘なのだが普段の行いが行い過ぎてランページはそんな目で見られていないのが変装では幸いする。

 

「でもさ、それだと声掛けられた時ってどうする訳?」

「そん時は言語を変えて対応する、どうせ日本在住の日本人の区別なんて日本か外国人だ。そして重要なのは日本語が通じるか否か、話せないと解れば基本退く」

「成程、それは言えてますね」

 

そんなこんなをしていると出走ウマ娘達がターフ入りをしていく、観客たちの熱気は更に爆発的に増していく。

 

『さあ次は3番人気、マチカネタンホイザ。皐月賞では3着と確かな実力があります、打倒ミホノブルボンを果たすのは彼女なのか。そして2番人気のライスシャワーの登場です、彼女も同じカノープスとしてミホノブルボンに対する備えは万全なのでしょうか』

『そして此処でやって来たのは1番人気、ミホノブルボン!!無敗での日本ダービー挑戦、二冠が掛かったこの場面でも彼女の逃げが炸裂するのか、それともマチカネタンホイザとライスシャワーがそれを阻止するのか!?期待が尽きません!!』

 

矢張り多くの人が見に来ているのはこのまま無敗の三冠まで行くのではないかという期待とそんなブルボンを超えていくウマ娘の登場、ランページは史実のようなライスのヒール扱いが無いかと不安を少しだけ感じていた。まだ早いかもしれないが、いざブルボンと走るとなるとそれが過ってしまうのだが……要らぬ心配だったらしい。

 

「ライスちゃ~ん頑張って~!!」

「応援してるよ~!!」

「青い薔薇の会一同で応援に来ました~!!」

『頑張れ~!!』

 

「青い薔薇の会?」

「おや、お姉さんも興味あるのかい?」

 

思わず口に出してしまった際に隣の青年に声を掛けられた。よく見てみると胸元にライスが被っている帽子に付けているのと同じ青い薔薇が飾られているのが分かる。

 

「ええ、青い薔薇の会……って言うの?」

 

あのランページが極めて女らしく態度と言葉遣い、そして声で喋っているのだから。そんな姿が元旦にやった配信の挨拶ぐらいだけだからか、南坂以外のカノープスメンバーは驚き、南坂はまあ驚くよなぁ……と苦笑いをしていた。

 

「応ともさ!!俺達はライスシャワーさんの大ファンなんだ!!あの子の可憐な姿、レースとなるとキリッとした凛とした姿のギャップに見事にやられちまったんだ。それで発足されたのがライスシャワー非公認ファンクラブ、青い薔薇の会って訳さ。会員はこの青い薔薇のアクセサリーを胸元に付ける事になってるんだ」

「素敵ね、皆で団結力を高めてるのね」

「ああ、あの子の笑顔は俺達にとっての祝福だからね!!」

 

そのファンの語りは本当に嬉しそうだった。それを聞いて胸を撫で下ろした、ライスにはこれ程までに根強く応援してくれるファンがいる、ヒール扱いなんて絶対にならない。史実のライスだって人気馬だったのは確かだったのだから……そんな事をやっているとゲートインが迫って来た。青い薔薇の会の人に礼を言いつつもカノープスの隣へと行く。

 

「嬉しそうですね」

「まあな……公認扱いにしてもいいんでね?」

「コンタクト取ってみるのも面白いかもしれませんね、ライスさんも喜ぶでしょうし」

「うん、あたしも賛成」

「ターボも~」

 

次々と賛成意見が上がって行く、因みにランページにも確りとファンクラブは存在している。尚、名前は暴君支配下の民の集い。それを知った時、ランページは思わずこれは酷いと言ってしまった。そしてある意味これ以上ない名前だと納得もした。

 

「んで、ライスとタンホイザはどうなると思う?」

「やれるだけの事はやりました、後は天運に任せて見守るだけです」

「天運ねぇ……」

 

曇り空の空を見る、この空によってバ馬は稍重。バ馬が重くなればそれだけパワーが必要になって来る訳だが……ライスもタンホイザもシンザン鉄でパワーは鍛えてある、だがブルボンもそれは同じだし倍数で言えば向こうの方が上。ハッキリ言って条件は同じの真っ向勝負に近い。有利な点は距離が伸びているのでステイヤー気質である二人には都合がいい事位だろう。

 

「にしても上手くいくのか?」

「お二人とも真面目に頑張ってくれました、大丈夫です。信じましょう」

 

自分とターボと共に特訓、それに取り組み続けた二人を信じるしかない。対ミホノブルボン戦法―――即ち

 

『今日本ダービースタートしました、おっとっライスシャワーとマチカネタンホイザが絶好のスタートを切りました。スタートの見本と言っても過言ではないのではないでしょうか、既に2バ身のリードを付けていますが此処からどうなるか。さあ無敗で皐月賞を制したミホノブルボンが行く、此処からライスシャワーとマチカネタンホイザはどのタイミングで仕掛けるかを―――待たないっなんとライスシャワーとマチカネタンホイザ、そのまま行きます。なんとこの二人も逃げを打つのか、日本ダービー意外な幕開けであります!!』

 

「いいスタートを切って前を塞いでしまいましょうってこれって作戦?」

「作戦ですよ、立派なね」

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