貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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265話

「改めて―――祝福、今度こそ祝福をさせて貰うぞメジロランページ!!」

「今度は別に止めたりはしませんよ」

 

南坂から理事長に顔を見せてあげてくださいと言われたので素直に理事長室へと顔を出した。顔を出すと途端にハテナが抱き着いて頭の上に乗った、本当に気に入られていると思うと嬉しい限りである。そしてたづなさんは思わず涙ぐみながらお帰りと言ってくれた、当たり前で素朴なこの言葉が一番嬉しく感じられる。

 

「本当にランページさんには何回驚けばいいんですかね、日本初どころか世界初ですよ凱旋門とBCクラシックを制覇なんて」

「フフン、惚れても良いんだぜ?」

「フフッそうですね、今のランページはとても魅力的です」

 

冗談だと分かって乗ってくれるたづなさんは矢張り美人秘書だ、こういうやり取りもとても楽しい―――

 

「―――……っ!?」

「ど、如何した突然振り向いて!?」

「な、なんか急に寒気が……」

「まだ疲れているのではないですか?スケジュールを考えても弾丸敢行も良い所ですし」

「かもなぁ……」

 

だといいのだが、背筋が凍て付くかのような凄まじい寒気は疲れという言葉では説明がつかないような気がしてならない……いやまあ予想がつかない訳ではないのだがあまり考えないようにしよう。

 

「報告ッ!!現在、シンボリ、メジロ、そしてトレセン共同の祝勝パーティを計画中である!!何せ君は文字通りの世界一のウマ娘なのだ、相応しいものにしなければな!!」

「俺としては教室一つ貸し切ってパーティを開いてくれるだけでも贅沢すぎるんだよなぁ……まあ色々やっちまってるし見栄を張るのも仕事の内かぁ……」

 

何だかんだ滅茶苦茶やったりはするが、その辺りの配慮やら認識も確りとある為に説得も極めて楽なので二人は助かっている。

 

「にしても理事長、サンデーさんは日本でマジ何をするんすか?アグレッサーをさせるとか言ってましたけど」

「それは案の一つにしか過ぎない、そしてアグレッサーという案を出したのは実はかなり深刻な問題もあるのだ」

 

トレセン学園にはスカウト待ちのウマ娘が大勢いるのである。そんな彼女達がトレーナーを得る手段はトレーナーに直接スカウトさせるか、チームの入団テストに合格するか、選抜レースでスカウトを受けるなどに限られてしまう。カノープスが定期的に開催しているレースで改善傾向にはあるのだがまだまだ不十分というしかない。

 

「一応名義貸しという物もあるのだが、それは文字通り名義を貸すだけでそのトレーナーから指導を受けられる訳ではない」

「そうなりますと必然的に自分でメニューを組んでトレーニングをする事になるんですが、自分にはトレーナーが居ないという緊張と焦りからオーバーワークを繰り返してしまって怪我による引退などが待っています」

「それを解決するための、アグレッサーだと?」

「ウムッ!!」

 

広げられた扇子には名案!!と書かれていた。スカウト待ちのウマ娘に引退したトレーナーやウマ娘に教導を依頼し育成をして貰う、それによって実力が伴ったウマ娘との対決をメインに据えた新しい選抜レースコースを構築しようと考えたらしい。これによって実力が十分なウマ娘と発展途上なウマ娘が一緒くたになる事を避けて一人一人に目を向けやすく、そしてスカウトのし易さを向上させようというのが理事長の目論見なのである。

 

「そん為にサンデーさんを呼んだって偉く豪勢っすね」

「決断ッ!!以前から彼女はアメリカにうんざりしていたという噂を聞いたのでな。思い切って切り出してみたらこれが大成功!!」

「んじゃ、俺からマルゼンさんとエースさんに話通しときましょうか?俺の時みたいに教えて貰えるかもしれませんし」

「ウムッ是非頼みたい!!」

 

たづなと理事長は視線を合わせて少しだけ笑った。ランページならばそう言ってくれると思っていた、元々これはスカウト待ちと担当持ちのウマ娘の実力格差を是正する目的もあった。そこにランページのレジェンドウマ娘達のコネクションが合わされば……トレセン学園のウマ娘達の実力が大きく向上する。よりトゥインクルシリーズが盛り上がる事にも繋がるのである。

