貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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276話

「ギュンギュ~ン!!!」

 

ターフの上を駆け抜けるターボの走りはいつ見ても独創的だ、同じ大逃げなのに全く毛色が違うのだから面白い。スタートダッシュのキレは互角、だが其処からの加速力はターボ、そしてそのまま走り抜けて中盤終盤での再加速、真・ドッカンターボで一気に他を置き去りにする彼女の走り。故にターボのファンは極めて多い。あんな小さな身体なのにあの暴君と張り合えるだけの大逃げをするのだからある意味で当然だ。そんなターボが走るのはジャパンカップ。

 

「調子は如何だターボ」

「絶好調!!これならテイオーにもシルバーにも勝てるぞ!!」

「そりゃ結構」

 

ターボの調子は絶好調、日本に居ない間にもドッカンターボの精度を上げる為の特訓も続けていたのか本人曰くほんのり溜め方のコツが分かったような気がすると言った。それでもほんのり分かった気がする程度なのか……とランページは僅かに呆れそうになった。一応南坂が見ていたのだが理解度としてはランページの方が高いので見てみる事にしたのだが……

 

「確かにドッカンターボのペースが一定に向かいつつあるな……それでもブレはかなりあるけど、今までと比較すると収束傾向にあるな」

 

試しに統計を取ってみると意図的に早めてみたりと遅めることが出来るようにはなっている、それでもかなり誤差はある上に完全に制御できているとは言い難いが……制御の一端を握り始めているのは確か。

 

「ねえねっシルバーってどんなウマ娘だった!?」

「親御さんがF1のチームのメカニックと調理担当だからか、引退後はそっちに進むって言ってるウマ娘だ」

「へ~なんかそっちに進むウマ娘って多いって授業で言ってたぞ」

「全盛期に走れなくても風を感じたいってウマ娘が多いからレース関係に進みたいって連中は多いらしいからな」

「んじゃ走りは?」

「寧ろそっちだろメイン」

 

シルバーの走りは単純明快。最初から最後まで逃げるスタイル、つまりランページやターボと同じ大逃げスタイル。だが、実際は欧州の重く深めの芝を物ともせずに軽快に走るパワーが最大の魅力。それに加えて雨や風、重バ場と言った悪条件を文字通り蹴り飛ばせるほどの道悪巧者。

 

「なんかランみたいだね!!凱旋門に出てたらいい勝負してたんじゃないかな」

「そういう意見はあるな。実際、あいつ出て来てたら一騎打ちになってた可能性はある、パワーだけに頼るんじゃなくて知識も深いし徹底的に自己管理したフィジカルと合わせた走法を行う理論派でもある。普通に厄介だぞ」

 

日本の芝との相性も良好らしいのであの剛脚が今度はスピードを生み出す事になる。もしかしたら自分のレコードを塗り替えるかもしれない、とランページは考えている。

 

「ターボ、ジャパンカップまでの間はずっと俺がつきっきりで見てやる。ドッカンターボの完成度を高めるぞ」

「任せて!!ターボはトリプルティアラ、ラモーヌやランに続いたウマ娘だもん!!実質メジロのウマ娘だから、頑張る!!」

「ハッ大きく出やがったなこいつ~!!」

 

乱暴に頭を撫でてやる、ターボはわちゃわちゃしながらもそれを受け入れる。やっぱり、ターボは自分にとってもう一人の妹のような存在なんだろうなと思う。ライスとは違って手が掛かってしまう妹、だからこそ可愛げがあってついつい相手をしたくなってしまう。

 

「よしターボ、俺と併走するぞ」

「えっでもいいの、トレーナーから走っちゃ駄目って言われてるんじゃ」

「走りなさすぎるのも身体に毒だ、身体が鈍る。スタート直後は奴さんとの先頭の奪い合いになる、二番手になる事も覚悟しとけ。何、レースなんざ最後に先頭に立ってりゃ勝ちなんだからな」

「成程確かにそうだ……ってそれ、ランやターボが言っていいの?」

「良いんだよ細かい事は、さあ走るぞついて来い―――バカ弟子!!」

「ターボはバカじゃ―――えっ?」

 

その時、ターボは耳を疑ってしまった。これまで何度も弟子を自称してきたがその度にランページには弟子ではないというツッコミをされて来たのに彼女が自分の事を弟子と呼んだのだから。思わず耳に付けていたカバーを外し、それを叩いてからもう一度付け直した。

 

「ラ、ランもう一回言って!!」

「さっさと走るからついて来いって言ってんのよバカ」

「そうじゃないって!!その後、少し後!!」

「生憎俺はお前にエサはやり過ぎないって決めたんでね、言って欲しければジャパンカップに勝ちな」

「っ~分かったターボ勝つ~!!」

 

そう言いながら抱き着いたランの背中は酷く大きかった、頼もしくて暖かくて、大きな背中から感じる温かさは強さと優しさに溢れているように思えた。

 

「テイオーもイクノもネイチャも、お前はブッちぎれ」

「任せろ~!!」

 

『長らく日本ウマ娘が勝利を収める事が出来ずにいたこの舞台、メジロランページがそれを覆し、アグネスフローラがそれを覆してまいりました。今年はどうか、海外からやって来た銀色の彗星、あの暴君と覇を競ったシルバーストーンがジャパンカップを勝利するのか!?それとも鉄の貴婦人、イクノディクタスが同世代の二人に続くのか。無敗の三冠ウマ娘、春シニア三冠のトウカイテイオーが秋シニアの一冠を戴冠するのか!?それとも、ダービーウマ娘として日本の名を冠するこのレースを制覇するかナイスネイチャ!!』

 

ジャパンカップ。ランページの伝説が行われたレースの一つ、今年はどんな伝説が作られるのかと話題が尽きない。なんせ出走ウマ娘も粒揃い、ランページの頃と遜色ない。そして今年は―――

 

『そして伝説よ再びか、菊花賞からやって来た今年の二冠ウマ娘がジャパンカップ制覇を狙います。強者犇めくシニアウマ娘達に宣戦布告、我此処に至れり、ミホノブルボン!!メジロランページのようにクラシッククラスでの制覇なるか!!?』

 

ブルボンが参加している。菊花賞からのジャパンカップ、逃げウマ娘の参加はランページのそれを彷彿させる。もしかしてと思う者が多い為か、ブルボンは4番人気。期待する者も多い。1番人気トウカイテイオー、2番人気シルバーストーン、3番人気イクノディクタス、4番人気ミホノブルボン、5番人気ナイスネイチャと名を連ねる中、遂にターボが飛び出した。

 

「ターボ見参!!」

 

ターボは6番人気、期待としては他の面子としては低めな印象を受けるが当人は全く気にしていなかった。何処までも堂々と胸を張りながらゲートへと向かって行く。

 

「ターボは走るだけ、全力で走る!!」

 

そんな姿を見つめるランページの瞳は何処までも優しかったと南坂は語った。

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