「フゥッ……」
「ンだ、妙に疲れてんな」
「気儘に模擬レースしたり会長煽ったりしているアンタに比べたらこちとら忙しいんだよ」
「それが俺だ」
屋上でハーブシガーを吹かしていると隣にサンデーが腰掛けて来た。その手には笹の葉で包まれたおにぎりがあり、手を合わせてから頬張り始めた。順応が早いというかなんというか……
「つうかアンタはアンタで馴染み過ぎだろ」
「移住してからの基本はその土地の文化に慣れる事だ、これから生きていく場所なんだ慣れておいて損はねぇからな」
「和食は平気ですってか?」
「当然だろ。納豆も刺身も卵かけごはんも全部美味しく食べれるぞ」
順調に畳化しているサンデー、喜ばしく思えばいいのか呆れればいいのか分からなくなってきた。
「ンでアグレッサー役は順調な訳」
「ぼちぼちだな、現状だと俺だけだからな。他にも元トレーナーのおっちゃんが来たりとかしてるがあと数人はウマ娘導入しねぇとアグレッサーっていう構成までは持って行けねぇな」
「誰かいねぇの、一応アメリカのスターウマ娘だろアンタ」
「俺が社交的だと思うのかテメェ」
「思わねぇよ」
だと思ったので理事長も自分にその話を振ったのだろう、マルゼンスキーとカツラギエースにも話は通してあるので暇になればこっちに来てくれるだろう。モンスニーはかなり乗り気だったが今は忙しいので難しいとの事。時間が経てば何とかなるだろう、何だったらサンデーに振ったように自分が海外から引っ張ってくるというのもありだろうし。
「そっちは如何なんだ、URAレースだったか?」
「ごっそり抜けてんじゃねえか……ファイナルズにレジェンドな、順調すぎて忙しいんだよ」
各地のトレセンを回って説明したり、その際に予選となるレースはどうするのか、本選にまで一般校のウマ娘が進んだ場合勝負服はどうするのか、様々な意見が飛び交っているのでそれらを纏めるのも一苦労だ。だがそれでも全てが前向きに協力してくれていると言っても良い、正しく夢の舞台を自分達で作れる上にそこに送り出せる、これ程に滾る話は無かったらしい……何よりも
「URAには極秘裏に進めてるって事がお気に召したらしい」
「日本にもあんのか、地方自治体と中央との空気の差って奴か」
「そりゃあるさ。サンデーさんには分からないかもしれないがオグリさんが中央にスカウトされましたって時が一番ピリついたって聞いた事もある」
中央と地方とはどうしようもない程に深い深い溝という物が存在する。トゥインクルシリーズは中央トレセンを絶対的な渦中として展開される、ローカルシリーズと呼ばれるのは地方、それによって生まれるのは地方は格下、中央は格上というどうしようも無い程に大きな隔たり。それはウマ娘も同様で地方ウマ娘は中央にだって負けない、中央には負けない、絶対に此処から這い上がってやるというハングリー精神が強い場合が多い。望んでいる、正式な場で中央のウマ娘を倒す事を。
だがそんな場は地方交流戦などでしかない、向こうからすればその言い方も気に入らないのだろう。そんな所にランページから齎されたのが中央に殴り込みOKなURAファイナルズという大規模レース計画。しかも中央のURAには内緒の計画、その発案者があのメジロランページ、そんな大物相手の提案を向こうは絶対に無下に出来ず、受け入れるしかないと来ている。それならば乗るしかないだろう。
「URAってのは結構敵が多いんだな」
「でかい組織なら猶更ね、つうかファイナルズの企画だって本来はURAがやるべきことなんだよ。それなのに何で学生の俺主導でやってんだよ」
「奴さん達はお前で生まれた利益を楽しむので忙しいとよ」
「ドバイとアイルランドとアメリカのトップ呼んで泡吹かせてたろうかな」
「応やったれやったれ」
尚、それで泡を吹くのはURAだけではなく日本政府も同じである。余談ではあるが、現在の日本政府の総理大臣の支持率は下降傾向だとか。何故ならばランページの方が外交として仕事してんじゃねぇか!!政府は何やってんだバカ野郎!!という事かららしい。
「俺も出るか、レジェンド」
「えっ~……それ含めるとジャパンワールドカップみたい事になりそうだし、新設のG1として整備した方が早いかもしれん……」
「んじゃお前がそれやれ、やれるだろ」
「面倒臭い事これ以上したくねぇんだけど……」
