貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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230話

「ここがKGⅥ&QEステークスの舞台、アスコットレース場か」

 

ランページはいよいよアイルランドから出国しイギリスのイングランドにあるアスコットレース場へとやって来た。初めてくるイギリスという事で若干テンションが高めではあるが、改めて考えてイギリスのインパクトありまくりの名物が脳内を埋め尽くしたせいで一気にクールダウンした。ある種冷静になれたとも言えるのだが……

 

「ランちゃん、そろそろ取材始まるわよ」

「うぃ~す。にしても面倒臭いなぁ……適当におはこんハロチャオ~で終わりにしちゃうよ俺」

「それはそれで伝説になって面白いかもしれないわね」

「いや冗談なんだから止めてくださらないかしら」

 

アスコットレース場にやって来たのは自分が走るコースの下見、というだけではない。KGⅥ&QEステークス出走ウマ娘の記者会見が行われる。そこでは出走ウマ娘の紹介やらコース紹介が行われる事になっている、当然出走登録をしている自分もそれに参加しなければならない。ハッキリ言ってしまえば面倒な事この上ない、これもマスゴミ嫌いで基本的に取材を避けて来たツケか……と思いながらもそれに望むのであった。

 

緊張感に溢れている会見の場、一人一人のウマ娘が覚悟を決めているかのような雰囲気になっている。それもその筈、KGⅥ&QEステークスは世界最高峰のレースの一つとして数えられるG1レースなのだから。それに出走するからには自国の誇りを背負っていると言ってもいい、それ程までに重大な重圧の中で平然としているウマ娘なんて―――

 

「此処って禁煙?ハーブシガー吸ってもいい?」

「えっハ、ハーブシガーですか?」

「ああっ大丈夫、アイルランド王室お墨付きの成分検査受けてるから」

「え、えっと……開始5分前までに消していただけるのならOKです」

「分かった、ンじゃ一番端で吸ってるわ」

 

既に報道陣も詰めかけている、撮影許可は下りていないので誰もシャッターは切っていないが……その行動に誰もが唖然とした。この場面でまるで緊張なんてしていないと言わんばかりにマイペースにハーブシガーを吸い始めたウマ娘、そんな姿に呆れたような目で語り掛けるのは彼女の前走で覇を競い合った相手。

 

「ったく相変わらずふてぶてしい奴だなお前、だがまあそういう姿を見れて安心したぜ。初めての海外でガチガチになってるかと思ったら期待外れだったみてぇだな」

 

シュタールアルメコア、前走はドバイワールドカップで8着だが彼女が秘めた力はかの王者の心を一度打ち砕きかけている。油断ならぬ相手と誰もが認めている。そんな相手にも動じずに天井に向けて煙を吐く。

 

「この程度で狼狽えるような食生活は送ってねぇよ、こちとらクラシッククラスの時からとんでもねぇ相手とばっかり会ってんだ。何なら日本の天皇陛下やらドバイの首長陛下、そしてアイルランドの国王陛下とも面談済みだ。そんな俺が今更緊張するか、お分かり?」

「ああうん、そりゃ確かにそうだわ……」

 

それを出されてしまうと確かに納得をするしかない、肝が据わっているというかより厳しい環境を経験しているのでそれと比較したらどうという事はないと言えてしまう精神性を持っているのがランページなのである。

 

「会見開始5分前です」

 

それを聞いて最後の一服を楽しんだ後にシガーを仕舞う。そんなこんなもあって漸く始まった会見、レースが凱旋門に並ぶ程のレースである事が説明されたり、そんなレースにこれ程迄のウマ娘が集まった事は光栄だのと言った事がURAの役員の口から語られる。コースの説明やらが終わると次に各ウマ娘の意気込みが聞かれる。

 

「ハァ~ッハッハッハッハッハ!!これ程迄のウマ娘達と覇を競い合えるとは実に光栄の極み、いやはや流石は私。天上の神々すら魅了し、運命を引き寄せる、ああっ流石は私、このガルニエの歌劇に相応しい舞台だ!!」

 

と、インタビュー開始直後から大声で騒ぎ立てるウマ娘、まあ本人はそんなつもりはなく純粋に盛り上げているつもりなのだろう……まあ実際このレースにも凄いメンバーが居るのも確かだ。ガルニエもそうだがジャパンカップでフローラと戦ったターフホッパー、シュタールアルメコアもいれば、それ以外にも輝きを放つウマ娘がいる。イギリスのダービーステークスでは2着、そして前走のアイリッシュダービーでは従来のレコードを約3秒縮めて12バ身差の圧勝を見せ付けたセイントヴァーダント。

 

「君達と戦ってこそ、私の輝きと美しさ、強さは高まる!!さあ競い合おうじゃないか、神話の神々の争いのように、神々しくも気高いレースを!!」

「なら、一番コメントを取るべき相手がいるのではなくて?」

 

ボソッとした一言が語られた、それこそがセイントヴァーダントのコメントだった。その言葉と共に一斉に視線がランページへと注がれた。25戦25勝の無敗神話、芝2400のワールドレコードを持ち、世界の舞台で芝ダートG1制覇を目指しているメジロランページ、誰もがその言葉を聞きたがっている。アルメコアがおい指名入ったぜ、と肘で突くとランページは真面目な面持ちのまま咳払いをした。一体どんなコメントが出て来るのかと取材陣が固唾を見守り、生放送のカメラも其方に集中した時―――

 

「おはこんハロチャオ~!!」

 

場違いな程に明るく楽しげな声が響き渡った、思わずアルメコアは日本のお笑い並みにズッコケてセイントも思わずガクっと体勢を崩しながらも顔を隠しながらも口元を抑えて生だぁ……という小声を漏らした。

 

「あれ、これじゃねえの期待されたの」

「いやそれもあるだろうけどちげぇだろこの場ァ!?テメェKGⅥ&QEステークスの記者会見の場を何だと思ってんだぁ!!?」

「いや、フリかなって思って」

「何のフリだ!!日本人はテメェみたいのばっかりなのか!?」

 

とツッコミを入れるアルメコアの光景にガルニエは大爆笑。

 

「ハ~ッハッハッハッハッハ!!これは一本取られたね、そうか気高い戦いというのも大事だが僕達ウマ娘にとってレース、走る事は楽しく喜びの舞台でもある。楽しまなければ損、という事だね!!流石は世界のランページ殿だ、エンターテインメントを分かっているねぇ!!」

「あ~うん、そう言う事にしといて」

「出来るかァ!!テメェも何時まで笑ってんだ!!!」

「ハ~ッハッハッハッハッハッ!!」

 

何とも締まらないが、緊迫した空気から一変、和やかとした楽し気な空気で会見はそのまま続行されたのであった。尚

 

「ランちゃん貴方最高!!」

「だろ?」

「アーちゃんからも貴方ならそうすると思ってたwwwってメッセージ来たわ、中継見てて笑ってたみたいよ」

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