貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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271話

「ランページさぁぁあん、ご一緒させてってあれなんか勉強中でした?」

「でなくても迷惑だお前は」

「相変わらず辛辣ですねぇ……そういう所も好きですけど」

「死ね」

 

ランページは一人、カフェテリアにて端のテーブルを使って本とノートを広げて何かを書き続けていた。食堂としても機能するカフェテリアだが、その名の通り勉強に使う生徒もいる。その場合には他の生徒達に席を譲る事が前提とされるので隅っこのテーブル席というのが暗黙の了解とされている、まあ食欲旺盛なウマ娘がそもそもカフェテリアで勉強ができるのかと言われた確実に無理なので活用される事のない了解なのだが……ウマ娘らしくも無いランページはそれを大いに活用させて貰ってブラックコーヒー片手に勤しんでいた所だった。そこにある種一番のファンであるフローラがやって来た。

 

「えっと何々……ウマ娘のレースの開催間隔とバ場の関連性について……って何ですかこれ、何かの論文ですか?」

「俺が書いた奴だ、そこに置いとけ」

「ランページさんが書いたんですか!?」

 

適当に取ったレポートの一つ、それ作者には確かにメジロランページという名前があった。題名から見ても極めて真面目且つ堅苦しい内容、少しだけ中身を見ても凄く難しい言葉が並んでいたり関連付けされた内容がパズルのように組み立てられている。フローラは普通に内容が理解出来るのですらすらと読み進めてしまうが、途中で取り上げられてしまう。

 

「まだ未完成品だ、添削も済んでねぇ」

「いや凄い興味深い内容でしたよ、私が読んだ内容までですと誤字もありませんでしたし面白かったですよ?」

「そりゃどうも……てか、お前そう言うの分かるのか」

「一応私の家って結構いいお家柄なんですけど……そりゃメジロ家と比べたら違いますけど……」

 

フローラを見ていると忘れがちだが、アグネスという家は普通に良い家系の一つに入る。メジロやシンボリと言った超有名どころと比較されてしまうと困ってしまうがそれでも名家なのは間違いないのである。実際オークス制覇を成し遂げたアグネスレディーなども名を連ねている。

 

「日本の高速バ場と海外のバ場が齎すウマ娘の肉体への負荷の違い、凄い興味深いですよこれ。一レースごとの消耗率と内枠、外枠の有利性の変化、脚質ごとの違い……しかもこれって全部ランページさんのこれまでのレースから情報引っ張って来てますよね」

「俺は逃げしか出来ないからな」

 

自身の戦績から引っ張ってきたデータ、29戦というレースから全てを比較して出されたデータは信頼性が高い上に海外の芝ダートとの比較まで乗っている。

 

「でもこれって何に使うんですか?まるで大学で出すみたいなレポートですよ」

「URAに頼まれたんだよ、偉大なるランページ殿のデータをこれからの海外遠征に活かさせて頂きたくデータを……って媚びられた」

「ああ……まあ確かに凄い貴重なデータばかりでしょうからねぇ……蓄積したいのは当然でしょうね」

 

ほぼ1年間海外にいたランページのデータはシリウス以上の貴重なデータとなっている、特に凱旋門勝利のそれなど垂涎物。根がひねくれ者のランページが素直に渡してくれる訳も無く、ランページ自身がデータを纏めているのである。

 

「URAだけの問題ならいいが、これから海外に向かいたい連中の助けになるなら全力でやるのが当然だ。連中のやり方なんて知ったこっちゃないがどうせなら俺が纏めようと思ってな。高速バ場云々はURAへの当てつけ」

「だと思いましたよ」

 

恐らくだが、これから自分に憧れて大逃げ転向などを計るウマ娘もいるし自分に肖ってスケジュールを決める者も出て来るだろう。既に史実の松国ローテ*1のようにランページローテという単語がネットで生まれてしまっている。それに対する警告と注意喚起、自分に合う走り方をしなければレコードどころか一勝も出来ずに終わる。それを知らしめるための資料でもある。

 

「何というか、ランページさんって勢いで生きてるって言ってる割に凄い考えてますよね」

「考えてるからこそ勢いの流れを読み取れんだよ、考えなしに勢いで生きてそのまま行けるのは余程の豪運か天性の勘の持ち主だけだ」

 

と言いつつも割と勢いでやっている所もあるが……ランページも豪運の類かもしれない、それが誰と出会うかに振り切れているような気もしなくも無いが……それに次の世代には海外遠征をするであろうウマ娘も入って来る、それを考えれば早めに手を打っておくに越した事はないだろう。