 

「さてと、ランページ私も君に話しておきたい事があるのだ」

「何ですか日本政府から苦情ですか?」

「それもある、あるが違う」

「あるのか」

 

詫びに何かした方が良いのだろうか、大統領を紹介するとか……まあ絶対に騒ぎになるだろうから止めておこう。そんなバカな事を思っていると理事長は机から書類袋を出し、その中身を出して自分に見えるように置いた。そこにはドリームトロフィーリーグの招待状があったのだ。

 

「君が何時までトゥインクルシリーズで走るつもりでいるかは分からない、だがURAは君が早めに移籍してくれる事を願っているらしい」

「無敗のままさっさと引退しろ、という事で?」

「恐らく……ランページさんの出走数は既に29。引退を考えても可笑しくはない数ですし無敗が揺るがぬうちに夢にしたいという目論見があるんだと思います」

 

言いたい事は分かる。無敗のまま引退するのと敗北がついたのでは大きく価値が異なる。URAは自分をこのまま無敗の伝説として祭り上げ、夢の舞台文字通りの夢とするつもりなのだろう―――冗談じゃない、お前なんかに自分の価値を決められてたまるものかとそう思った時には無意識な行動をとった。招待状を破っていた。

 

「ほほう」

「まぁっ」

 

気付けば招待状をビリビリに破いていた。その動きに釣られてハテナがうずうずとしている、苦笑しながらもそれをゴミ箱に捨てながらもハテナを撫でる。

 

「悪いけど俺はドリームトロフィーリーグには興味が無いんですよね。まだダートの整備も終わってねぇんでしょ、年に2回だけってのは何とも」

「愉快ッ!!君ならばそう言うと思っていた!!」

「同感です。ランページさんならきっとそうだと思ってました」

 

どうやら二人にも自分の行動は読まれていたらしい。何だかんだで二人とも長い付き合いだし、南坂ほどではないが理解度も高い。

 

「だけどまあ、引退を考えてない訳じゃないですよ」

「そうか、どのような進路を選ぶのかは君自身。確りと考えて選択したまえ」

「分かってつもりです、という訳でお二人ともちょっちお耳を拝借しても?」

「あら、また悪だくみですか?」

「人聞きの悪いを言わないでくださいよ、寧ろ良いお話です」

「ほほう?拝聴ッ!!」

 

意味もなくゴニョゴニョと話をする。ワザとらしく二人もふむふむ、ほうほう……と言った言葉を口に出しながらそれを聞いた。そして感想を聞くと……

 

「愉快ッ!!痛快ッ!!天晴ッ!!成程、確かにその意見は確かにそうだ、ハハハハッまたURAを引っ繰り返す様を見物出来るという訳だな!!」

「此方も忙しくなるでしょうね、ですがとてもやりがいのあるお話でしたね」

「フフフッたづなよ、無性に私はやる気が沸き上がって来てしまったぞ……至急準備だ!!」

「はい理事長、ランページさん素晴らしいご意見有難う御座いました」

「いえいえ。ンじゃ俺はこれで」

 

楽し気な声を上げる二人に頭を下げて外へと出る。自分のやりたい事は伝えた、二人も賛同してくれたしやはりその方向を目指すのが自分らしい。何せ自分は暴君だ、他者の指図を簡単に受けると思ったら大間違いだ。誰よりも自由に、速く、高く、楽しく生きようと思っている。その為の努力を惜しむつもりはない。

 

「ラン、これから食堂行くんだけど一緒に如何かな?」

 

振り返るとそこには家族のライアンが居る。何故だろう、以前よりもずっと温かな気持ちになっている自分が居て笑みがこぼれる。

 

「応いいぜ、ついでに他にも誰か誘うか」

「マックイーンとパーマーは誘ってるよ」

「んじゃメジロ家揃い踏みか」

 

ライアンとの距離は、以前より近くなったわけではない。以前からこの距離だった。唯……その距離を行き交う絆が強まっただけの話だ。

 

「ねっ海外の話聞かせてよ。パーマーも聞きたいって言ってたよ」

「んじゃ何から語るかねぇ……アイルランドでナンパされた事とか?」

「えっされたの!?ランをナンパって凄い勇気あるなぁ……」

「如何いう意味だおい」

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