刹那、脳裏にある光景が過った。一人のウマ娘がフィギュアスケートのトリプルアクセルも顔負けな回転ジャンプを見せながら先頭でゴールを決める姿が……頭を振るってそれを消す。それだけはまずい絶対に不味い、まずいギンシャリなんて需要はない。
「ああそうだ、おい好い加減に配信に俺を出せ。こちとら待ってんだぞ」
「えっ何、マジで出る気なの?本気?」
「マジもマジ、本気と書いてガチと読む」
「あっこれ本気ですわ」
「おはこんハロチャオ~!!貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、勝利の凱旋!!手を伸ばしたら目指してた明日に届きそうなの 指先にはもう触れている、なランページだぜい!!皆の者~善行積んでたか~?」
という訳で御所望の配信を行う事にした。
「いやぁ~やっぱり日本は落ち着くねぇ~やっぱり此処が落ち着きますわ。まあ何よりの理由がコメを喰えるからってのが大きいんだけどさ、あっでもアイルランドも普通に居心地良かったな。親友もいるし今度はプライベートで行くかな?」
| ・旅行先から家に帰って来た時は落ち着くよね、分かります。 ・アオキさんちっすちっす。 ・せめてナンジャモの配信を見てくれジムリーダー。 ・そう言う事言うとまた日本政府がまた揺れるぞ。 ・なんだ、今度はランページの海外訪問か? ・という名の海外遠征か。 |
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「まあそれは置いといて……今日はというか今日もか、うん今日もだな。ゲストが来ておりま~すはい拍手~パチパチパチ~。それでは本日のゲストを呼び致しましょう、その波乱万丈なる人生を乗り越えて運命をすら踏み越えたウマ娘、サンデーサイレンス!!」
「おはこんハロチャオ~元気にしてるかジャップ共!!サンデーサイレンス此処に見参!!俺の事を知らねぇって奴はいねぇだろうな、知らねぇ?だったら今直ぐに調べて来やがれ!!」
| ・うわあああああああ!!!? ・サンデーサイレンスだあぁぁぁぁ!! ・運命に噛みついたウマ娘だぁぁぁぁ!! ・またスゲェの呼んだなぁ…… ・というか、マジで日本に移住してたんだな……。 ・アメリカ阿鼻叫喚なんじゃ…… |
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「知らねぇな、向こうはどうせ俺が出て行った事に清々してるかボロクソに批難してるかの二択だろ。そもそも現役時代から俺を散々扱き下ろしてゴア表現を強めてやがったからな」
「その言い方やめろや、別の意味になるわ」
| ・全くこんな凄いウマ娘を酷評とか信じられねぇな。 ・むしろ応援するべきじゃねえの? ・過酷な運命にも屈することなく突き進むとか日本人的にドストライクだわ。 ・嫌いどころか大好きな要素しかねぇわ ・¥30000 結婚して下さい ・ギルティ |
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「赤スパありがとな朝日レーシングさん、求婚されてるぜ」
「ハッ俺に求婚とは見る目がねえな物好きめ。テメェが本気なら俺の所に来て直接するんだな、そしたら考えてやらん事もねぇ」
配信は折角ゲストに迎えたサンデーサイレンスを中心に行われたのだが、やはり聞かれるのがイージーゴアとの関係。セクレタリアトの後継とも呼ばれたウマ娘、彼女とは現役時代、そして今はどういった関係なのかと聞かれた。
「あいつは俺が持ってねぇ全てを持ってた、向こうからしたら俺が羨ましいみてぇな事ほざいてやがったがンな事は本気で欲してねぇ温室育ちのボケた戯言だ。現役はまあライバル、で良いんじゃねえか?まあアメリカ出るって決めた時には散々止められたがな、決着はまだついてない、私から逃げるのかとかな。格付けは俺の上で決まってるのによ」
最近の配信では珍しく、サーバーは落ちなかった。如何やら海外に行っている間にサーバーが増強されたらしく、持ち堪えたらしい。その後もアメリカのレース事情を解説するなどこの配信は日本のリスナー、そして日本のウマ娘にとっても貴重な情報源となる事になった。
「あっいけね、これタイムシフト入れてあったっけな……」
というランページの発言で阿鼻叫喚となった。尚、ちゃんとONにしてあった。