 

「ランページさん、次のレースの予定は?また有記念ですか?それでしたら私も出ますよ」

「考え中だ。アメリカから帰って来てまだそんな経ってねぇんだぞこっちは、もうちぃっと考えさせろ」

「だって走りたいんですもん貴方と」

 

今のように普通に言ってくれれば自分だって邪険にはしないのだがなぁ……と僅かながらに残念に思う。

 

「そもそもだ、俺は凱旋門にBCクラシックも勝ってんだ。このまま引退しても誰も文句は言われねぇだろ」

「それを言われたらそうですけど、やっぱり日本の皆は日本でランページさんの走る姿を見たいと思いますよ」

「走る姿、ね……」

「ええ。だってドリームトロフィーリーグだとオグリさんやタマさんと走るんでしょ、いやぁ気になりますねぇ……って私は行けるんだろうか……?」

「お前一応ジャパンカップウマ娘だろ」

「でもG1一勝なんですよ私……」

 

やっぱり勝たないとなぁ……と呻きながらもアジフライを食べるフローラを見つつ矢張り彼女も自分が走り続ける事を望んでいる事が分かった。当たり前か、自分は夢を見せた、かつてない程に大きな夢を。届かぬと諦めていた夢を、無理だと決めつけていた夢を、出来ないと遠ざけていた夢を、自分は叶えてしまった。そんな自分が何時までも走り続ける夢を見るのは当然の成り行きだろう。そう思いながらも、ランページはノートなどを片付けて珈琲を喉の奥へと流し込んだ。

 

「んじゃゆっくり食えよ」

「あれ、行っちゃうんですか?」

「こっちも色々忙しい身でな、色んな所からお呼びが掛かってるんだ」

「成程それじゃあ帰って来たら私がいやして上げましょうか」

「断固拒絶する」

 

背後から何でですか~!?という声が聞こえるが完全に無視してやる事にする。そのままの足で理事長室へと向かう、中には理事長とたづなが居り自分を見つけたハテナが凄い勢いで駆けよって来て頭に乗っかった。

 

「歓迎ッ!!来たという事は出来上がったのかな?」

「添削は済んでませんけどこの状態で見たいって言ってましたから持って来ました」

「はい、拝見しますね」

 

先程のレポートを二人に渡す。自分の戦績に裏付けされたレポートは二人は興味深そうに見ていた、そして声を上げた。

 

「ウムッ添削などの必要はなさそうと判断するぞ!!」

「でも良かったんですか、ランページさんなら免除されると思いますが……」

「あ~ダメダメ、URAに恩義なんか作る気はサラサラないんで。借りなんて作らないに越した事はないんですから」

「納得です、それではこのまま薦めますが宜しいですか?」

 

そう言いながらもたづなはレポートを受け取ってそのままとある書類をランページへと渡す。それを確認すると自分の名前とサインを書いて返す。それを見て理事長は少しだけ笑う。

 

「フフフッ実に順調ッ!!地方トレセンとの連携も上々、これも君のネームバリューのお陰だ」

「向こうとしても滾るでしょうからね、そりゃ燃えるでしょうよ」

「でも本気で考えるなんて理事長ぐらいだと思ってましたよ私は、ランページさんの力も合って今があるんですよ」

「理事長の行動力があるからこそですよ、そこに俺の人望が無敵ですよ」

「正しく、あっその通り!!」

「「よっ理事長様!!」」

 

歌舞伎っぽく言い放つ理事長に合わせてたづなと一緒に声を上げる。笑い声で溢れる理事長室の仕事机の上にある封筒にはこう書かれていた。

 

『URAファイナルズ、URAレジェンドレース』

*1
雑に説明すればNHKマイルカップを勝って3歳マイル王、日本ダービーで3歳クラシックディスタンス覇者となる事でマイルと中距離(クラシックディスタンス)適性示す事でセカンドライフを確実な物にする事を目指すローテーション。これで大成した競走馬も多いが、屈腱炎などになり引退するケースが多い。




ランページローテ:秋華賞or天皇賞(秋)、エリザベス女王杯、ジャパンカップorチャンピオンズカップに挑戦するローテーション。一か月の間にG1レースを三連続で行うという狂気のようなスケジュール、特にエリザベス女王杯からジャパンカップは中1週となるので普通は考えても実行しない―――が、肝心の本人はそれを2年連続で完遂しているのでいまいち危険性が十分に周知されていない。

ネットだと多分こんな風に紹介されてる。
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