貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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270話

「も~強すぎるよ~!!」

 

そんな叫びを上がった、ライスと共にやって来たコースの傍の芝生に身体を埋めるように倒れ伏しながらも手足をバタバタさせてまるで抗議をするかのようにしているのは無敗の三冠ウマ娘のトウカイテイオーだった。

 

「何騒いでんだよ、お前の声は相変わらずよく響くな」

「アッランじゃん!!そうだランならいけるよね、うんそうに決まってるよ!!」

 

突然立ち上がるといきなり手を取ってくるテイオー、一体なにがあったというのだろうか。

 

「ど、如何したのテイオーさん。何かあったの?」

「どうしたもこうしたも無いよライス!!突然、サンデーサイレンスにコースに来いって言われたから来たらカイチョーにラモーヌさん、シービーにライアンもいるから何事かと思ったらお前の力を見せて貰うぜ、っていきなりレースをさせられたんだよ!!?」

 

思わずああっ……と納得してしまう。先程やって来たサンデーが言っていた日本の三冠の実力を見せて貰う云々という奴をマジでやったらしい。手始めにテイオーと走ったらしい。

 

「ンで如何だったよ、アメリカの走りは」

「いやもう……やばかった」

 

テイオーとてその実力は日本に留まる実力ではなく、世界に出て戦える実力。そのテイオーが全力のテイオーステップと全身走法で戦いを挑んだ、結果は6バ身差での敗北だった。

 

「唯速いだけじゃない、荒々しいのにその奥に洗練された本物の技術が惜しみなく詰め込まれてた。それにあれで現役はダートだって言うじゃん、ワケワカンナイヨー」

 

いつになくテイオーの高い声は沈んだように聞こえた。相手がアメリカで名のしれた超大物である事は分かっていた、だからと言っても本領はダートで芝で負けるとは思っても見なかった。ランページが初めてダートに挑戦した時のウマ娘達もこんな気持ちだったのだかなぁと言葉を漏らすとランは笑いながら東海ステークスの事を思い出すのであった。

 

「あ、あ~ラン~……来てたんだね~……」

「ラ、ライアンさん大丈夫凄いフラフラ!!?」

「ア~ハハ~大丈夫大丈夫……ゴメンドリンク貰える?」

「直ぐ取ってくる~!!」

 

そこへやって来たのはメジロの三冠のライアン、如何やら洗礼が終わったらしいがかなりフラフラなご様子。ライスはライアンが指差したクーラーボックスからドリンクを取って来て戻って来る、それを受け取るとライアンは勢いよく飲み干すとそのまま倒れ伏した。

 

「あ~もう負けたぁ!!」

「ライアンも負けちゃったんだ……」

「うん、4バ身差」

「ムゥッ僕より狭い……」

「おいライス俺にも頼むわ」

 

そんなライアンの隣に座り込んだのは件のサンデーサイレンス、それに応えるように直ぐにライスはドリンクを持ってきた。それに礼を言いつつも頭を撫でてからドリンクを飲む。

 

「テイオー、お前はまだまだ未熟だ」

「ムッこれでも無敗の三冠ウマ娘何だけど僕」

「技術面と肉体面はな、だが精神がダメダメだな。プレッシャー掛けられた程度で揺らぎ過ぎだテメェは」

 

ライアンからテイオーとサンデーのレースの内容を確認してみると確かにその通りだった。張り切って走るテイオーに積極的にプレッシャーを掛ける事で揺さぶりをかけ、それにテイオーが気を取られてしまって満足に実力が発揮できずにラストスパートで全身走法とテイオーステップを出すまでは褒められた内容ではなかったとの事。

 

「だって……」

「真っ当に勝負されれば負けなかったと言い訳するつもりか、日本のレースは面白いがアウトロー(デバフ)に慣れなさすぎだ。正々堂々って言えば聞こえは良いだろうが、そうすりゃ勝てるのに勝てる手段を放棄している事になる」

 

