貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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227話

スタイリッシュ国際問題、という訳ではないが日本国政府からすれば完全に不意打ちな事になった今回の配信。寧ろ、今回の一件でアイルランドと日本との間により強固な関係が築かれる事となる切っ掛けともなった訳だが……政府からすればこんな切っ掛けなんてもうごめんだ、と言いたいのもよく理解出来る。そんなこんなもありながらもランページは洋芝への適応練習を行っていた。

 

「やっぱ、なんか違うな。日本の洋芝も完璧じゃねえって事か」

 

シンザン鉄を付けながら洋芝の感触を確かめるが、矢張り芝が重いという印象を受ける。日本のバ場は高速環境、スピードが特に必要とされるが洋芝はクッションが高く力をよく吸収するので芝が重く感じられるのでパワーが重要視される。環境の違いこそが日本のウマ娘がぶつかる高い壁と言われているのだが……ランページは特にそんな壁に苦戦する様子を一切見せる事も無く軽快な様子で走り続けている。

 

「んっ~……うし、こんな感じか」

「あらっあっさりと適応出来ちゃうのね。私は結構苦労したんだけど」

 

洋芝への適応が日本ウマ娘の最初の試練である筈なのにあっさりと適応して見せてしまったランページにスーちゃんは自分の時の事を思い出しながらも驚く。自分の時は時間と努力を重ねていた筈だが……今回ばかりはこれまでの苦労が良い影響を出している。

 

「スーちゃん、俺にパワー云々を言うのは野暮ってもんだぜ。こいつとも1年近い付き合いだからな」

 

片足を上げながら言う、シンザン鉄という重量蹄鉄を付けているランページからすれば力など有り余っているレベル。合宿ではこんな蹄鉄を付けた上でマスクを付けて毎日山を登っていたのだから。

 

「確かに無粋な事だったわね」

「走ってればそのうち慣れるだろうし、普通の蹄鉄でもシンザン鉄付けて走ってるつもりで走れば特に違和感なく行けると思うぜ」

「頼もしいわね。来月のKGⅥ&QEステークスも期待出来るわね」

「まあドォンと安心しといてくれや」

 

ドヤ顔を浮かべてから走り出していく彼女を見送る、本当にあんな重い蹄鉄を付けたままよくもまあこの洋芝を走れるものだと感心してしまう。

 

「スーちゃん、こんにちわ!!」

「あらっファイン殿下、こんにちわ」

「むっ~殿下なんて付けなくていいよ~なんせ、私とランページさんとスーちゃんはしんゆ~なのですから!!」

 

むふん♪と付きそうな位のドヤ顔で胸を張るファイン、なんでこうもこの子は可愛いのだろうか。だからと言っても自分の孫達だって負けていない。

 

「可愛いわね~だけど、ウチのル~ちゃんやシ~ちゃんだって可愛いわよ?」

「ル~ちゃんとシ~ちゃん?」

「私の孫なの、写真見る?」

「みるみる~!!」

 

 

「(改めて、クッション性が高いな……普段通りに踏み込んでたら駄目だなこりゃ)」

 

現状の走りの完成度を確かめる為に疾駆するランページ、洋芝の感触を身体に叩き込みながらも日本ではなくこの欧州でするべき走りへと自ら修正していく。

 

「(いや、寧ろ此処ならもっと深く、強く踏み込めれば……!!)」

 

姿勢を低く、より強く芝を踏みしめる。そのまま一気に地面を蹴りながらコーナーへと侵入する、日本の芝では出来ぬような速度だが寧ろこのクッション性は望む所でしかない。それを自分のパワーで支えて速度へと転化する、コーナーを超えて直線に入った際には再加速なんて必要がない位にはトップスピードを維持出来ている。

 

「ふぅふぅ……煮詰める必要があるな」

 

立ち止まりながらも口角が持ち上がってしまう、今のは中々良い感触だった。後はこれを更に煮詰めて完成度を上げて行けば新しい武器にもなり得る、幻惑逃げにも応用出来る、さて、これを見たスーちゃんの評価を聞くか……と其方へと視線をやるのだが……そこではファインとキャッキャウフフと楽し気な笑い声をあげている二人がいた。

 

「スーちゃん、トレーナーとして来てんだからよぉ……」

 

思わず苦言を呈したくなったのだが、相手はアイルランドの姫殿下な訳だから下手な対応が出来る訳も無いか……にしては雰囲気は極めて和やかだし楽し気な感じだが……まあ次の機会に見て貰う事にしよう……タオルで汗を拭いながらも其方に行くと話し声が聞こえてきた。

 

「へっ~これがル~ちゃんとシ~ちゃんなんだね!!」

「そうなのそうなの、ル~ちゃんは責任感が強いんだけど子供っぽい所が可愛いの。シ~ちゃんなんて普段はちょっとツンケンしてるんだけど本当は私の事が大好きでこの前は一緒にお茶もしたんだけどその時にプレゼントくれたの♪」

「へ~いいな~!!」

 

「……大丈夫かあれ」

 

問題などは起らないだろう、起こらないだろうけど……またシリウスが胃潰瘍にならないか心配になってきた。こればっかりは自分のせいではない、スーちゃんが積極的に自分の孫の愛らしさを熱弁してしまっている……ファインもファインでそれを楽しげに聞いてしまっているのでもうストッパーが存在しない。

 

「お姉様もねお姉様もね!!この前、私のケーキを食べちゃった時なんて凄い慌ててたの、それで自分で新しいケーキを作ってくれたの!!今までお菓子なんて作った事無かったのに、シェフたちに任せないで自分の力だけで作ってくれたの!!」

「あら~素敵なお姉様ね~ファーちゃんはお姉ちゃん大好きね~♪」

「大好き~♪そしてスーちゃんはル~ちゃんとシ~ちゃんが大好き~♪」

「「イエ~イ♪」」

 

何やら通じ合った模様。これがツッコミ不在の恐怖という奴か。

 

「何だ何だ随分と楽しそうじゃないの」

「あっランページさん、あのねあのね、今度日本に行ったらスーちゃんがシンボリ家に招待してくれるって約束してくれたの!!」

「フフフッ意気投合ちゃってね♪」

「そりゃ何より、だけどある程度加減してやらねぇとシリウスパイセン所か会長も卒倒すんぜ」

「フフッ大丈夫よ、きっと楽しい事になるわ♪」

「だと良いけどなぁ……」

 

 

「……な、なぁルドルフ、なんでか急に寒気がして来たんだけど気のせいか……?」

「奇遇だな私もだ……」

「ま、またランページの野郎余計な事をしたんじゃ……」

「寧ろお婆様のような気もするが……」

「ああっ……また胃が……ちょっと胃腸科行って来るわ……」

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