貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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239話

アイルランドの国王が催したアイリッシュチャンピオンステークスを記念したパーティ、そこで起きた一悶着。一国の王が主催者となっているこの宴で起きた問題、何時の間にかその中央にランページは巻き込まれていた。いや、彼女は自ら歩み寄ったのだろうか、この先自分が起こす嵐に比べたらどんな問題でも水面を揺らすそよ風に過ぎないと。

 

「君とて、私の同類だろう。ミス・メジロランページ」

「一緒にするな、テメェと俺じゃ違い過ぎるんだよ―――格がな」

 

ラーズグリーズとそのトレーナーであるアンダーセンと仲良くなったりで騒がしくなり始めた会場、その中心にいたウマ娘はラーズグリーズ、ブービーと同じくアイルランドのウマ娘との事。それに絡まれているのはイギリスのウマ娘のシルバーストーン。悪戯好きとされているウマ娘に絡まれたとみるのが妥当、聞こえてくる声もそんな感じである。

 

「何時までもほっとく訳にも行かねぇな……ちょいと行って来るわ」

「ランさんが、ですか?」

「これでも姫殿下には大変なお世話になってるんでな、見過ごすのはなんか違うだろ」

「同郷の者としてそれでは私達も同行しましょう、トレーナーも宜しいですね?」

「無論。寧ろこのような国の恥を放置するなど出来る訳もない」

 

アンダーセンは重い溜息を付きながらも御洒落として持っていた杖を使って重い脚を動かした。如何見ても行きたくないのは見え見えだが、良識ある大人として、アイルランドのトレーナーとして動かない訳には行かない。

 

「折角のパーティなのに怒鳴り声上げてんじゃねえよ、まあ原因は如何見てもそっちにありそうな感じだが……一旦冷静になっとけ。此処にいる面子に見られてるって事を自覚しとけ」

「~っ……!!いけない、そうだった……落ち着きなさい私、冷静になるのよ。頭に血が上っていたら走りも言葉も思考さえも直線的な物しかならない……高加速領域でのそれは致命的……」

「今さら言った所でもう遅いと思うけどね、君の怒鳴り声は此処にいる全員に周知されてしまっているのさ!!」

「っ……!!」

「お前が言うな似非エンターテイナー、原因は誰かって事を十分に考えやがれ」

 

必死に冷静になろうとしている横でごちゃごちゃ言ってまた尻尾を踏んだかのように爆発してしまいそうになるのをランページの言葉を聞いて必死に自分を抑えつける。なども深呼吸をして落ち着いたのか、彼女が挨拶をする。

 

「ごめんなさい、ちょっと頭に血が登っちゃってたわ。ぶつかっておいて人の身体が名前のように石のように硬かったけど怪我はないさ!!なんて言われてね……!!」

「そりゃキレるわ、気持ちは分かるが自分で言ったように直ぐにキレるようじゃ駄目だぜ。何なら飲み込んで煽り返してやれる位の気概でいないとな」

「最もね……って貴方メジロランページ!?凄いわ日本のスーパースターじゃない!!貴方の配信いつも見てるわ、ジャパンカップの時からのファンなの!!あっゴメンなさい自己紹介まだだったわね、私はシルバーストーン。走りの世界で最速を目指すウマ娘よ!!」

「改めまして、独裁暴君のメジロランページだ」

 

荒れている面しか見ていなかった、本質的な部分ではなかなか優等生な印象を受ける。勝気な所もレースに出る身としてはプラスに働く事だろう。仲良くなれそうな気がする、勝負服も自分に何だか似ている気がする。トレンチコートにパンツスーツ、クラッシュブーツと男っぽく映る。

 

「貴方とは一度走ってみたかったのよね!!そして宣言するわ、私はアイリッシュチャンピオンステークスで貴方と大逃げ勝負をして勝ってみせるわ!!そのために此処に来たのだから!!」

「へぇっ俺と逃げ勝負か―――ターボに匹敵出来るかどうか見てやるよ」

「去年のトリプルティアラのツインターボね、彼女とも走ってみたいわ……今年のジャパンカップに名乗りを上げたら彼女出て来てくれるかしら……?」

「望むなら聞いといてやるが?」

「話が早くて助かるわ!!」

 

何とも話しやすい、此処まで話しやすいのは誰以来だろうか……と思っているとシルバーストーンの背後に回ったり、肩越しに顔を覗かせてきているブービー曰く悪戯好きが視界に映る。

 