それについてはランページも同意見。日本でデバフを活用するウマ娘は極端に少ない、それはウマ娘としての誠実さの現れでもあるが同時に勝利への飢えの欠如も意味している。サンデーからすればデバフも戦術の一つでありそれを使う事は正当である、寧ろ使わない事への疑問すらある。

 

「相手に苦手を押し付け自分の有利を生み出す、これが戦術だ。ランページの幻惑逃げだってそうだぞ」

「まあそうなるかぁ……」

「日本は妙な所で潔癖な所がありやがんな、なんだこれが武士道って奴の影響か?」

「あ~……否定しきれねぇな……」

 

海外では普通に存在するデバフを基本戦術に組み込むウマ娘、海外遠征をした時にまず躓くのがこれだなと自分は思った。下手すればエースを勝たせる為に複数のデバフウマ娘が出て来るのもあるらしい、まあ自分の場合はそれを返り討ちに出来るので逆に来るなら来いな訳だが……。

 

「まあ兎も角だ、テイオーテメェが海外行く気があるならそれに対する備えを怠るな。テメェなんて今海外に行ってもぼろくそに負けるはずだ。内容的にはライアンの方が楽しめたぜ」

「ううっ……」

「い、いやぁ私はただ自分の走りに徹してただけだから」

「そうそれだ、テメェでテメェの走りに徹する事が出来る。要するに他人に圧掛けられて揺れてるようじゃ真の実力なんて発揮出来ねぇぞ」

 

その言葉はテイオーもライアンも、そしてライスも真剣に聞いていた。他人で揺れるようでは本当の実力は出せない、事実テイオーはサンデーにデバフを向けられて戸惑ってしまって集中しきれなかった。

 

「そういう意味だと菊花賞のライスは完璧だったな」

「ふぇっ!?」

「あの時のお前は集中してただろ、倒すべき相手だけを見て自分は走るだけに意識を向け続けていた。あの状態なら俺が揺さぶっても意味はなかっただろうな」

 

そういう意味ではアームドリンクスが海外で勝ち続けていた理由も頷ける、それに匹敵出来る精神力を発揮したライスをサンデーは手放しに誉めたが肝心のライスは突然の事過ぎて狼狽えてしまった。それにサンデーは悪い笑みを浮かべながらもライスを抱き上げて乱暴に頭を撫でた。

 

「ふえええっ~!!!」

「褒めてんだ少しは喜べこのお米ちゃんめが~!!」

「ふええええお姉様~!!」

「その辺りにしとけよ」

 

サンデーの膝からライスを奪還して自分の膝に乗せる、ライスも嫌がっている訳ではないが力がかなり強かったからか髪が乱れてしまっている。後で整えてやるかと思いつつも優しく撫でるのであった。

 

「そういえばターボいねぇな、あいつは?」

「あいつはジャパンカップに向けての特訓があるって言ってたからな、後回しにすることにした」

「んで、次は誰と走るんだ?」

「そうだな……腹も減って来たし面倒くせぇから纏めて相手してくるか」

「おいおいおい」

 

そう宣言したサンデーはその通りにルドルフ、ラモーヌ、シービーを纏めて相手にしたのだが……結果的に2着のルドルフに1バ身差で1着をもぎ取った。

 

「会長様よ、皇帝だ何だと言われて勘違いしてんじゃねえよ。お前はまだまだ頂点なんざ極めてねぇんだよ、俺達ウマ娘は走り続けんだからよ」

「―――ハハッその通りだ、本当に……ラモーヌ、シービー……久々に本気で鍛え直さないか?」

「……いいわ、私もちょっとその気になったわ」

「同じく……ねえまた走って貰えるよね」

「何時でも来い、また蹂躙してやる」

 

不敵なその笑みに三人は好戦的な笑みを浮かべた、その笑みには自分達はまだまだ走れる、走って今度こそ勝つという思いが込められていた。同時にサンデーは思う、日本のウマ娘は加速度的に強くなっていくだろうと。

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