貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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278話

「う~ん悔しい!!」

 

カノープスの部室で改めて一言、と言わんばかりに吐き出したターボの言葉に苦笑する。同じレースに出走したイクノとネイチャもそれには同意する、自分達は彼女に比べたらそこまでではないかもしれないがそれでもあのレースの凄まじさを肌に感じたものとしては感想がその言葉に尽きるのも分かる。

 

「私もあのレースは勝ったと思ってしまいました、7mmとは……近くて遠いというのは正しくこういう事を意味するのでしょうね」

 

テイオーとターボの差はまさかの7mm、そしてシルバーとの差は1㎝。僅か1.7㎝の攻防があった。これは大きく取り上げられて僅か数センチの攻防、伝説のジャパンカップとして大きく取り上げられている。

 

「でも本当にあと少しだったのにね~」

「アタイもさ」

 

もうあれは全員が同着だったとしても文句を言う権利は誰にもない程の刹那的な瞬間の鍔迫り合いだった。何かが一つズレていたらテイオーの勝利は無く、ターボかシルバーが勝利を掴んでいた事だろう。その事にはテイオーもインタビューで確りと触れていた。

 

『今の気持ちは如何ですか!!?』

「う~ん……分かんない、かな。本当に誰が勝っても可笑しくないレースだったよ、ほんの僅かにボクに何かがあっただけでターボやシルバーが勝ったのも十分にあり得た。ボクもまだまだだって事が分かったよ、絶対の帝王なんてまだまだ名乗れないね」

 

「で、でもターボさん凄かったよ」

「ランに色々教えて貰ったのに勝てなかったのだけは悔しいけど、今度は勝つよ!!」

 

ともうすっかりジャパンカップでの勝敗を気にしていないのか元気いっぱいなターボにカノープスの部室は和やかな雰囲気に包まれていた。終わったのだから気にし過ぎずに前を向かっている所は自分達も見習わなければならないと思っている中でローレルが呟いた。

 

「あの、ランページさんは何方に?」

「そういえば先輩いませんね、まだ休養中なんですか?」

「あれだけのハードスケジュールだったわけだからねぇ……それでも可笑しくはない、けど」

「でもラン、ターボと走ってくれたよ?」

 

海外遠征の疲労もそろそろ抜けてくる頃合な筈、その証拠にターボとの併走もやっている。そんなランページは何処に行ったのかと思っていると腕時計を確認してそろそろですね、パソコンを起動させる南坂。

 

「ターボさん、すいませんがTVとパソコンを同期させるのでケーブルをお願い出来ますか?」

「んっTVで動かすの?まっかせろ~」

 

何だか分からないが頼られたので速攻でケーブルをTVに繋ぎ始めるターボ、その辺りはターボかランページでないと分からないのでこの対応は可笑しくはないのだが……態々TVに繋げる意味が分からない。

 

「なんかあんのかいトレ公」

「まあ見ていてください」

「繋がったよ~」

「有難う御座います」

 

そんなこんなでTVに繋がったパソコン画面には何やら何かの生配信の準備中の画面があった。生配信と言えばランページだが……まさかと思っている時に声が聞こえ始めた。

 

『暴君チャンネル~♪』

 

酷く明るくお陽気な声がコールされた。どっかで聞いた事があるというか何時も聞いている声である、と思っていると画面が切り替わって勝負服姿のランページがそこに立っていた。

 

「あっランじゃん!!」

「おおっ先輩のチャンネルの生配信じゃないですか!!」

「アンタいつも見てるよね」

「私も何時も見てます」

「アタシも~!!」

 

ハチャメチャな事に定評があるランページの配信だが、内容自体はかなり貴重な情報を流したりレジェンドクラスがゲストとして高頻度で出て来るので見逃せないコンテンツとなっている。勿論カノープスメンバーもよく見ている。だが今回は南坂が態々見せて来るのだから何がかあるのでは……と画面に注視する。

 

 

