貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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263話

長きにわたる海外遠征、漸く終わりを告げる事になって帰国する事になったランページ。久しぶりに日本の土を踏めることに感動を覚える、此処まで自分に愛国心という物があったのかとさえ思う程には感動をしている自分に驚いてしまう。が、スーちゃんからの言葉を聞いて直ぐにそれが違う事が分かった。

 

「ランちゃんは日本に戻ったら何が食べたい?」

「あ~……卵かけごはんが食いたい、別段大好きって訳でもないけど食べれなかったけどもうすぐ食べれると分かると無性に喰いたくてしょうがなくなってきた」

「あ~凄い分かるわ~」

 

日本の衛生管理は世界一ともされている、故に生卵を食べる事が出来る訳だが……海外では当然それが出来る訳も無かった。いざ日本に着くと分かると無性に食べたくなってきた。

 

「そういえば日本には色んな生食文化って奴があったな、寿司以外にもあんのか……うめぇのかそれ」

「美味いですよ。簡単に作れるけど拘ろうとするとマジで深みに嵌る位には。専用のしょうゆとか色々ありますし」

「……俺も食う」

 

史実でも肉喰ってそうと言われるのも納得な気性難なサンデーサイレンス。それはウマ娘でも変わりはない、が、その一方で偏見だけで物事を判断せずに潤沢に蓄えた知識などによって裏付けされているのが垣間見える。そんなこんなで飛行機でのんびりと過ごしていた一行は遂に日本の大地を踏みしめる事になったのだが―――

 

「おい見てみろ、とんでもねぇ横断幕あるぞ」

「別に予告してないんだけどにゃぁっ」

 

空港へと到着してみたのは……TVでハリウッドスターが来日しました、時みたいな人間の群れだった。最初こそスルーしようと思ったのだが、出国の時は完全なサイレントランを決め込んでしまったので今回ばっかりはちゃんとやろうと思う。自分の存在に気付かれると一斉にたかれるフラッシュに無数の歓声、爆発せんばかりの大歓声が空港に上がった。

 

「ランページィィィ!!」

「やったぜ世界王者ああああ!!!」

「我らが暴君~!!」

『独裁暴君~!!!』

 

と記者たちも必死に声を上げているのだが、それすらを上回る勢いで歓声を上げているのは自分達のファンだった。マスコミの声なんて届かせないと言わんばかりの強烈な物が空港全体を包み込んで離さない。自分達の暴君に無粋な質問など届かせる物かと、自国民が暴君の親衛隊となって立ち塞がったのだ。

 

「ラン、ランページ、さん是非これからのご予定とかを……!!」

 

それでも突破してくる者はいる、それでも精々一人か二人……漸く掴み取ったインタビューのチャンス、負けてたまるかとヒートアップする争いを一瞬で鎮火する存在が日本にも降り立った。

 

「ウゼェのが居やがんな……こいつの疲労はお構いなしにテメェの都合を押し付けるか、ああっゴミ」

「ヒッ……!!?」

 

迫ったマスコミの胸倉を掴み上げ、腕力のみで軽々と持ち上げて問いかけた。己の力なんてこの程度の物でしかない、ならば自覚せよ、理解しろと言わんばかりの言葉に動けなくなった。それを見てそれから手を離した時、一人のファンが声を上げた。

 

「あれって……サ、サッ……サンデーサイレンスだぁぁぁぁ!!!?」

『えええええええええっっっ!!!??』

 

運命に噛みついたウマ娘、サンデーサイレンスの名は日本にも轟いている。アメリカ版オグリキャップとも呼ばれる彼女、数奇な運命に振り回されながらも完璧に整ったライバルを踏み越えるその人生は日本人ならば一度知れば忘れる事の出来ない程に大好物。その声を利用するように彼女は息を吸い込みながら床を踏みしめながら言った。

 

「よおっジャップ共ハッピーか!?俺はアメリカからこっちに移住する事になった、そして俺はこいつが気に入った。此奴に何かバカな真似をしてみろ、俺も相手になってやるって事を覚えとけ!!」

 

まるで獣、獰猛な獣がそこにいる。その庇護に暴君を納めたわけではない、純粋に対等だと認めている。あのサンデーサイレンスが……メジロランページの暴君という異名はその暴力的にまでの圧倒的な実力から来ているが、サンデーサイレンスは文字通りのその気性から暴君とも呼ばれる。名実共に此処に暴君の完全体が完成したと言ったも過言ではない。

 

「さあ行くぜ」

「あ~あ白けさせちゃってまあ……あっいつもの出版社さん、後で取材OKな日メールしとくから」

「あっはい、分かりました……」

「さあさ、行きましょうか~」

 

静かになって良かったと言わんばかりに笑顔を浮かべるスーちゃんとサンデーに連れられて空港を後にする。取り敢えず最低限として何時もの出版社にだけ返事をしておきながらも用意されていたメジロ家のリムジンに乗り込むであった。

 

「にしても日本のパパラッチ共は楽でいいな、少しいうだけで大人しくなりやがる」

「まあその分面倒な所もあるけどね……」

「それでもあの手この手で敷地に侵入してくるくそよりマシだろ、アメリカじゃあドローンまで使って俺の家の中を撮影しようとしたクソまでいたぐらいだぞ」

「わぁっ」

 

リムジンの中でアメリカでの体験談を聞きながらもメジロ家の屋敷へと向かい、そしてそこでは―――

 

「お帰りなさい、ランページ……本当に、本当に貴方って子は……本当に凄い子ね」

 

入り口までお婆様、メジロアサマが出迎えをしてくれた。目を涙で潤ませながらも笑顔で自分を迎えてくれた、その時に思った。この人は自分の家族で、メジロ家は自分の家なんだと……もう当たり前の事な筈なのに漸く、その実感を手に入れる事が出来た。それを察したのはサンデーは肘で軽く自分を突いた。目で言っていた、言ってやれと。

 

「ただいま―――お婆ちゃん」

「っ……お帰りなさい、ラン」

 

ランはアサマに深く抱きしめられた。そして同じようにもう一人、彼女を出迎えたのは―――ライアンだった。

 

「ラン、お帰り」

「―――ああ、ただいまラン」

 

メジロ家に入って数年が経った、そして漸く、この時にランページは……メジロ家だと胸を張れるようになった。それは、親友だったライアンに抱きしめられた事で自覚出来た。

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