貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

261 / 634
261話

正しく世界に激震が走った瞬間だった。アメリカのダート最強決定戦、ブリーダーズカップクラシック。此度の開催におけるそれは世界のダート最強決定戦と言っても過言ではないものだった。ダートの競争の本場、アメリカとしては国の威信をかけていると言っても過言ではないそれを制覇したのは凱旋門を制覇し、アメリカへとやって来た日本の暴君、メジロランページだった。凱旋門開催史上最悪だったとされるコンディションでワールドレコードを叩きだして日本初の凱旋門制覇ウマ娘となった未だ無敗のウマ娘。

 

そんなウマ娘を迎え撃つに当たってアメリカも最高のメンバーが出走を表明したが、アメリカに渡り自らを鍛え続けていたウマ娘もいた。レディセイバーとアメイジングダイナの二名。ランページに勝つ、ただそれだけの為だけにアメリカに渡り殴り込みを掛けて来た。結果G1勝利も成し遂げた二人もBCクラシックに出走を表明、一抹の不安がある中で行われたそれを制したのは―――

 

『ブリーダーズカップクラシック、世界最強決定戦を今、日本の暴君が完全制覇ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!凱旋門に引き続き、ダートの最強の称号を手にしたぁぁぁぁぁあああ!!!そして2着には―――えっレディセイバーとアメイジングダイナが同着!!?4着にアームドリンクス、5着にエーピーインディ!!』

 

暴君、メジロランページ。そして二着には同着でレディセイバーとアメイジングダイナ、4着にはニュージーランドのアームドリンクス、アメリカウマ娘の最高地点が5着のエーピーインディという予想だにもしなかった結果となった。紛れもなくアメリカダートウマ娘界の敗北の瞬間だった。日本というダートが下火であった筈の国のウマ娘に本場が敗北した……信じられない事象だったが完全に敗北と屈辱を認める他なかった。何故認めるしかなかったかと言えば

 

「ランページおめでとう!!祝福させて貰うよ、無理をしてスケジュールを開けた甲斐があったな!!」

「ああそりゃどう―――おい好い加減にしろよ大統領フリーダムすぎんだろ」

「ハッハッハッハッ!!フットワークの軽さと仕事の手早さは誰にも負けんさ!!」

「もっと公務に向けなさいよ!!?」

 

なんと、このレースをアメリカ大統領がプライベートで、家族を連れて観戦していたのであった。その場で大統領は息子と娘にサインをして欲しいと強請ったりとやりたい放題だった、がそこに一人のファンが声を投げた。

 

「大統領何でそんなに笑ってられるんだ!?私達の、私達のウマ娘が負けたのに、完全に負けたのに!!」

 

自国のウマ娘の敗北に嘆くよりも、他国のウマ娘の勝利を喜ぶ姿が理解出来ないと叫ばれた。それに大統領は堂々と答えた。

 

「勝負事に絶対はない、あるのはルールに基づいた勝者と敗者だ。彼女は不正を働いたわけでもない、堂々と勝負をして勝利をもぎ取った。それを称賛せずにどうしろというのだ。そして嬉しい限りじゃないか、私達は挑戦者となれたのだ。今度は我々が、我々の手で頂点を奪還する番だ。そうではないかな皆、遥か頭上に輝く星を目指したくはないか、そこに立ち、勝利の声を上げたくはないか。私はあげたい、だからこそ一時の敗北を真摯に受け止めるべきだ、そして次は―――君達の勝利を祝わせてくれ!!」

 

この結果を一番理解し、悔しがっているのは大統領自身。だが敗北は決して悪いモノばかりではないのも確りと理解しているが故に直ぐにそれを受け入れた。そして即座にその場で問いかけたのだ、あの記録に挑戦したくはないか、自分が今度はあそこに立ってみたくはないか、人の心を刺激し、闘争心を掻き立てるその演説にエーピーインディを始めとする彼女達は沸き立った。そして今度こそ勝ってみせる、アメリカに栄光をと誓いを立ててみせた。

 

「良い感じに締めてるけどさ、国のトップがフットワーク軽いのは問題だと思いますがその辺りどうお考えで?」

「歴史が長いんだから一人ぐらいこんな大統領が居ても良いじゃない、と思っております」

「実際問題、支持率80%越えだものねぇ……」

「HAHAHA……さてメジロランページ、いや世界を完全統一した覇王とでもいうべきかな?」

「暴君のままで頼むわ、覇王はなんか未来に怒られる」

「良く分からないが分かった、是非君に会って欲しい人がいる」

 

一先ず、ライブ前の休憩時間に会う事になった。が、大統領が会って欲しいという人物は一体誰なんだ……これ以上とんでもない事になるのかなぁ……と若干白い目になってしまっていた。まあ此処まで来たら行ける所まで行ってやろうかな、と半ばヤケクソになってきている。

 

「一応私は外そうかしら、記者たちの方に当たるわ」

「それなら私も手伝いましょうか」

「大統領にそこまでされるとアメリカのメディアってガッタガタにならないかしら?」

「なったらいい、やり過ぎている部分があり過ぎる」

 

そう言いながら去っていく大統領とスーちゃん。あの大統領の特徴として兎に角動き回る事、何か疑問に起こったら現場に行って直接自分の目で確かめないと気が済まないという現場主義、そしてそれを的確に結果に反映するので抜群に高い支持率を得ている。反対派の意見は大統領らしくないという物だからばかりらしい。そんなこんなで扉をノックする、入ってくれという言葉を聞いてから部屋へと入るのだが―――そこに居たのは二人のウマ娘だった。