「モニターの前の皆さん、おはこんハロチャオ~♪貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、勝利の凱旋!!二つの心ぶつけて~生まれるスピードで突き抜けよう彼方へ、なランページだぜい!!皆の者~善行積んでたか~?先日のジャパンカップは白熱したね~7mmて、1㎝って凄い世界だよね~ハナ差で纏められている世界の内側にはそんなのが広がってるんだから。いやはや後輩たちの成長が著しくて先輩としては涙ちょちょぎれちゃうわ」

 

・マジであのレースが凄かった。

・審議も長かったもんなぁ

・まあアンタには関わりのない話だろうな。

・絶対無敗の強者だもんな

・寧ろアンタと殴り合い続けてるイクノとフローラが怖いよ

 

「ご安心しろ、フローラは普通に怖いウマ娘だぜ色んな意味で。何でああなったんだろうなぁ……」

 

・なんか、去年のジャパンカップでハグ拒否してたな。

・そう言いつつも勝利は称賛する。

・ツンデレ?

・デレはない。

・暴君がツンデレとか想像出来んわぁ

・いやぁキツいでしょ。

 

「さてまあ、そう言う事は良いんだよもう。今回の配信のゲストは~こちら!!」

「ウムッ!!おはこんハロチャオ~中央トレセン理事長、秋川 やよいである!!」

 

毎回毎回ゲストが来ている配信、今回のゲストは理事長だった。当然のようにハテナはランページの頭の上に移動している。理事長も十分にレジェンドクラスなのだが、前に出た事がある為かコメントは落ち着いている。

 

「さてと今回の告知は―――これだ!!」

 

ランページは準備していたホワイトボードを殴り付けた。ボードは凄い勢いで回転する、そしてそれをもう一度殴る様に抑えた。見事に裏表が逆転して隠されていた物が明らかになった。そこにあったのは―――新設ッ!!URAファイナルズ、レジェンドレース!!と書かれていた。

 

・ファ、ファイナルズ!!?

・何それカッコいい名称。

・レジェンドレースも凄い気になるんですが。

・名前からしてドリームトロフィーリーグとは別口なん?

・はよっ続報はよ!!

・待たせないで~!!

 

「それでは解説ッ!!ファイナルズとはメジロランページが企画したレース。短距離、マイル、中距離、長距離、ダートとそれぞれの部門に合わせて予選などを行いそれらを勝ち抜いた優駿達が一堂に会し文字通りの決勝戦を執り行う!!」

 

・何それ超面白そう。

・短距離のG1とか少ないから超アリガてぇ!!

・ダートもあるのか!!流石暴君、考える事のスケールでかいぜ!!

・文字通りの決勝戦だな。

 

「だがな、それだけじゃないのがこのファイナルズだ。このファイナルズの予選は全国各地に点在するトレセンと連携して行う、つまりだファイナルズの出走ウマ娘の対象は中央に限らねぇって事だ!!予選を勝ち上がれば本選に誰でも進める」

「然りッ!!既に各地のトレセンとの連携準備は完了し予選レースの設立は進んでいる!!」

 

・えっつまり、どういう事?

・わかれやバカ

・地方のウマ娘が予選に勝ち抜けさえすれば、中央のウマ娘と勝負が出来る……てこと?

・マジかスゲェ胸熱じゃん!!

 

「誰が地方のトレセンだけだって言った?予選に勝てば、と俺は言ったんだぜ。予選の申し込みに限りはない、地方だろうが一般校だろうが分け隔てなく受け入れる。その為の予選を全国各地のトレセンで行う!!」

 

・―――えっマジで?

・じゃ、じゃあ普通の高校通ってるウチの姉貴も出れる訳?

・トレセンに通ってなくてもOKなの!?

・マジか!?それって凄い大変じゃないのか!?

・凄い人数になるぞ!!

