「という訳なんで、祝勝会は帰国からしてくださいや理事長」
「説明ッ!!我々に説明を要求する!!」
「私も是非とも聞きたい」
「凄い圧掛けて来るねぇハテナ」
「ミャァ」
インタビューに応えたランページは一旦控室に戻ってスーちゃんと合流しようとしたのだが、そこで理事長とルドルフに詰められる事になってしまった。想像以上の圧にハテナに愚痴を零す、因みにハテナはランページがいる時には頭に乗るようになっている。
「説明も糞も無いでしょ、あそこで語った事が全てですよ」
「ムゥゥゥッ……君は一体何処まで行くつもりなのだ?」
「俺の行きたい所にですよ」
「その答えが正しく君だな……」
流石のBCクラシック挑戦の表明には理事長も頭を抱えていた、シンプルにこのまま自分達と帰国する物だとばかりと思っていたので色々と手配を進めてしまっていたのだが……その変更やらをしなくてはいけなくなった。ルドルフは語った言葉、ダートで走るという言葉から何とか答えを捻出しようと必死になった。
「君は、アンブライドルドとの再戦を望んでいるのか」
エルグッツというジャパンカップでの前例を踏まえて考えると考えられるのはダート最強の称号を手に入れたアンブライドルドとの再戦、アメリカという彼女のホームグラウンドでの再選を望んでいるのでは―――と思ったのだが
「ルドっさん?いや別に」
「……あれぇ?」
全く以て的外れだった為か、思わずルドルフも変な声を出してしまった。まあこればっかりは分からなくても当然だろう。
「俺の相手は―――レディとダイナ、この二人だぜ」
「おおっ!!あの二人か、初のアメリカG1制覇を成し遂げてくれたあの二人とのか!!」
同じドバイワールドカップに出走した仲の二人、そのレース後に決めた事。レディは自らの刃を鍛える為の武者修行としてアメリカへ、ダイナはかしわ記念で勝利を挙げてから宣言通りにアメリカへと渡っていった。アメリカに渡った理由は唯一つ、ライバルに勝つ為の強い自分を作る為だけ。レディはアメリカG1を日本ウマ娘として初勝利という栄光を勝ち取った、だが当人はそんな事はインタビュアーに指摘されるまで全く気付かず、興味も見せなかった。
『―――ああそうか、私が初勝利だったのか……まあ頂いておきます。これはこれであの人に並べる物を作れたことでもありますし』
『い、意識はされてなかったと?』
『全く。武者修行の為にアメリカに来た訳ですから』
貰えるものは貰っておく程度のスタンスだったレディ、アメリカでは日本のウマ娘がまたやったぞ!!と話題になり、それは日本にもやって来た。生憎、自分のせいで自分ほどの話題にはならなかったらしいが……ダート界隈は大盛り上がりだったらしい。それに続いてダイナもアメリカに殴り込みを掛けて結果を出している。
「俺にとっては二人はダートの絶対的なライバル、二人が俺と戦う為にアメリカで鍛えた力を肌で、走りで感じたい……それだけです」
「成程、私としてはそんな言い方をされてしまっては口を挟む事は出来ないな」
ウマ娘にとってこれ程までに闘争心を掻き立てられる物はないだろう。ライバルと最高の舞台と競いたい、それだけで理由としては十分過ぎる。理事長も納得!!と頷いた。
「しかし、かなりのハードスケジュールではないか?休養を踏まえると全く時間が無いが」
「エリ女からジャパンカップとかチャンピオンズカップに比べたら時間あるから余裕っすよ」
「君の場合それを引き合いに出せるのが極めてズルいな」
これまでハードスケジュールばかり組んで来たランページ、それによって身体は鍛えられているのか回復力も高くなっているので恐らく問題はない。この後は一旦アイルランドに戻ってそこで徹底的な回復メニューに勤しんでからアメリカに行くスケジュールになっている。
「では、君は日本には戻らずにアメリカに行くのか?南坂トレーナーに会わずに」
「会っても良いんだけどねぇ……そうしたらスケジュールがキツいだろうからパスしときます、向こうだってその位は分かってるだろうし……ライスとタンホイザの菊花賞にも間に合わせたいしな」
BCクラシックの日程は10月31日。そして菊花賞は11月8日。極めてギリギリ、ライスの晴れ舞台を見逃すなんて事はお姉様としてはあってはならないのである。それを聞いて理事長とルドルフは一瞬呆けるが、直ぐに微笑ましい表情を浮かべた。
「君は本当に後輩思いだな」
「ウムッ!!このような偉大な先輩を持てたカノープスは幸せだな!!」
「褒めても何も出しませんぜ、凱旋門制覇記念トロフィーは南ちゃんへのお土産にするって出国する前に決めてるんで」
「本当にランちゃんは南さん大好きっ子よね~」
一番温かい視線を投げかけて来るスーちゃん。彼女からすれば孫同然の子がライバルとの対決の為にハードスケジュールなんて関係なしに渡米をしようとしているのだから色々と込み上げてくる物がある。本当にこの子は何処まで自分達に夢を与えてくれるのだろうか。
「これで勝ったら、ランちゃんは正真正銘の芝ダートの世界王者ね」
「芝って凱旋門だけで認定されるもんなの?」
「あの最悪の不良バ場でワールドレコードを出されたら認めるしかないと思うよ」
困った顔でそう語るルドルフに言われてみたらそうかと納得する。我ながら本当にとんでもない事をしてしまったのだな……と思った、まあ反省も後悔もしていない。
「さてと、理事長と会長時間あります?」
「時間?ああ、数日は此方に居る予定だった上に完全なオフにする為に頑張って仕事をしたからな」
「私もだ」
「おはこんハロチャオ~!!貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、勝利の凱旋!!奇跡、神秘、真実、夢、誕生!!無敵の~すんごい伝説、なランページだぜい!!皆の者~善行積んでたか~?」
「おはこんハロチャオ!!一度言ってみたかった!!日本トレセン学園理事長、秋川 やよいである!!」
「おはこんハロチャオ、此処に来るのは結構久しぶりだな。シンボリルドルフだ」
「おっはこんハロチャッオ~♪スピードシンボリこと皆大好きスーちゃんよ~♪」
「今日は凱旋門制覇記念という事でこのゲストでやってくぞ~♪皆の者、ついて来れるかな~?」
視聴者は問題なかった、サーバーが駄目だった。