 

「待っていたよ、君と是非とも話したかった」

 

輝くような栗毛に誰もが羨むような抜群のプロポーションをした高身長のウマ娘は眼鏡越しに何処か魅惑的な瞳を投げかけてくる、そんな彼女の隣で椅子の背もたれに腕を乗せて待ち草臥れたと言わんばかりに溜息をついているのは……黒い、ウマ娘。ガラの悪さが見て取れる程に目つきも表情も鋭く悪い。

 

「よぉっ面白いもん見せて貰ったぜ、私達のウマ娘が負けたっだとさ!!ハッザマァ見やがれってんだこんな面白いのが他にあるかよ!!」

「コラ、もう少しは言葉を選びたまえ。気持ちは分かるだろうに」

「悪いが選ばねぇな御大、俺は俺だからな。許容はするが理解はしねぇ、現実受け入れられないゴミどもだ」

「全く……済まないな、呼びつけておいて」

「い、いえ……」

 

既にランページはその二人の目星を付けることが出来ていた。一人はその栗毛故に、もう一人はその黒鹿毛故に。競馬についてはそこまでだった自分ですらその名を知っている程に名を轟かせ、歴史に深々と刻みつけた名馬の魂を継ぐウマ娘が目の前に居た。

 

 

二代目ビッグ・レッド(偉大なる栗毛) セクレタリアト

 

偉大なる初代ビッグ・レッドマンノウォー以来久々にその異名を託され、先代と並び称されるアメリカ史上最強馬の筆頭候補。全世界レベルで見ても史上最強馬ランキングの最上位枠に名を連ねる。存在そのものが天の奇跡とも呼ぶものも数多い。等速ストライドと呼ばれる彼女にしか出来ない走法によってベルモントSでは2着と31バ身差*1というとんでもない事をやった上で勝ち時計が2分24秒と、当時のワールドレコードを2秒以上も縮めてしまった名馬。

 

 

運命に噛みついた馬 サンデーサイレンス

 

最早日本の競走馬の血統で彼の血が入っていない事の方が珍しいともされる程の大種牡馬。がその始まりは極めて苦難に塗れたものであった。血統面で優れている訳でもなく気性も悪いと評価も低かった。そして、馬運車が事故にあって生死の境を彷徨うという過酷な運命を強いられた。だが、レースでは自身とは対照的でセクレタリアトの後継とも言われたイージーゴアとの激突を行いながらもビックタイトルを獲得、そしてその後は日本での種牡馬生活を送る事になったのだが……当時は何も知らない日本人がダメ馬を掴まされた、とまで言われる程だったが彼の産駒はそれらを全て吹き飛ばす程に良く走った。今ではサンデーサイレンスの血をどうやって薄めるか、というのに苦心する程に日本の競馬を塗り替えた名馬。

 

 

「(あっれ~それじゃあカフェのお友達って何なん?何、あれガチのサンデーサイレンスのウマソウルな訳?)」

 

ウマ娘としてのサンデーサイレンスが居るのならば、カフェのお友達は一体何なんだろうか……カフェはサンデーサイレンス産駒だしドラマではサンデーサイレンス役として出ていた事もあった。なので産駒の中では一番繋がりが深いとも言える存在だが……もう色々と気にしない方が良いかもしれない。

 

「如何した、矢張り疲れているか?」

「あ~……えっと違います。なんつうか……運命ってホンマ碌なもんじゃねえなって思いました」

「だよな、運命とかマジで死ねって思うぜ。ハッ何だ気が会いそうじゃねえか、んんっ?」

 

平然と肩を組んでくるサンデーサイレンス、まあ確かに自分と彼女は似通っている部分は多いと言われれば多いかもしれない……だが本当に目つきというか存在感がエゲツない。この気性が日本に革命を起こしたと思えばある意味で納得が行く。

 

「ん、んで俺に話があるとか……」

「何単純な興味さ、話したかったんだよ。君という存在と、ね」

「俺は面白そうだから付いて来た」

「は、はあ……」

 

この後、セクレタリアトとたわいもない話をする事になった。ランページはどんな話をするのかと内心構えていたが、いざ話してみれば気さくだったし話していて楽しいウマ娘だった。途中茶々を入れるサンデーサイレンスも気性が荒いだけで男と話していると思えば別に何とも思わなくなった。これは慣れなのだろうか。

 

「等速ストライドかと思った私のトレーナーが君の映像を持ってきたのは始まりだったよ。だがあれは君だけの走りだ、胸を張って誇りたまえ君は唯一無二(オリジナル)の力で世界の頂点に立ったんだ」

「そうか……あんがとございます。俺も貴方と話せてよかったです、サンデーさんも」

「ああ、私も楽しかったよ」

「おいおいおい、何終わらせようとしてんだ」

「えっ?」

「俺は来年から日本に行くんだ、これからも仲良くしてやるから感謝しろよ。後配信に呼べ、命令だ」

「わぁっ」

 

ランページのサーバーが落ちた瞬間だった。

*1
セクレタリアトがゴールした時には、2着のトゥワイスアプリンス、他の馬達は残り100メートル辺りを走っていた。




という訳でセクレタリアトとサンデーサイレンスでした~。

うん、迷ったよ?でも史実基準で話組むとさ、普通にこの時生きてる訳でして出さない訳にも行かないかなぁ……って。

多分あれだよ、ウマ娘世界にウマソウルが行くときに二つに分かれたんだよ、一つはカフェに、もう一つはウマ娘として生れ出たんだよ。多分きっと恐らくメイビー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。