 

「だからこそ全国各地のトレセンのご協力が必要だったって訳だ、日本に帰ってから俺はその為の根回しをしてたんだ。返事は良い物を頂けた、ぜひ協力するってな。機会がなくて諦めた?その気はあるけど難しい?その気があるなら名乗りを上げろ、舞台は整えてやる、さあ集えウマ娘達!!ファイナルズの名のもとに!!」

 

正しく革命的な企画だ。普通であれば通す訳も無い、だが―――ランページはそれをやってのけてしまった。自分が成し遂げたことで得られたネームバリューとシンボリとメジロ家の力を最大限利用して此処までの事をやってのけた。

 

「そして、レジェンドレース!!此方は文字通り、レジェンドクラスのウマ娘達が集うレースである!!ドリームトロフィーリーグは夢の舞台と言われる、だがそんな舞台に出るウマ娘と競ってみたいとは思わねぇか!!そうだ、レジェンドレースも制限はない。だがこっちはマジモンのレジェンドが参加する、既にマルゼンスキーやカツラギエース、テンポイントにトウショウボーイ、そしてグリーングラスさんの協力も取り付けてある!!伝説と言われるウマ娘と競いたいという覚悟がある奴、夢を叶えたい者は伝説に挑め!!」

 

・えええええっっ!!?

・マルゼンスキーのレースをまた見れるの!!?

・マジで、マジなの!!?

・えっあのカイザーとかも出たりするの!?

・TTGマジで!!?

 

もうコメントは狂喜乱舞の嵐。彼女らは文字通りの伝説としてその脳裏に刻まれている。その走る姿をもう一度見る事が出来る……それだけで鳥肌が止まる事知らない。青天の霹靂も加減しろと言いたくなる程の衝撃だ。

 

「纏めるとファイナルズは地方も一般校も中央もない。走りたい奴が集って走って、最終的に勝ち残った奴らで勝者を決めるお祭り。レジェンドも同じだが、こっちは文字通りの伝説に挑むレース、夢を見るのも良し挑むのもよしだ」

「因みに、URAと付けているのは便宜上である。これらは全て我々が秘密裏に行った故にURAは何も関与していない、というか大体がランページがやったのでな!!」

「理事長それアンタが言っていい訳?」

「私が言わなくても多分地方トレセンの理事長らが暴露するので中央の理事長として先に言おうと思って」

 

・おいURA

・暴君一応まだ学生だろくくり的に。

・こんな改革を未成年にやらせて自分達は何もせずか。

・仕事しろURA。

・というかこれだって普通はURAが企画振興するべき内容やん。

・人材の発掘にもなる訳だしな。

・うわぁURAマジURA、つかえね~

 

「つっても、幾ら進めてると言っても今年中の開催は無理だ。早くても来年の開催になるだろうなぁ」

 

・だろうなぁ。

・規模もでかいだろうしな。

・もしろURAが仕事しなかったせいで今年開催じゃないんだな。

・ホンマURAホンマ。

 

「という訳なんで―――俺はそっちに専念するんで今年の有記念で引退しますんで」

 

・ハッ?

・ハッ?

・え?

・え?

・ひょ?

・なんですと?

・パードゥン?

 

「いやだから俺今年で引退するから、ファイナルズとレジェンドとかで忙しくなるし」

 

・何爆弾発言してんのアンタぁ!!?

・い、いやそうかトゥインクルシリーズを引退って事だな!!

・そうかそっちの引退だな!!

・暴君は皇帝との覇権争いに勤しむのか

・そうかそうか焦ったぜ。

 

「URAにもさっさと引退しろって言われちゃったからなぁ……今回みたいな事やったから責任取って引退するわ。後、ガチ引退だから」

 

・URAマジ何言ってんだよ

・いやまあドリームトロフィーリーグへの誘いは実質引退勧告とも言われるが

・レジェンドになんて事を

・まあ戦績的にも十分

・えっガチ?

・引退?

 

「ああ、ガチ引退。メジロランページは今年を最後に、トゥインクルシリーズを引退する。ドリームトロフィーリーグにも進まない、マジで引退する」

 

世界が、揺れた瞬間だった。

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