貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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253話

独裁暴君、自由の国へ

芝ダート、完全統一へ挑む

 

そんな仰々しい見出しと共にプライベートジェットから降り立つランページの姿をとらえた写真が載せられている新聞を広げているライス。尊敬と敬愛、憧れ、様々な物を抱いているお姉様のアメリカ到達に遂に着いたんだぁ……という不思議な気持ちが沸き上がって来てしまった。

 

「あっライス如何したんだ?」

「新聞買うなんて珍しいね」

「あっターボさんにネイチャさん、うんっ購買で目に入ったから買っちゃったの」

 

カノープスの部室で広げていたのもあるが、やって来たターボとネイチャの目にもそれは当然のように止まった。

 

「いやぁホントにランってば何処まで行くつもりなのかねぇ……」

「ターボも負けてられない!ターボも来年は海外に挑戦する!」

「簡単に言うなって、簡単なもんじゃないしトレーナーへの負担とかどうすんのよ」

 

そんなじゃれ合いをしている中、ライスは愛おし気にランページがカメラに気付いて腕を立てている写真を撫でた。本当に凄い、自分の事を信じられないと告白して代わりにライスを信じる自分を信じろと言われた時からずっとあんな風になれたら、と思っていたが……何処まで高みに駆けあがっていくんだろうか……。

 

「失礼しますっと、何やら楽しそうですね皆さん」

 

そこにやってきた南坂にターボは海外遠征したい!と宣言、南坂はそうなるとまた代理を探さないといけませんねぇと返し、ネイチャは真面目に受け取っちゃ駄目でしょとからかいを含めた言葉を掛けてターボに何を~!?とじゃれ合う。そんな光景を見つつ、ライスはランページの事を思う。

 

「頑張ってね、お姉様」

 

 

 

「という訳でやってきました自由の国アメリカ、USA!!」

「テンション高いわね~」

 

アメリカにやって来たランページのテンションは基本的に高かった。一回で良いから来てみたかったという気持ちがある、まあその内情はバカみたいにデカいハンバーガーを食べてみたいという極めて俗物的な理由ではあるのだが……今回の目的はBCクラシック出走の為。

 

「これで勝ったら、紛れもなくランちゃんが世界王者ね」

「そんな偉ぶる気はサラサラないけどな、これでも小市民なんでね」

「メジロ家の御令嬢よ貴方一応」

「こんな柄の悪い令嬢が居て堪るか」

 

と軽く悪ぶってみせるがランページも事の重大さは理解している。事実上この競走は世界のダートチャンピオン決定戦といいほどのスーパーレース。ドバイワールドカップ、そして凱旋門を制覇しているランページがこのレースを制覇すれば……芝とダート、その双方の頂点を極めた事になり得てしまう。当然ダート競争の本場であるアメリカは総力を決して阻んでくるだろう。しかし、それもランページを掻き立てるカンフル剤にしかなり得ない。それ程までに今のランページは出来上がっている。

 

「さてと……あっランさん!!」

「おっダイナじゃねえか」

 

ホテルへと到着したランページ、早速受付を済ませようと思ったのだがそこで会ったのは丁度戻ってきたダイナであった。ダイナは嬉しそうに駆け寄るとランページとハイタッチをする。

 

「アメリカでもレディと一緒に暴れ回ってるらしいな?」

「いやぁ連対外してないレディさんに比べたら私なんてまだまだですよ」

「そう言いながら貴方だって掲示板外してないわよね?」

「ア、アハハハハハッ……」

 

アメリカでの戦績は4戦2勝。しかしその成績は決して悪くはない、初戦は4着、続いて3着と来てそこから連続で1着を取っている。レディはレディで1着を取れていないレースは全て2着でアメリカ遠征中は連対率100%という事をやっているがダイナも十分過ぎる程に優秀な部類である。

 

「凱旋門、おめでとうございます。あのインタビュー見て私も滾りましたよ」

「そりゃどうも、決着を付けてやるぜお前と」

「望む所ですよ」

 

レディとダイナはある種畏怖の目で見られている。何故ならばアメリカにいる間もずっと自分はランページに勝つ為の修行の為に此処に来たと公言していたから。世間一般的にランページへの評価は怪物か化物、そんな相手と真っ向から戦おうとしている二人は恐れられている。

 

「それでいつ練習には顔を出します?私はもう今日は終わりなんですけど」

「流石に来たばっかだからな……今日はじっくり休んで明日から―――「ダイナ!!」あん?」

 

自分の予定を話そうとしていると一人のウマ娘がダイナに向けて駆け寄っていった。ウルフカットの赤みがやや強い黒鹿毛をした人懐っこそうな笑みを浮かべている彼女はダイナに向けて声を掛けた。

 

「今日はもう終わりなの?明日も一緒にトレーニングしよ!!」

「勿論!!」

「なんだ元気な友達が居るもんだなダイナ」

「えへへっそう言われると照れますな~」

 

と頬をかく彼女をダイナが紹介してくれた。

 

「えっとこの子はこの前のレースで一緒に走って友達になったインディです」

「どうも~エーピーインディで~す」

「応、メジロランページだ」

 

エーピーインディ。史実ではシアトルスルーの代表的な後継種牡馬として知られる名馬であり日本のダート界にも大きな影響を与えており、その産駒にはシンボリインディも存在する。G1とG2の重賞を含む7連勝を達成しており、ランページが出走するBCクラシックで勝利し、エクリプス賞年度代表馬にも選出された。

 

ダイナは彼女とはジョッキークラブゴールドカップに出走した際に激突し、この時はダイナが勝利を飾っている。その縁で仲良くなったらしい。

 

「貴方がメジロランページかぁ……ダイナがね、貴方に勝つ為にアメリカに来たって凄い言ってるんだよ」

「おいおい、何宣伝してんだ」

「いやだって事実ですし」

「でも私は感謝してるよ」

 

唐突な言葉にランページは驚いた。それに対してインディは真っ直ぐな瞳見据えながら言った。

 

「私、ダイナに負けたんだ。絶対に勝てるって望んだレースで、だから私はダイナに勝ちたい。その為にBCクラシックに出る、悪いけどダイナと勝負するのは私だから」

 

ランページの事は意識しておらず、ダイナのライバルは自分だと宣言する。初めての経験だが笑って応える。

 

「いいぜ、だけど俺もダイナのライバルのつもりでいる。簡単にライバルの座を譲ってやる程、俺は優しくはねぇぜ」

「ならば走って奪うのみ!!これから一勝負どう!!?」

「アメリカ着いたばっかりだからせめて明日にしてくんねぇかな」

「エ~!?今から勝負!!」

「ダイナ~お前のライバルに何とか言ってやってくれ」

「そこで私に振るの!!?」

 

そんなこんなでランページのアメリカ遠征の始まりは何とも賑やか且つ奇妙なスタートとなったのであった。この後、レディもやって来て一悶着あったりもしたが―――

 

「「「おはこんハロチャオ~♪」」」

 

三人で配信はやった。




h995様よりエーピーインディを頂きました。

史実馬ですが、採用させて頂きました。有難う御座います!!
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