「シャル、貴方好い加減にしなさい。国王陛下主催のパーティで何をやっているんですか……」

「何、こういった場でこそ盛り上げ役が必要だろう。そう、私のダンスという名目が!!」

「そんな予定は入っていない筈だぞ」

「だからこそサプライズなのさ、私のダンスを急遽行う事で今回の勝利後に行われるライブでの期待も爆上がりという奴さ!!」

 

自信家なのかそれとも唯のたわけなのか何方か読めない。まあガルニエと比べたらまだ大人しい方ではあるだろうが……。

 

「好い加減此方にも話を振って欲しいんだけどな御同輩」

「同輩だぁ?」

「そうだとも、貴方もこの世界を大いに盛り上げる存在。その魅力は走りではなくライブの動きのキレと歌唱力にもある!いやむしろそちらの方が優れている!!この私、シャルウイダンスが保証しよう!!」

 

問題児ことシャルウイダンスはそう言うが……ランページは其方の方面は良く分からない、何せ其方の才能は大本のランページが元々持っていた才能だ。自分はそれを最大限活用させて貰っているだけ。

 

「こうは思わないか、ウマ娘の神髄は走る事ではなく踊る事にあると。しなやかな筋肉とステップ、そして持久力……それらを全て発揮するダンスこそ最高だと!!私にとってレースはウイニングライブの前座だよ、まあその前座に勝利してこそ味わえるライブもまた味わい深いのだがね。配信でも頻繁に歌っている君とて、私の同類だろう。ミス・メジロランページ」

「一緒にするな、テメェと俺じゃ違い過ぎるんだよ―――格がな」

 

また濃いキャラが出て来たものだと思ったがその発言を聞いてブービーは溜息を吐き、シルバーはひっそりと額に青筋が浮かび始めた。何を好きで一番なのかは個人の好みでしかないしそれを他人がとやかく言う資格はない、無いが―――言いたい事はある。

 

「お前がレースよりライブが好きなのはよく分かった、だけど俺はレースが大好きで前座なんて思った事は一度もねぇ。俺の走りに夢を見てくれる奴の為にも俺は走ってる。ライブだろうがレースだろうが全力でこなすのがランページさんだ、やるからには全力で取り組んで自分の最高の仕事をする。お前にもポリシーがあるだろうが……誰かにとっての魂を前座扱いする奴に俺は負けねぇよ」

「言ってくれるね、ならウイニングライブでは私の後ろで踊る屈辱をプレゼントしよう。私の前座という舞台で初めての敗北を、添えてね」

「ハッ言ってろ。後一言言っとくぞ」

「何だい、これ以上何を言う気なのかな?」

「お前の後ろに般若になってる人がいる、お前のトレーナーか?」

「え"っ」

 

それを聞いた途端、錆び付いた歯車のように鈍くなった。ギギギッという音が出そうな程に鈍い動きで振り向くと刹那、アイアンクローが飛んできた。シャルの顔面を捉えてそのまま片手で持ち上げた。

 

「問題、起こすなって言わなかったかな。聞いてなかったのかなぁ……可笑しいなぁ国王陛下主催のパーティだからって厳重に言ったよね、それに頷いたよねぇ……!!?」

「いたたたたたたたっギブギブギブギブゥ!!?ア、アイアンクローは、アイアンクローはやめろぉ!!君の握力はとんでもないんだからっていったから今、私の頭の骨がミシッて音を立てたぁ!!?」

「安心しなさい、私は人体の限界に詳しいんだ。まだまだ行ける……さあっ向こうの部屋を借りてあるからそこでじっくりと、話そうか……」

「ラ、ランページ助けてくれぇ!!シルバーストーンさっきの事は謝る、謝るからこの暴力人に釈明をぉ!!」

「反省の色なし……これは出走取消かなぁ」

「本当にごめんなさいぃぃぃぃ!!!」

 

そのままアイアンクローで持ち上げられたまま、連れ去られていくシャル。余りの光景にシルバーと一緒に目が点になってしまった。ブービーは溜息混じりに何とか間に合ってくれましたか、と胸を撫で下ろしながらもアンダーセンに感謝を述べる。

 

「国王陛下には彼女のトレーナーから厳重注意を受けさせるという事で納得していただいた。全くシャル君の悪癖にも参ったものだ……」

「トレーナーさんの目を盗んで迄あんなことするんですから筋金入りですね」

「いやいやいや、何よ今の!?片手一本でウマ娘を持ち上げてたわよ!?」

「シャルウイダンスさんのトレーナーさんです。なんというか、ストッパーというかブレーキ役というか……」

「……後で胃薬でも差し入れっかなぁ……」

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