貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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245話

様々な意味で波乱含みとなった凱旋門賞出走ウマ娘の記者会見。中にはド天然をかまして波乱を生み出したウマ娘もいるが……それ以上に今年の凱旋門を早く見たいと思わせるだけのものがそこにあった。

 

「―――お久しぶりです、スピードシンボリ様」

「そんな言い方しないでくれると嬉しいわ、身勝手かもしれないけど私はまだあなたのお婆ちゃんのつもりよ」

「……お婆様、また会える日が来るなんて思いませんでした……ルドルフは、元気でしょうか」

「元気よ。今この場に居ない事が実に残念だわ」

 

記者会見の後、ランページは約束通りにオルタをスーちゃんに引き合わせた。その姿を見てオルタは込み上げて来た熱を抑え込みながらもクールに振る舞って見せたが、抱きしめられた事で破顔して笑みを作りながらもスーちゃんと向き直った。

 

「本当にごめんなさいね……あの時に、私が確りしていれば……」

「気にしないでください、私は今こうある事を誇りに思っています。そしてまたこうして会えた……それだけ満足です」

「有難うね……フェーちゃん」

「……懐かしい、響きですね」

 

オルタナティブセブン、それは渡英してから改めた名前。本当の名前はシンボリフェザード、もう名乗る事はないと思っていたその名前に思わず頬が緩みこの瞬間だけはシンボリのウマ娘に戻れた気持ちになった。そして抱擁を楽しみ終わるとランページに向けて頭を下げた。

 

「有難う……貴方が海外に挑戦しなければ、私はもう一度お婆様と会う事も出来なかっただろう」

「よせよ。俺は何もしてねぇよ、自分で掴み取った今なだけださ。それと―――会長、ルドルフとは仲が良かったみたいだな」

「日本に居た頃はよく遊んだ。シンボリの中では寒門の出だったのにも拘らず、手を取ってくれた」

 

全てのウマ娘が幸せに暮らせる世界を目指す会長らしい、その時は幼い頃、所謂ライオンとか言われてた時の頃だろうか。

 

「子供の時のルーちゃんはヤンチャだったわね、私からすれば可愛い子だったけどよく一緒に遊んで遊んでってせがまれたわねぇ」

「あの会長にそんな頃がねぇ……」

「そういえば、よくルナライオンだぞ~っといいながら遊んでいたな」

 

「へっきゅっ!!」

「あら、珍しいわね貴方がくしゃみなんて。誰かに悪口でも言われてるのかしら」

「かもしれない、な……済まないがそこの薬を取ってくれ、ついでに胃薬も」

 

「実はね、凱旋門賞にはルーちゃん来る事になってるの」

「ルドルフが……?」

「貴方に会いに、という訳じゃないけどそこのランちゃんの応援に駆け付けるみたいよ」

 

そう言いながらもスーちゃんは告げる。恐らく、近代の日本ウマ娘の中で最も凱旋門制覇の可能性が高いウマ娘であり、シンボリの大御所である自分の祖母迄もがそこにいる。様々な意味でじっとしていられないという奴だろう、如何やら理事長同伴でやって来るらしい。

 

「凄いな、日本のトレセンの理事長が直々に激励に来るのか」

「応援というかお目付け役じゃねえの?だって渡欧したと思ったらアイルランド王族の所でお世話になってて、日本とアイルランドの距離を凄く近くしちゃってるようなウマ娘だぜ。もう今度国レべルの何かが起こったら溜まったもんじゃねぇからって監視だろ、サーバーもよく落とすしな」

「ああそれもあるらしいわ」

「ですよね~ご期待通りに今度はイギリスの女王陛下と配信でもするかハッハッハ~冗談だよ」

「必要ならば紹介するが?」

「お願いだからマジにしないで」

 

オルタはイギリス王室が主催するプリンスオブウェールズステークスを2連覇している、その関連で女王陛下と会った事もあるし共に写真を撮った事もある。なのでやろうと思えばトレーナー経由で王室に連絡を取り、ランページがお会いしたいと話を付ければ普通に通ってしまう可能性は高い。尚、そうなったら色んな意味でやばいので流石にランページも自重した。

 

「そうか……陛下もお喜びになると思うが……」

「ハ、ハハハハッ……き、機会があったらという事で」

「分かった。なんとかお伝えしておく」

「ランちゃん、なんか盛大にフラグを立てちゃったんじゃないの?」

「……し~らね……」

 

そんなこんなでランページは一旦、オルタとスーちゃんの二人っきりにしてあげる事にした。一度確りと話し合う事も大事だろうと気を利かせて、彼女は適当な場所を見つけてハーブシガーを銜えた。煙を吐こうとすると隣から別のシガーの香り、顔を向けるとそこには同じようにシガーを銜えているエルグッツの姿があった。

 

「やっほっこんな所でチャンピオンが何やってんの?」

「ブーメラン乙。凱旋門ウマ娘に言われたくねぇよ」

「私はほら、前年度覇者としてのインタビュー終わったから締めの一服。そっちは?」

「今吸ったら絶対に美味いと思ったから吸おうと思っただけ」

 

実際、シガーの味がかなりいい。それに続くようにエルグッツも煙を吐いた。

 

「長かった……ジャパンカップで貴方のワールドレコードに敗れて砕かれた誇り、傲慢、自信。悔しさにのたうちながらも唯々再戦の時を願って己を磨き続けた日々の吼え、叫び……それが漸く報われる」

「どこの悪の親玉だおめぇ。お前はあの時言ったな、日本じゃなくて今度はこっちで勝負だと。地の利さえあれば俺に勝てると踏んでた訳だ」

「そう言われると痛いなぁ……」

 

ネイチャの日本ダービー前に交わした電話。どうしても自分と勝負したいから今年の凱旋門に来てくれという要請、ジャパンカップという国の名前を背負ったレースと同じく凱旋門はそれに負けない位に最高の舞台。そこでもう一度勝負したいというのが当時のエルグッツの言葉。

 

「んで今は如何だ、俺に勝つつもりか」

「当然。じゃなきゃ凱旋門制覇してまで待たないよ」

 

エルグッツにとっては凱旋門を制覇した事さえも彼女に勝つ為の自分を作る為の踏み台でしかなかった。自信を持って言える、今此処に立っている自分は自分史上最強の自分だと。

 

「貴方は如何なの、勝つつもりで此処に来た?」

 

その質問にハーブシガーを深く吸い、大きく煙を吐いてから応える。

 

「ウチの南ちゃんへのお土産は凱旋門の置物って決めてるんでね」

「そうなんだ、負けたとしても私の上げようか?」

「要らねぇよ」

 

そして―――凱旋門、来たる!!

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